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のほほん英雄譚  作者: ビオレちゃん
鍛冶職人編
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のほほん69

王都。今は戦争中、普段のような活気に溢れ毎日を楽しく過ごす人々は少ない。それもそのはず、戦争というものが自分達には関係ないと思う者達が少なくなったからだ。


どんな日であっても、人が溢れんばかりに集まっていた商業地区は、今は不気味なほどに静かだった。


以前、帝国が王都に強襲をかけるまではそんなことは一度もなかった。帝国の兵士たちが商業地区に現れ、物を奪い、邪魔する者を殺すその瞬間を見てしまう前までは。


いつどこから敵兵が現れるかわからない。

そんな不安が王都に住む人々の中から消えなかった。


そんな不気味なほど静かな王都の、人気のまったくない場所からいつも以上に張り切る女の子がいた。


「さぁ! 今が勝負時ですからね! コン太くん急ぎましょう!」


「ティア姉さん! まだ怪我が完全に治ったわけではないんですよ!」


「もう問題ないのですよ。コン太くんが馬車に揺られている最中も治療してくれましたからね!」


「で、でも無茶はダメです!」


「わかってますとも! さぁ早くあの無駄に重い王国印の装備を馬車へ積め込むのですよ!」


「王国の兵士さん達は凄いですよね……こんなの僕には装備出来ません」


「へっぽこ店主も無理っていうほどですからね。とにかく急ぎますよ!」


2週間はかかると言われていた傷は、コン太の作り出したポーションと回復魔法で1週間で動けるようになる程度には回復していた。ティア達は、ティアの両親に軽く挨拶をして、ヴィータの向かった砦の場所を聞き、王都に報告へ行くという兵士に便乗して急いで王都へ帰ってきていた。


以前オランドが切り株の上に置いてあった失敗作の鎧を見ていった一言を聞いていたティアが、ヴィータに王国の兵士たちが装備する物を作れるかどうか確認して密かに作らせていた。その無駄に重い武器、兜、鎧を文句を言いながら馬車に積めるだけ積み、残りの隙間には需要のあるポーションを積めていた。


「こんなものでしょう! 戦争が終わってしまえば売れませんからね! 急ぎますよ!」


「でもやっぱり危ないですよ。やめましょうよ」


「ではコン太くんはお留守番です!」


「うぅ……ティア姉さん一人じゃ心配です! 僕も行きます!」


「フフフ、さすがコン太くん! そう言ってくれると思いました!」


「でも砦までどうやって行くんですか? 守ってくれる兵士さんはいませんよ」


「その辺は抜かりないですよコン太くん! 私にちゃんと考えがあります!」


ティア達が馬車を連れてやってきたのは兵舎だった。

兵舎の前で隊が編成されていた。


「さて、後は私の交渉次第ですね!」


「なんだお前は!」


「こんにちは。おや……あなたはバランさんではないですか!」


「なぜ俺の名前を知っているのだ!」


「ウフフ、これはラッキーです!」


「何なんだ貴様は!? 牢にぶち込むぞ!」


「そんなこと言わないでくださいよ。私はヴィータと知り合いなのですよ」


「……ヴィータと? だから何だというのだ?」


「今回の戦争に兵士でもないのに参加しちゃいまして、そこで私達も少なからず力になろうと武器や防具、ポーションを砦へ持っていこうと思いましてね?」


「ヴィータが戦争に参加? あんな使えない奴が? だが、お前の言いたいことはわかった。砦に行くついでに護衛を頼みたいとそう言うのだな?」


「理解が早くて助かりますよ」


バランは少し悩んでいたが返事は早かった。


「気持ちだけ受け取っておこう。今すぐ家に戻れ、いいな!」


「なぜです?」


「装備を売って一儲けしようとでも考えていたんだろうが、王国の兵士が装備している物は特注でな。それにわかりやすい位置に王国の紋章が刻まれている。見よう見まねで作れる物ではないのだ」


「それなら問題ありませんとも! なにせその装備を作ったのはヴィータ本人なのですから」


「あのヴィータが?……どうせ粗悪品だろう」


「粗悪品を売ろうなどと考えてませんよ。馬車に積んであるので見てみてください」


「いいだろう」


ティアに連れられ、バランは馬車に積んである装備を品定めした。


「確かに悪くない。だが本当にあのヴィータが作ったのか? にわかには信じられん」


「本当ですとも。鍛冶に関してはその辺の鍛冶職人より優れていますよ」


「うーむ。だがやはり連れてはいけんな」


「どうしてですか?」


「ヴィータの知り合いであろうと、そうでなかろうとお前達は俺達にとって守るべき民。危険な場所へ連れてなど行けんよ」


「むぅ……頭が固いですね」


「なんだと!?」


「わかりました! 最終手段を使わせてもらいましょう!」


「何を言っても無駄だ! 諦めろ!」


「バランさんはとある高貴な方にとても嫌われていますね? 『舌を噛みます!』とまで言われてしまうくらいに」


「な!? なぜそれを知っている!?」


親衛隊にまでなったバランには未だに忘れられないことなのだろう。

あからさまに動揺した。


「私はあそこに住んでいますから、当時のことを見ていました」


「だ、だが俺が言われたのは……」


「レフィリア様は私達が住んでいる家に遊びに来てくれるんですよ。今ではレフィーと呼び、親しくしてますからね。親衛隊だったバランさんのこともすべて聞いていますとも!」


「……くっ!」


「私達を護衛して砦まで連れて行ってくれれば……レフィーにあなたのことを言ってあげてもいいですよ? 私達を守ってくれた立派な兵士だと」


「……本当だな? 本当に本当だな!?」


「もちろんですとも!」


「いいだろう。ちゃんと責任もって砦まで護衛してみせよう! だから……頼んだぞ! 絶対だぞ!」


「ちょろいですね!」


ティア達はバランに説得してもらい砦まで護衛してもらえることになった。砦に着くまでの間、バランにしつこくレフィリアのことを聞かれたティアはうんざりしていた。

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