のほほん44
「おはよーございます!」
「おはよう」
「おはようございます。コン太くん」
朝、コン太の気持ちのいい挨拶から一日は始まった。
ヴィータは素材を入れるための道具袋とヴィータ専用武器2号を腰に差している。
ティアとコン太は道具袋の他に分厚い本を1冊ずつ持っている。
「その本は?」
「これは薬草のことが書かれた本ですよ。薬草大辞典(上)と(下)です」
「分厚いな。重くないのか?」
「これくらい問題ないです。最悪背負えばいいんですから」
「そっか。コン太は?」
「僕もだいじょぶです」
「わかった。じゃあ行こう」
3人は家から出発し、ぐるりと遠回りをして西門へ、そして王都周辺にあるハイウルフ生息地へと行く。
「いた」
「店主さん、何がいたんですか?」
「コン太くん。このへっぽこ店主は遠くの景色もはっきり見える目を持っているんですよ。恐らく魔獣を見つけたのですよ」
「僕には見えません。店主さんは凄いんですね!」
そんなやり取りをしつつ、ヴィータの指示に従い待機したティアとコン太は、ヴィータがあっという間に倒してしまったハイウルフの前に移動して素材集めを始める。
「店主さんは強いんですね」
「へっぽこ店主は自覚ないみたいですけどね。さて、コン太くんは素材を集めたことはありますか?」
「……ごめんなさい。初めてでわかりません」
「誰だって最初はわからないので謝らなくていいんですよ。これから覚えればいいんです」
「はい!」
「ではまず、ハイウルフから取れる素材を実際に私が素材を取りながら教えましょう。まずこの口から出ている凶悪な犬歯、これが1つ目です。そしてこの毛皮、これが2つ目です。この2つは必ず取れて、そこそこの値で買い取ってくれる素材ですよ」
「犬歯と……毛皮と」
「何事も一生懸命なコン太くんは本当にカワイイですね」
やっていることは魔獣の死骸から剥ぎ取っているグロイ行為ではあるが、せっせと働くコン太は、ティアから見るとカワイイらしい。
「さてここからは同じ魔獣でも見つかる時と見つからない時があります。3つ目がハイウルフのコア……ありましたね。これです。それと……魔石なんですが、この魔獣には無かったようですね。コアと魔石は大体心臓にあります。探してみてください」
「わかりました!」
コアの形を見て覚え、ハイウルフの死骸を漁るコン太。
「ティア姉さん。魔石っていうのはこのキラキラ光る石のことですか?」
「キラキラ光る? ふむ、私には光っているようには見えませんが、それが魔石です。どうやらコン太くんは魔力を目で見ることが出来るようですね。優秀な証ですよ!」
「ありがとうございます。エヘヘ」
魔力。
それは人の体内に必ず存在する。
魔法を使うために必要、それが世間一般に知られていることだ。
それ以外には身体能力の強化にも必要だ。
重いものを持てるようにするために使ったり、素早く移動するために使ったりと様々な使い方がある。
もちろん人それぞれ限度がある。
魔力の扱いに長けた人は剣の攻撃力を上げたり、装備している防具の防御力を上げたりもしている。
貴族など生活に困らない者達は学校へ行き、魔力と魔法のことを学ぶ。
そこで魔法を使えるようになる者は、魔法使い、もしくは魔法剣士となる。
魔力を使える者は、剣士として活躍する。
その両方が扱えない場合、15歳までそのどちらかに目覚めなければ家から追い出されるという仕組みだ。
目安としてはレベル25を超えることが出来るレベル上限を持つ者が魔力の存在に気付ける者達だ。レベルが25を超え、魔力を目で見ることが出来る者と魔力を感じ取ることが出来る者、もしくはその両方に分かれる。
もちろんそのどちらの才能もない者もいるが。
そして25を超えた者達の中でさらに鍛錬を続け、魔力の扱い方を身に付ければ、身につけることが出来ない者達より遥かに強くなっていく。魔力の扱いは人それぞれ千差万別、これと言った習得方法がない。自分で見つけるしかないのだ。
もちろんレベルが低くても魔法を使える者、魔力を使える者はちゃんといる。
生まれた時にはもう魔力を目で見ることが出来たり、感じ取ることが出来ている者が興味を持ち、しっかりと学ぶことが出来ればだが。
「おや、もう次の魔獣を倒してしまったようですよ。さぁ、素材を集めに行きますよ!」
「はい!」
「わからなくなったら、その都度教えますからちゃんと聞いてくださいね」
「わかりました!」
ヴィータは2人の様子を窺いつつ、魔獣を倒し、ティアとコン太はヴィータから離れ過ぎないようにしつつ、ヴィータが倒した魔獣から素材をテキパキと漁る。
コン太が素材集めに参加したことで、ヴィータは魔獣討伐に意識を集中させることが出来るようになり、ティアとコン太は一緒にせっせと素材を集めることが出来て、作業ペースが上がりより効率良くなった。