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のほほん英雄譚  作者: ビオレちゃん
鍛冶職人編
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のほほん56

「ふあ~~あ~~あ、ねむ」


「おいルーシュ、そんな欠伸かいてるとまた怒られるぞ」


「周りには誰もいねーよー。お前が告口しなきゃ問題ねー」


「ったく。これがホントに3度も戦争生き抜いた男かよ」


「生き抜きたきゃ隠れてりゃいーんだよ。ふあ~」


「言っても証拠がねぇとか色々言って結局逃げ切るもんな。頭がいい奴は羨ましいぜ」


「俺は頭なんかよくねーぞー。だらだらやって一生過ごしてやるさ」


「将軍に聞かれたらそれこそ終わりだな」


「将軍様にゃあこの声は届かねー」


「違いないな」


2人の兵士は今王都にあるスラム街の入口付近を警護している。

スラム街には犯罪者が多く隠れている。

そして気性の荒い人が多く過ごしている。


どの時代どの国にも、適応出来ない人達は存在する。

そしてその人たちも住む場所は必要だ。

そんな人たちが集まって出来ていくのがスラム街。

王のお膝元であっても、どれだけスラム街を無くそうとしても、

気が付くと必ずどこかに出来上がっているそんな場所。


そんな場所だからこそ問題は多く発生する。

誘拐、人殺し、窃盗などなど。

何かあってからでは遅いがそこはスラム街。

王都の一部であっても犯罪をゼロには出来ない。


だからこそ最小限の被害で抑えられるように入口付近には兵士を配置している。

どうしてスラム街の中に配置しないのか。

簡単だ。危険すぎるのだ。

兵士の装備している重装備は金になる。

どれだけ強くても罠にかかればそれまでだった。

犯罪が起こらないように兵を常駐させれば、その兵たちが狙われてしまうのだ。


スラム街のルールは単純明快。


弱肉強食だ。


盗まれる方が悪い。

殺される方が悪い。

弱い方が悪い。


言い換えればどれだけ力が無くても


盗まれなければ強い。

殺されなければ強いだ。


スラム街に住む人達は生き抜くために知恵を身につける。

親は子供にしっかりと教え込む。

ただやはりスラム街の住人にも例外はいた。


「おはようございます! 兵士さん!」


「おーコン太。今日も元気だなー」


「頑張ってください!」


「コン太もなー」


そう言ってコン太はスラム街から現れ、兵士に元気よく挨拶してヴィータのいる家に走っていった。


「相変わらずあいつはスラム街の癒しだな」


「そーだなー。まぁ危険な場所だと自覚してねぇだけだ」


「たしか母親と一緒に安全な場所で暮らしてるんだろ?」


「一緒には暮らしてるなー。けどすこーし違うぜぇ。スラム街の中に安全な場所はねーなー、比較的安全な場所ってだけだ」


「……まぁな」


スラム街に配置される兵士たちのほとんどはスラム街出身者たちだ。

だからスラム街のことをよく知っている。

何かあってもすぐ駆け付けられるほどには。


「俺らがここにいりゃあ、奴隷商人の雇われ傭兵に攫われることはねーけど……それだけだ。獣人でしかも狐族。男だとしても欲しがる貴族は多い。大人になれりゃいいけど、最近また薬師に教えてもらってるらしーからなー」


「強引に攫おうとするかもな」


「あり得るなー。最近また色々きな臭くなってきてっからな」


「ルーシュは何か知ってんのか?」


「いんやなんも」


「いいじゃんか教えてくれたって」


「金」


「っち、ケチだねぇ。同僚になったってのに」


…………………………………


「帰ってきたなーコン太」


「ただいま! 兵士さん!」


「また一段と元気になってるじゃんかー」


「お母さんの病気治せるかもしれないから!」


「おー、またいい感じのポーション出来たってことかー?」


「うん!」


「見せてみー」


「いいよ!」


コン太は無警戒でルーシュにポーションを見せていた。


「やるじゃんかー。でもきーつけろよー。俺はやらねーけど、兵士の中にも平気で懐に入れるわりーやついっからな」


「はーい!」


コン太は元気よく返事してルーシュからポーションを受け取りスラム街にある家に帰っていった。


「毎日毎日、見せてもらってどーすんだ?」


「そろそろやべーなー」


「何がだよ」


「コン太のポーションの出来さ」


「相変わらず悪いんだろ? 俺達にはあいつの母ちゃん救えねぇよ」


「ちげぇーよ。良くなり過ぎてんだよ」


「じゃあいいじゃねーか。母ちゃんの病気が治ればスラム街卒業かもな」


「卒業出来ればいいけどなー奴隷としても薬師としても使えるってなりゃどうなるよ」


「……やばいな」


「だろぉ? コン太のポーションはその辺の薬師と同じぐれーだ。その上獣人。元々狙ってるやつからして見りゃ金蔓だ、俺らがいようと、多少あちこちでやり合うことになろーとプラスになるとなりゃな。それに色々きな臭い、そろそろ動くだろうなー」


「その色々きな臭いってどんなことよ?」


「金」


「ケチだねー」


コン太とコン太の母親は生まれた時から王都で暮らしているわけではなかった。


帝国との戦争。

その被害者である。


直接襲われたわけではないが、近くで戦争が起きるからと住んでいた小さな村から離れることになり、王都に住むことになる。王都に住むことになったが、当時もうすでに病気に侵されていた母親が仕事を見つけることなど出来ず、仕方なくスラム街に住むことになった。


戦争で帝国の強襲軍による襲撃があったことで王都に被害が及び、そのおかげと言ってはあれだが母親は何とか仕事に就くことが出来た。


そんなこんなで今もコン太と母親はスラム街の住人として過ごしている。

母親には危険な場所だとわかっていても、コン太にはわかっていない。


仕事があるせいで、コン太に今住んでいる場所が危険だと十分に伝えることが出来ていないのだ。だから母親は近くにいる兵士に必死に頼み込んでいた。何かあったら助けてあげてほしいと。

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