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それぞれの出発準備

転校生の名前を変更しました。

...水着パンドラが当たらない...

「そんじゃ、いただきます」

「あら、そんな顔に似合わず意外と行儀がいいのね。てっきり乱暴されるのかと思ってたわ?」

「...それ絶対誉めてねぇだろ」

あと、初対面で頭消し飛ばそうとした女に乱暴うんぬんでとやかく言われたくねぇよ。

「失礼ね、十分誉めてるわよ。」


そう言う彼女の名は赤神 レイラン。

我が舞星高校に転校してきた美少女で、


「現代の魔法使いってか?」


俺が今知らなければならない情報として、一番はこの世界での魔法の扱いだ。もし魔法が広まっておらず、視線の主やコイツが少数の組織として利用しているのなら、その組織全員を叩き潰せばいいだけだ。

しかし、魔法が国家規模で利用されているなら力業で解決するのは不可能に近い。いくら俺に特殊な力があっても、人は一人では生きていけないものだ。恐らく10年と持たないだろう。


世界を敵に回して、戦い続けられる者など俺は一人しか知らない。


「魔法使い、ね。私達は魔術師と呼んでいるけれど...あなた達、本当に異世界とやらに行ってたのね」


...やはり、俺達が異世界から転移してきたことは知っているのか。

赤神の口振りからして、ストウスウェイトについて詳しく知っているわけではないらしい。魔術師って名称からこちらでは魔法を魔術と呼ぶらしいが、その力についてもほとんど同じと思っていいだろう。赤神が授業中に向けてきた視線(物理)も、見た感じ舞が使っていた魔法と似ているし。

ただ、導師(アイツ)の場合は目視可能な範囲すべてを火の海にするというだけで...


「さっき私の熱い視線(物理)を防いだのも、異世界の魔法かしら?」

「さぁ、なんのことだ?俺はアンタがチラチラと見てくるから、てっきり気があるのかと思ってたんだが」

「えぇ、否定はしないわ?私、あなたに興味があるの。私がさっき使った魔術は視線を向けた相手を、高熱へと変換した魔力で焼き殺すもの。その性質上、暗殺なんかにもよく使われるのだけれど、あなたの場合は魔術自体が上手く発動しなかったのよ」


おそらく、その魔術(今は相手に合わせる)は相手の周囲や体内の魔力を高熱に変換するものだろうが、紋章の魔力吸収を上回ることができなかったのだろう。紋章の効果範囲外の場所で魔術を使い、それを俺に当てるという過程なら魔術を発動させることができるのだが、紋章の効果範囲なら魔術を発動することは難しい。


「あの魔術は難易度で言うと4。ある程度の魔術師なら使うことはできるけれど、私の魔力なら並大抵では防ぎきれないはずよ。まして、発動自体をキャンセルするなんて。余程の術者か、もしくは何か固有の能力でもあるのかしら?」


難易度4...

ストウスウェイトでは下から順に初級、中級、上級、神話級の順にランク分けされている。判断基準は主に威力だが、その貴重性や隠密性などによってもランクが上下する。

初級、中級までは努力次第、上級は才能が必要になり、神話級に至っては神や、精霊などの上位存在の力が必要となる。

上限がはっきり分からないが、4で『ある程度』なら俺らで言う中級魔法を表す言葉と考えて構わないだろう。


「あなたの保有する魔力はそれほどでもないから、固有能力と考えて間違いはないようね」


そして、赤神が俺の魔力量をそれほどでもないと認識している辺り、紋章の認識阻害は効いているらしい。課題の頃から自分の魔力量を本来の150分の1、ストウスウェイトの一般的な魔力量と偽っているからだ。

こちらに来たときは魔王との戦いでほとんど魔力がなくなっていたし、紋章の力である程度回復したがそれも隠蔽してある。

難易度4とやらの魔術も威力自体はそれほどでもなかったことから、俺の力はこちらでも十分通用するらしい。


「その能力は魔術を妨害すること?けど、それだとあなたが私と二人っきりになった理由が分からない。私が銃などの武器を持っている可能性もあるかぎり、回りに人がいる方が私の行動を制限しやすい。にも拘らず、ついて来たということはそれだけ自信があるということ」


あとは魔術がどれ程広まっているかだが..


「つまり、あなたの力は魔術を妨害、もしくは魔力の吸収。加えて、何らかの防御能力あるいは身体能力の向上させる力。と、いったところかしら」


これ以上は情報を知られ過ぎるか?


