支部長
話の流れは同じですが内容を少し変えました。
この時点で、優人達は雄護と初対面という体なので...
ご指摘、ありがとうございました。
その場のノリで書いているため、このような事が今後も出てきてします恐れが有りますが今後ともよろしくお願いします。
俺は、期待を胸に扉を開いた。
出迎えたのは、顔面に迫る炎だった。
「...なんなの?、俺の顔が世界に何か悪いことでもしたの?」
なんで定期的に人の顔燃やそうとするヤツと出会うんだよ。
「あら、ごめんなさい。てっきりあの気にくわない女だと思ったから」
「そのわりに、的確に俺の顔を狙われた気がしたんだがな?」
コイツ、日本に戻ってきてもこんなノリとか友達いないんじゃねぇの。
「まぁまぁ、落ち着いて。雄護君の偽物が私達に接触してくる可能性もあったわけだし、本物かどうかは紋章の力で確かめるのが一番でしょ?」
「けど、八つ当たりっぽいのも確かだけどね。舞ちゃん、ここまで自力で来たらしいよ?徒歩で。そのせいでイライラしてるんだって。第一、導師の目を誤魔化せる魔法なんてそうそう無いだろうし」
「信じられる!?途中で転移したとは言え駅から6時間くらい歩かされたのよ!」
「お前、何したらそこまで嫌われるんだよ...」
赤神ですらちゃんと案内してくれたぞ。
ま、コイツのことだから初対面の人を燃やしたとかだろうけど。
「一応確認するけど、大丈夫なのか?」
「誰に向かって口聞いてんのよ。小型カメラなんかの機械、魔法...魔術による盗聴、どちらも完璧に誤魔化してるわ。相手には私達が自己紹介してるように見えてるし、聞こえてるでしょう」
「流石は導師。燃やすだけじゃないんだな」
「そっちの方が得意だけどね」
...そっか、
「それで、お前らはどうするつもりなんだ?」
向こうで再会する約束をしていたけれど、こんな状況で再会するとは思ってなかった。
きっとこっちには、魔法も、魔物も、そんな非日常は全然なくて。世界のどこかで命のやり取りがあったとしても、自分たちには関係の無い、テレビのなかの話だって無責任に生活するものと思ってた。
「僕さ、この1週間すごく楽しかったんだ。ちょっと前まで、命のやり取りしていたとは思えない程にね」
「あらためて実感しました。日本って素晴らしい国だったんですね」
ストウスウェイトではすぐそこに「死」があった。町を一歩出るとそこに命の保証はなく、町の中でも餓死寸前の子供が倒れていることなんて日常茶飯事だった。それに比べ、日本のなんて安全なことか。
「けど、その安全も砂上の楼閣って感じだけどね」
今まで見ていた安全はひどく脆いものだった。
魔物。詳しくは聞いていないけれど、ろくでもないヤツってことは分かる。
異世界で見た地獄。助けに行ったときには手遅れだった。食い千切られた少女。二度と反応しない母を揺さぶり続ける少年。
あんな光景を増やさないためにも、死ぬほど努力して決着をつけたはずなのに。
「まだ、カルディアが味方って決まった訳じゃねぇ」
視線の主についても、もっと詳しく知る必要がある。あの視線は間違いなく、いいヤツのものとは思えないから。
だけど、
「魔物や魔法関連で苦しんでる人がいるなら、助けたいと思うんだ。だって僕達は『勇者』だろ?」
今までの3年間走り続けてこれたんだ。もう少しくらい頑張れる。
「...決まりだな」
世界から、戦争をなくすことはできないだろう。
少なくとも、ただ珍しい力があるってだけの子供にそこまではできない。
そんな俺達にできることと言えば
「魔物を呼んでいるであろう人物を焼き尽くす。」
異世界転移は途方もない魔力が必要となる。そのため、普通は星の魔力を利用して発動する。けれど、それは分解した身体を再構成する必要があるからだ。もし、再構築する必要がなければそれほど魔力は使わない。
例えば、身体が魔力で構成される魔物は、術者で再構築しなくても周囲の魔力で勝手に構築される。
魔核だけを送り込むなら造作もないだろう。
「再会の挨拶もろくにせず次の目標を決める辺り、私達も随分異世界思考してますよね」
けれど、そんな私達だからこそ世界を救えたんだって、胸を張って言えるから。
「ま、僕達はその方があってるよね」
「考えるのとか苦手だしな、俺達」
「スーパーおバカブラザーズと一緒にしないでよ。私は考えるのとかちょー得意よ」
...
