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のほほん英雄譚  作者: ビオレちゃん
鍛冶職人編
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のほほん67

ヴィータはティアに肩を貸したコン太を見送り、町の人達に敵軍が侵攻してきたと伝え回った。信じてくれた人はすぐに近くの家に入り、信じなかった人は突然どこからか現れる敵兵に襲われ、怪我をしたり、あるいは死んでしまった人達もいた。


ようやく事態を把握した人々は逃げ惑い、中にはパニックを起こしてしまう人もいる。冒険者や町の衛兵たちはそう言った人達を助け回っていた。


「いたぞ! あいつだ! 二刀を持った男だ! あいつを殺せ!」


「何だあの速さは!?」


「所詮1人だ! 怯むな!」


「早く占領しろ! 王国軍が来るのは時間の問題なんだぞ!?」


「邪魔する衛兵たちも殺せ!」


ヴィータは町の住人達が1人でも多く助けられるように動き回った。

立ちはだかる敵兵を倒しながら。

10人、20人を1人で相手に出来るほどヴィータは強くない。

必要最低限の動きで道を切り開き手傷を負いながらも走り回った。


「我が王国に仇なす愚か者共を追い払え!」


「おおおおおおおお!!!」



「さすが王国軍、町の占領は後回しだ! 迎え撃て!」


「おおおおおおおお!!!」


しばらくすると王国軍が助けに来た。

それに合わせてヴィータも攻勢に転じる。


王国兵たちの戦い方をよく知るヴィータは連合軍に嫌がらせのように、王国兵たちの動きに合わせ敵兵達の中へ斬り込んでいく。


「あいつは……ヴィータか? 間違いない、おいヴィータ!!」


「その声はルーシュ?」


「おうとも、敵兵が言ってた二刀の男ってお前だな。やるじゃねーか。敵兵さんかなり怒ってたぜぇ?」


「町の人たちを逃がしてただけだよ」


「十分すぎる活躍だな。傷だらけだが……まだやれるか?」


「大丈夫。やれる」


「なら手ェ貸せ! 町のどの辺から連合軍がやってきたか教えろ! 1人でも多くの住人を助けんぞ」


「わかった」


ルーシュ達王国兵と協力して町の住人を助けつつ、遭遇した敵兵たちを倒していく。


「……作戦は失敗だ! 引け! 引け!!」


町を襲った連合軍の将が号令を上げると敵兵たちは引き上げていった。


「ようやく収まったか。ヴィータ、助かった。お前のおかげである程度被害は抑えられた」


「俺は何も」


「そういう奴だったなぁ。俺らは一度報告に戻る。お前はどうすんだ?」


「俺はティアの様子を見に行くよ」


「ティア……あぁあの商人の。なんかあったのか?」


「敵兵に斬られた」


「……そうか。遅くなってすまなかった」


「ルーシュが謝ることじゃない。俺が気付けなかっただけだから」


「……俺らは行く。後は俺ら兵士の役目だ。嬢ちゃん無事だといいな」


ヴィータはルーシュ達と別れ、急いでティアのいる屋敷へ。傷だらけのヴィータは屋敷にいる衛兵やメイドに驚かれつつもティアのいる部屋へ向かった。


「店主さん!? その怪我は大丈夫なんですか!?」


「深手じゃないから大丈夫。それよりティアは?」


「えっと、命に別状はないってお医者さんが言ってました」


「そっか……よかった」


「……その声は……へっぽこ店主ですね?」


ベットの中で休んでいるティアの声は弱々しかった。


「ごめん、守れなかった」


「いいえ、ちゃんと守ってくれましたよ。じゃなきゃ今頃生きてません」


「…………」


「胸を張ってください。それとちゃんとその傷をコン太くんに治してもらってきてください」


「……わかった。とにかく無事でよかった。ゆっくり休んでくれ」


「わかってますとも」


ティアの部屋から出ていき、コン太に治療してもらう。それから数日、ティアの実家でティアの様子を見つつ、何かあればすぐに動けるようにヴィータは待機していた。


町の住人からは近くで何度か王国軍と連合軍が戦っていると話を聞いた。

いつ何が起こってもおかしくない状態が続く。


そしてルーシュを含む何人かの兵士たちが町長のいるこの屋敷にやってきて、町長と話しをしていた。


「ルーシュ、何かあったの?」


「ヴィータ! お前町長の家にいたのかよ」


「ティアの実家なんだ」


「なぁるほど」


「それでどうしてここに?」


「あぁ、お前ならいいか。この辺りでの戦いは一応終わった。連合軍は諦めて撤退していったとさ」


「そうか……」


「だけど安心すんなよ? 引いたと見せかけてまた来るかもしれねぇ。ま、来ても大丈夫なように兵士は常駐させるって話になったけどな」


「それはよかった。なぁルーシュ。今どんな状態なんだ?」


「戦争は負けちゃいねぇよ。以前帝国がやったこと覚えてるか?」


「王都襲撃」


「そ、それそれ、それと同じことを連合軍がやってきやがったのよ」


「……でも」


「王国兵らしくないってか?」


「うん、何となく」


5年間兵士を務めてきたヴィータには何か思う所があるようだった。

ただその何かを言葉して説明することは出来なかった。


「へっぽこ店主」


「ティア? どこか痛むのか?」


「だいぶ痛みは引きましたよ」


「斬られたって聞いたが、大丈夫そうだな嬢ちゃん」


「えぇ、ルーシュさんにも守ってもらったそうで……助かりました」


「気にすんな」


「それでティア、何か用があるの?」


「2人の話は部屋まで聞こえてきました。へっぽこ店主に何か思う所があるなら、直接行って確かめてみるのはどうですか?」


「俺が?」


「そうですよ。気になるのでしょう?」


「…………」


「嬢ちゃんいいのかそんなこと言っちまって。嬢ちゃん達の身も危険になるし、嬢ちゃんを守る騎士様が死んじまうかもしれねぇぜ」


「兵士さん達が常駐してくれるのでしょう? なら何も問題ないですよ。ただ約束してもらわないと困りますね。死なせるなと」


「難しい約束だなぁ」


「今の私がへっぽこ店主を失うと大商人への夢が遠のきますからね。へっぽこ店主、行ってさっさと戦争を終わらせて帰ってきてください」


「わかった。行ってくる」


ヴィータはティアに背中を押され、戦争に再び参加することを決意する。

ルーシュ達と共に町から出ていった。

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