「...まいった、降参だ。恐れいったよ。まさかここまでばれるとは思わなかった」

ここまでは予想範囲だ。できたらもう少しこの世界の魔法関連について知りたかったんだが。


「確かに、俺は一ヶ月くらい前に異世界に行ったんだ。分けも分からず呆然としていたとこを隠居生活してたジジィに助けられてな。その時、自衛手段としてそのジジィが研究してた魔法...こっちでは魔術か?それを習ったんだ。能力はあんたの言った通りだよ。魔法の妨害と身体能力の向上だ」


この言い訳は授業中に考えていたことだ。

無理があるし、いずれは嘘がバレるだろうがそれはその時考えればいい。


「その時、あなた以外にも人はいた?」

「いや、俺一人だ」

「じゃあ、異世界に行った理由は?」

「分からねぇ。ただ、ジジィは天災みたいなものだろうって。現に理由も分からず戻ってきてたし」

「そう...」


さて、この流れで後どこまで聞き出せるか。


「それで、今度はこっちから質問していいか?」

「えぇ、どうぞ」

「アンタは何者なんだ」

さぁ、どう答える


「...それにはまだ答えられないわ。それを答えるには私の組織に入ってもらう必要がある。とはいっても、何も分からない内に組織に入れって言っても怪しさ満点だろうから...そうね、週末は空いているかしら?」


...流石に答えてはくれないか。


「大丈夫だ」

「なら、職場体験といきましょうか。もし、就職するならお勧めするわよ?なんせ、一般には知られていないとはいえ一応は国家公務員扱いだから」

「...へぇ、そりゃ将来安泰だな」


国家(・・)公務員、ね。


「その時、詳しく話すけどあなた以外にも異世界に行っていた人が3人いるの。だからというわけではないけれど、安心してもらって構わないわ」


「...了解、そんじゃ昼休みもそろそろ終るし、戻るか」

「そうね」


いつか再会するとは思っていたが、こんなに早くになるとはな。

正直、問題は山積みだが4人揃えばなんとかなるだろ――


そう思いながら、赤神と教室へ戻ると...



「ブツブツブツブツブツブツ」

魔王城もかくやという怨念が教室に渦巻いていて。


「ヤッホー、さっきはお楽しみでしたねっ!」

折本のヤツが、すげえ腹立つ笑顔で話しかけてきて。


「それじゃ、今週の土曜日空けといて下さいね。雄護(ゆうご)くんっ」


その上、煽るように赤神が満面の笑みで、けれど目だけは笑わせずにクラス全員に聞こえるように言うせいで、コイツがまだ自分の技が防がれたのを根にもっているのに気づいたが、その時には手遅れだった。


ギロッ


幽鬼どもがさらに殺気をのせ。


ニコッ


折本が腹立つサムズアップしてくるから、


――土曜日まで、無事でいられるか、俺?


守護者になって久しく、感じていなかった思いを感じていた。









「それじゃあ、今週の土曜日にその職場につれていってくれるのかな?」

「はい、その時には優人さんと優花さん以外の帰還者にも会えるはずです」

「たしか、後2人いるんでしたっけ?」

「えぇ、男性と女性1人づつ」


そう会話する男女は、物語に出てくるような光景だった。

1人は茶髪の美男子。その容姿は異国の王子様のようで、けれどその顔に浮かぶ笑顔のおかげで親しみやすさを感じさせる。

1人は茶髪の美少女。先程の少年とは兄妹なのだろうか。よくにた顔立ちをしていおり、こちらもお姫様のようだ。

そして、


「それにしても、東宮(ひがしのみや)さんとお出かけできるのは光栄だね」

「噂の美人転校生ですもんね。一生分の運を使っちゃったんじゃないですか、兄さん?」



大和撫子という言葉は彼女のためにあるのだろうか。青みがかった黒髪は美しく凪いでいて、静かな海を連想できる。


彼女はこの学園に転校してきた東宮 カリン

その見た目も合間って、転校して間もないのというのにすぐに学園の話題となった少女だ。

朝、少し会話しただけですぐに仲良くなった3人は一緒に昼食をとっている最中だった。


「いえいえ、こちらこそ海城学園一番の人気者である、貴方達兄妹と仲良くなれてとても運が良かったです」


...まぁ、と続けて


「貴方達からすると異世界に行ったことは運がよかったとは言えないでしょうが」

彼女のそんな考えに、



「それは違う」

「それは違いますよ」


即答する。

例え、この会話自体が嘘まみれで、真っ黒なものだとしても、

それだけは偽れない。


「向こうでした経験は、何物にも代えがたいものでした。」


悲しいことがあった。泣きたくなって、心が折れそうになったこともある。

けれど、


「親友が、できたんだ」

普段はバカだけど、いざとなると頼りになる。

誰よりも前で、仲間を守るその背中に何よりも憧れた。


「一見キツそうな性格ですけど、あれはあれで可愛いですし」

焼くぞ、燃やすぞっていつも言ってるけど、いざ意中の人の話になると自覚なしにデレちゃうところとか


「だから、後悔はしてないよ」

「だから、後悔はしていません」



その返事に、

「...そんなに仲良くなったのですね、そのお爺さん(・・・・)のとは」


「えっ!?」

「あ」


「....」

「....」



なんだよ、意中の人の話で無自覚にデレるおじさんとか。ダレ得だよ?

兄さんは山に籠るおじさんの背中に憧れたんですねっ。芝刈りガンバって下さい!