「Q,目の前に敵か味方か分からない人物がいます。さて、どうしますか?」
「A,燃やす」
...
「僕達みんな家族さっ」
「なんでよっ!!」
「スーパーおバカふぁみりーですね」
「なんてイヤな家族なんだ...」
けど、そんな家族が大好きだから。
これからどんなことがあっても乗り越えられるって、感じたんだ。
「失礼します、東宮 カリンです。皆さんをお迎えに参りました」
ノックと共にかかられた声に俺達は気合いを入れ直す。
魔物とその親玉をぶっ倒すと決めたし、そのためにはカルディアに協力した方が何かと都合がいいだろう。
だが、俺達はカルディアについてよく知らない。実はカルディアが魔物の親玉でしたって、笑えない結末だってありうるのだ。謎の視線についても調べる必要があるため、カルディアの説明を聞いてから協力するかどうかを決めるってことになった。
...それにしても
「なんで優人達のところは美人な大和撫子風の女の子で、俺のとこはすぐ手が出る導師女なんだよっ」
「ねぇ、あなた今人の名前悪口に使わなかった?」
気のせいだよー
「貴方が青崎 雄護さんですか。レイランちゃんから話は聞いています。なんでも、『魔術を無効果できる変態』だとか?」
「違います」
「あってます」
「...ねぇ、なんでお前は人の第一印象をぶち壊そうとするの?」
そんなんだから友達できないんだよ。
「そして、貴女が九条 舞さん。メイちゃんからの話によると...『燃え盛る野蛮ゴリラ』とか?」
「違います」
「あってます」
燃やされた
俺と舞がにらみあっていると、東宮がクスクスと笑い始めた。
てっきり、舞のキレた顔が面白いからだと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
「ごめんなさい。けど、つい」
「おい、舞。お前笑われてるぞ?きっとその顔のせいだ」
「バカね、こんな可憐な乙女のどこ見て笑うのよ。きっと貴方の潰れた芋虫見たいな顔のせいよ」
...この悪口、結構心に響くな。今度一樹に謝っておこう。
「違います。ただ、スッゴい仲のいいカップルだなって」
「...なっ!?」
「理不尽な風評被害が俺を襲うっ!!」
俺の恋人はマリーだけだっ!!
「はいはい、ストップ。それで、私達はどこに行けばいいんですか?」
「あ、はい。今から皆さんにはカルディア日本支部、支部長の方と話してもらいます。支部長は気さくな人ですが、現時点ではカルディア日本支部のトップなので失礼のないようにお願いします」
いきなりトップと話せるのか。
これが、信用されてるのかその逆なのかは分からない、がチャンスなのは変わりない。
――ここでカルディアを見極める――
もし、俺達と目標が同じで協力してもらえるなら願ったり。
もし、俺達と目標が反対だとしたら...
東宮の後ろをついていきながら、一瞬優人達に目配せする。
『できるか?』
『もちろん。』
カルディアの街を歩いたとき、年端も行かない子供や魔力の少ない人達もいた。おそらく、カルディア職員の家族なのだろう。
なるべく、無関係の人は巻き込みたくない。戦うにしろ、セントラルの中で済ませるべきだ。
そして、被害を抑えるためには集団のトップを叩き、迅速にケリをつける必要がある。
紋章の力をばれないように強化する。
俺の役目は予想される反撃をすべて防ぐことだ。トップを叩くのは優人がやってくれる。
その場にいるだろう赤神達には舞が対応してくれるし。
何かあっても優花がいる。
そんな、頼もしい仲間がいるんだ。心配することは何もない。
じっくり見極めるための作戦も考えてあるし。
題してっ
A(煽って)A(煽って)A(煽りまくれ)作戦!!
人は怒ったときに本性が表れるもの。だから俺が支部長を煽って、その反応を優人達が見極めるという利にかなった作戦。
ただ一つ欠点を上げるとすれば
敵対心が全部俺に来るってことなんだよなぁ...
