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のほほん英雄譚  作者: ビオレちゃん
鍛冶職人編
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のほほん60

スラム街の事件が終わった後、コン太とコン太の母親が一緒に住むことになった。

コン太は母親にいいところを見せようと今日もポーション作りを頑張っていた。


コン太の母親は、午前中ヴィータ達が出かけている間、ティアの代わりに店番をして、午後はコン太と一緒に調合場に入る。


コン太の手伝いをしてあげたいそうだ。


その後は店を閉めたティアとルナと一緒に夕食作りを手伝う。

そしてお風呂にコン太と一緒に入って話をしたり、歌を歌ったりと仲睦まじい。


家にある4部屋はヴィータ、ティア、ルナ、コン太親子に割り振られている。

夕食を食べ終わった後はコン太と一緒にベッドに入り、コン太の寝顔を見ながら幸せそうに眠りにつく。


「コン太くんは羨ましいですね」


「そうね。とっても仲のいい親子だと思うわ」


「そう言えば、お師匠様はいつからコン太くんのお母さんと知り合いだったんですか?」


「あなた達と出会って2週間くらい経った後だったかしらね。コン太くんのお母さんの病気がどんな病気なのか知らなければ治せないでしょう? だからコン太くんの家がどこか聞いて会いに行っていたのよ」


「なるほど」


「あの人はコン太くんのことを本当に大切に思っているわ」


「私もよくわかりますよ」


…………………………………


ルナは長身の男にヴィータ達のことを紹介され、ティアとコン太の面倒を見るようになった。少ししてコン太から母親の病気について聞き、住所を聞き、ヴィータ達3人が魔獣討伐に行っている間に時々スラム街にいるコン太の母親の様子を見に行くようになった。


「こんにちは」


「えっと……あなたは?」


「私はルナ。あなたの息子、コン太くんの薬師の師匠と言えばわかってくれるかしら」


「コン太の……お礼を言わなければなりませんね。コン太が元気になってくれたのはルナさんのおかげです。ありがとうございます」


「コン太くんが元気になったのは、一緒に切磋琢磨してるヴィータって子とティアって子のおかげよ。お礼はその子達に言ってあげて」


「そうですか。いつかお礼を言わなければなりませんね」


「えぇ、そうしてあげて」


「それで、ルナさんはどうしてここに? ここはとても危険な場所なのに……」


「私のことは大丈夫よ。私は、あなたの病気のことを診に来たの」


「コン太から聞いたんですね?」


「咳が出て苦しそうなのをずっと我慢してるって言っていたわ。早く治してあげたいとも」


「コン太が……そうですか」


コン太の母親は嬉しそうに微笑んでいた。


「今の体調はどうなの? 隠さずに教えてもらえるかしら?」


「……昔はコン太の前でも我慢出来ないくらい咳が出ていました。でも最近はコン太が持ってきてくれるポーションのおかげで咳が出なくなって大分良くなったと思います。ただ……全身に走る痛みは変わらず、日に日に辛くなっています」


コン太の母親はいつからか咳が出るようになったそうだ。

その咳は王都に来る前から出ていたそうだ。


ただの風邪だろうと気にしていなかったようだが、治らずむしろどんどんひどくなっていった。コン太の前では出来るだけ隠すようにしていたが、ある日を境に体が痛み出した。医者に診てもらっても治せないとお手上げ状態で、薬師の作るポーションもほとんど効果が無かった。


「でも、コン太が『僕がお母さんの病気を治せるようになる』と言ってくれたのは嬉しかった」


「そう」


「私のために王都中を歩き回ったり、薬師になるために勉強したり、私は幸せ者です」


診察が終わったルナはコン太の母親と向き合った。


「あなたの体のことなんだけど……」


「もう長くないということもわかっています。私の体のことなんですから。助からないのでしょう?」


「このまま何もしなければ助からないわ。でもエリクサーならあなたの体を治すことが出来るわ」


「エリクサー……でもそれは私には手が届かないような物なのでしょう?」


「大丈夫。私はエリクサーを作れるのよ。それに私自身が持っているわ」


「本当に?」


「えぇ、これがそのエリクサーよ」


ルナは袋からエリクサーを取り出してコン太の母親に見せた。

それは神秘的な輝きを放つ本物のエリクサーだ。


「……これがエリクサーなんですね。コン太は凄い人に面倒を見てもらっているんですね」


「飲めばどんどん体調が良くなって快復するわ。私もあなたと同じようにコン太くんが悲しい思いをするのは嫌なのよ」


「ルナさん、これは受け取れません」


「どうしてかしら?」


コン太の母親はエリクサーから目を離し、ルナを見て受け取らないと言った。

それを聞き、ルナは驚いていた。


「これを飲めばルナさんの言う通り、病気が治るのかもしれません。コン太も喜ぶと思います。……でも今一生懸命私を治そうと努力しているコン太のためになりません。それにどうせなら、コン太自身の手で私の病気を治してほしい」


「あなたはコン太くんのことを心の底から思っているのね」


「私はコン太を愛していますから」


コン太の母親の言うことに嘘偽りはなかった。


「ルナさん」


「はい」


「もし出来るのであれば、私が少しでもこの病気を抱えたまま生きていられるようにしてもらえませんか?」


「それはコン太くんの為と」


「えぇ」


「……出来るわ。でも症状を抑えるだけで、治るわけではないわ。だから想像出来ないほど苦しいわよ?」


「それだけでコン太が大きく育ってくれるなら」


「わかったわ。あなたとコン太くんのために、全力を尽くしましょう」


「お願いします」


コン太の母親は深く頭を下げた。


それからルナはヴィータ達が魔獣討伐に出かけている間、コン太の母親の様子を時々見に行くようになったのだった。全てはコン太を心の底から愛する母親と心の底から母親を救いたいと思うコン太のために。

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