表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
のほほん英雄譚  作者: ビオレちゃん
王国兵士編
1/92

プロローグ

名も無き小さな村のごくごく普通の農民が愛し合った結果俺は生まれた。

家族は父さんと母さんと兄さんと俺。

物心ついた頃には、農民の子として両親の手伝いをしていた。


特にこれと言ったいじめに合う事も無く、村の外に当たり前のようにいる魔獣達に襲われるやら、村の誰かが死んでしまうなんていう大きな事件もなく日々を過ごしていた。


とある王国に税を納めるためにせっせと働き、両親から言葉を教えてもらい、貧乏ながらも家族で笑いながら生活していた。


もし俺が長男であったのなら、何事もなく両親から農作業を教えてもらいつつ、時が来たら後を継いで結婚して子を作り、そしてその子供に農作業のやり方を教えて後を継がせ、天寿を全うしていただろう。


しかし俺は次男であった。だからこそ時が来たら家から出ていかなければならない。


「ヴィータ。本当に申し訳ないと思うが、お前は兄ちゃんより遅く生まれてきてしまったんだ」


「……うん」


「だから大人になったら家を出て、自立しなければならない。裕福な家じゃなくてごめんな」


と、10歳になってから父親からそう聞かされてきた。ちなみに15歳の誕生日を迎えた日から大人になるらしい。


なんでも父親も長男として生まれることが出来なかったから、冒険者ギルドに入ってみたりとあれこれしつつ苦労しながら生きていたらしい。


生まれてから今まで温かい家庭で幸せだった。それに大人になったら家から出ていかなければいけないという話もそれが当たり前なんだろうと思っていたから不安こそあれ、不幸だと思ったことは一度もない。


周りの同年代の子達も同じように家から出ていき、自立していた。

不安はある。けど小さいながらも希望もあった。


こんな名も無き小さな村にもごくごくたまーに、旅人やら商人やらがやってくるのだ。そんな旅人の中におばちゃん占い師がいたのだ。占い師は優秀であればあるほど未来が見えたり、占った人のレベルの上限を見ることが出来るらしい。


「私は占い師をやっています。もし興味がある人は銅貨30枚でレベル上限を見てあげましょう」


「では俺の息子達を見てもらえないだろうか?」


「私の娘も見てほしいわ!」


「わしの孫たちも頼もうか!」


レベルとはその人の強さを表すものだそうだ。レベル上限が高ければ高いほど優秀になるらしい。両親の話では、レベルが10台の人達はごくごく普通の一般人。20台はそこそこ優秀で、30台は凄いと驚かれるらしい。40台は尊敬の眼差しを受け、50台では各国からスカウトがくるそうだ。60~は次元が違うという話だ。


まぁ要するにレベル上限が高ければ高い人ほど、輝かしい未来が待っているということだ。ただ、レベルの上限が見れるだけでどんな職業に向いているかまではわからないそうだ。


その人が努力してレベルを上げて、何に向いているのか探さなきゃいけない。まぁそんな感じ。


「な、なんと!!! 君のレベル上限は32です!!!!」


「「「「おお!!!」」」


「久しく現れなかった高レベルです。素晴らしいですね!」


いつだったか覚えてないけど、そう言われたから希望はある。

けど現実は時に非情だった。


「……本当にすまない……ヴィータ。でもお前なら……!」


「送り出すときに渡そうと思って貯めていたのだけど……これだけしか貯めれなかったの……ごめんねヴィータ。ちゃんとご飯を食べるのよ? ……それから……それから……」


「こんなに早く別れることになるとは思わなかったぜ……元気でな……ヴィータ」


「父ちゃん、母ちゃん、兄ちゃん……今までありがとう……行ってくる……」


俺は貧しい農民の子。本来なら15歳の誕生日を盛大に祝ってから出ていくはずだった。だけど家の事情で3年早く家から出ることになってしまった。両親は何とかやりくりして面倒を見てくれようと頑張ってくれていたけど……限界だった。俺でもわかるくらいに。


もっと一緒にいたかったっていう気持ちはある。でも別れは突然やってくる。幸いなことに俺のレベル上限は32だ。だから大丈夫だと言い聞かせて俺から家を出ていくと言ったのだ。同年代の子達は村の人達に頼み込んで自分の土地を確保して、自立して農作業を始めている。


俺も頼み込んでみたけどこれ以上村を拡張しても魔獣に襲われるだけだから無理だと言われてしまった。だからもう俺が村に残るという選択肢はなかった。村から出る者は2人。1人は俺だ。もうひとりは何度も小さい頃から遊んだことがあるそれなりに気が合う友達だ。


名も無き小さな村などから自立する、農民の出の大人になったばかりの者達の働き口はほぼ決まっている。行先はとある王国の王都。そしてその職業は屈強たる王国軍の兵士だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