タンクの悲しい宿命だよね、コレ。
「よく来てくれたね。私は龍道寺 信朱。一応、この場の長をやらせてもらっている」
強い。
それが、カルディア日本支部支部長 龍道寺 信朱 の第一印象だった。
優しそうな顔。短く切り込まれた白髪混じりの赤毛。程よく焼けた肌や鍛えられた肉体を見るに実践経験も相当積んであるのだろう。
負ける気はしないが、俺達の後ろに並ぶ赤神達3人の女の子達も対応することを考えると簡単にはいかないだろう。
「そんなに警戒しなくてもいい。支部長とは言え、所詮はただの老いぼれだ」
「...へぇ、警戒しなくてもいい、ねぇ。それりゃ無理な相談だな。何せ、アンタ達は味方になるつもりの人間の顔を消し飛ばそうとしたり、狙撃しようとする集団なんだから。」
俺の言葉遣いに反応したのか後ろ3人、特に赤神の顔が面白いことになっているが今は無視する。
「それともなにか?あれはカルディアなりの挨拶なのか?ハッ、随分リッパな挨拶じゃねぇか。感心するぜ」
「...それについてはすまないと思っている。彼女は少しばかり血の気が多くてね。それにあのときは、君達が人型の魔物という可能性もあったんだ。最大限の警戒をするよう命令したのは私だよ。悪いのは彼女ではない」
「悪いのは彼女じゃない?アホか。人殺そうとして悪くないも糞もあるかよ。ツンデレで許されるレベルじゃねぇだろ。もし、俺が防ぎきれていなかったらどうするつもりだったんだよ」
本当、どっかの導師にも聞いてみたいぜ。
チラッ。
ギロッ。
...なんで味方の敵対心を一番稼いでるんだ?
「そのおきは私の持てる全ての力を使って責任を取るつもりだった」
「...具体的には?」
正直、この人がすげぇいい人ってのはもう分かってる。
こうしてバカの発言を真面目に聞いて答えてくれているってだけで、この人が上に立つ者として立派なのは十分感じた。
けど、まだはっきりさせておきたいことがある。
「君の親御さんに対する謝罪と今後の身の安全。魔法についても説明し、君を殺めてしまった理由も正直に言うつもりだった」
「...けど、まだ信用できなぇな。アンタが警戒しなくていいって言うのなら、あの気持ち悪い視線はなんなんだ?」
そう、これだけは、はっきりさせなくちゃいけない。
あの視線。殺気でも敵意でもない。純粋な好意と言うには違和感がある、気持ち悪いナニか。
あれのせいで、全てが信用できなくなっている。
あの視線だけはほおって置いたら大変なことになるって、勇者パーティー全員の勘が告げていたから。
さぁ、どうだ?
「...君の言う視線は、少なくとも今ここにいるカルディア職員のものではないと断言しよう。ただ、」
そこで区切る彼は、どこか息苦しそうに続けた。
「1人、心当たりがある。...普段は表には出てこないくせに、一体何を考えている...」
...!知っているのかっ
「その1人ってのは誰なんだ?」
「彼女の本当の名前は私も知らない。しかし、それでは不便なのでね。カルディアの方では役職で呼んでいる。『博士』と 」
「博士?」
「あぁ、彼女は謎に包まれていてね。実年齢も定かではないんだ」
「そんなヤツをカルディアは信用してるのか?」
「いや、完全に信じ切っている訳ではない。ただ、彼女の頭脳は謎に包まれていることを考慮しても、価値がある。彼女はカルディアやセントラルの設立にも関わり、それまで考えられていた防衛能力を250%上昇させた。魔術の基礎理論を確証させたのも、彼女とされている。それゆえ、彼女はカルディア内でも特別扱いでね」
「...いや、まて。カルディアの設立だと?それじゃソイツは今何歳なんだ...」
「言っただろう。実年齢も定かではないと。それに、彼女が特別扱いされている理由はもう一つある。彼女は災厄を見たらしい」
「災厄を?」
災厄。
赤神の話だと近くにいた人達は全滅したらしいが...
「あぁ、これについてはあくまで噂の域をでない話なのだし、確証もない。ただ、彼女の目を見ると感じるんだ。おぞましいナニかを」
それこそ、災厄のような。
そこで、龍道寺さんの話は途切れた。
『博士』...ね。
『どう思う?』
俺は仲間達に目線で問いかける。
『彼は信用できる、それは確かだろう。僕の勘もそう言ってるし。ただ、』
『カルディアに協力するってことは、その博士って女に近づくってことでもある』
『けれど、その人は転移してきた私達をその瞬間から監視していた人です。まるで知っていたみたいに。それってつまり、』
『どこに行っても隠れきれるか保証はないってことだ。だったら、』
『こちらから打って出るべきだと思う。受け身だと何をされるかわからないから』
そう、俺達の意思確認が終わったところで、これからの行動を確認する。
カルディアは、いや少なくとも龍道寺さんは信用できると分かった。
ならば、今することはただ一つ。
今まで貯めた敵対心を清算するっ!
「これまでナマ言って、すいませんでしたっっ!!!」
煽ったら、謝る。これ、大事。