兄妹喧嘩を一瞬のアイコンタクトで済ます。


「そ、そうなんだ。異世界で右も分からなかった僕達を助けてくれたいい人でねっ」

「魔法についても教えてくれましたし!」


そういう嘘をついていたことを思い出す。

まぁ、異世界だし、山に籠るお爺さんひとりくらい居てもおかしくないだろう。


「それは、運が良かったのですね」



あ、あはは...


これ、土曜日まで誤魔化しきれるかな、僕達?


そんな不安を、勇者と聖女は抱いていた。







ごく普通の学校。ごく普通の教室。しかし、その空間は今嵐の前のように静まり返っていた。


「それじゃあ、土曜に連れていくのね」

「えぇ、貴方みたいな野蛮な人は連れていきたくないですけど、これも仕事ですしね」


そういう彼女達は、見た目だけなら可憐な乙女と言っても違いない。...見た目だけなら。


片や、黒い髪に深紅の瞳。名を、九条 舞

片や、金の髪に黄緑色の瞳。名を、玄樹(くろき)メイ


どちらも見た目は整っているが、その目は剣呑な雰囲気を醸し出している。


「ハッ、アンタから喧嘩売っといて誰が野蛮ですって?燃やされたいの?」

「やれるものならやってみて下さいよ。まぁ、貴方程度の炎なんて生ぬるくて気持ち悪いだけでしょうが」

「へぇ...」


黒髪の少女の回りに炎が舞う。

導師は思っただけで魔法を行使できる。それは感情により威力が左右されるということだが、彼女に限れば下がることはあり得ない。


「...土曜日、私以外も来るんでしょ」

「はい。なんです?身近では人が近づいて来ないから、異世界で度胸が鍛えられた人を狙おうと?ププッ、無理ですよ~異世界には行ったことありませんが、貴方みたいな野蛮人いないでしょうし」

「いるわよっ!!3メートル越えるゴリラみたいなオークとかっ!!」

燃やしたけど



「はぁ、まあいいわ。決着は土曜日につけてあげる」

「望むところです」


そうして、少女達は別々に教室を去って行く。が、扉を開く直前黒髪の少女に金髪の少女が語りかける。


「あぁ、それとひとつ。土曜日ですけど、やっぱり地図渡すので現地集合ってことで」


だって、もし一緒に行動して友達だって思われたら死にたくなっちゃいますし



....土曜日まで我慢できるか、私?


昂る炎を抑えるように、導師はその場を立ち去った。








中国、とある霊峰だった場所(・・・・・)

神秘を感じさせたであろうその場所はしかし、今はその面影すらない。

その岩山で、一組の男女がいた。男は腕を組ながら立っており、少女は汗だくで倒れている。


「な、なんで...」

「言ったはずだ、俺を連れて行きたければ武力ではなく笑いを極めろ」

「どういう、ことですか...?」



時間は少し遡る。

少女、秋津(あきつ)ハクは上司から命じられた仕事でこの男に会っていた。


「正直、彼を連れて来れるかどうかは五分五分です。誰が行ってもそれは変わりません。ですので、彼と雰囲気が似ている貴方に頼みますよ」

――無表情的な意味で――


その言葉はいまいち理解できなかったが、要は対象をあの人に前に連れてこればよいのだろう。彼女のことは信用できないが、上司なので仕方がない。

さっさと終わらせようと中国までやって来てみれば...


「笑わせてみろ」

「?」

「いや、少し考えてな。望んでいなかったとはいえ、まだこの命は少しばかり続くらしい。借りを返すついでに、笑顔の練習をしようと思ったんだ」


だから、笑わせてみろ


変な男に出会った。

上司のいう彼とはおそらくこの人のことだろう。自分に付いてきて欲しい、と言った発言の返事がコレだった。


笑わせたら、付いてきてくれるのかな?

そう思い、


「...?......!」

少々悩んだ後、むにぃーと自分の顔を両手でつまみ変顔を作る。


が、

「なんだ?定期的に自分の顔を痛め付ける趣味でもあるのか?変わったやつだな。」


...イラッ


いくら自分が表情に乏しいとはいえ、感情が無いわけではない。

急に「笑わせてみろ」と、言われ対応してあげた自分に感謝もないのはおかしくないだろうか。いや、おかしい。


その結論に至った瞬間、ハクは男の背後に回っていた。

その身に黒い雷を纏いながら、雷速に近い速さで殴り付ける。


意識を飛ばして、連れていく...


相手に拳が触れたと同時に雷を解放する。意識を刈り取るには十分すぎるソレは...


「ふむ、これが日本のノリツッコミと言うやつか?6年の内に笑いは随分と進化したらしい」


さすが日本、未来を生きているな


「っ!?」

すぐさま距離をとる。

手加減はしたが、少なくとも後遺症が残る程度には威力があったはずだ。


それを防ぎもせずに...


男は何もしていない。腕を組んだ状態で、後ろに回った自分すら見ていない。


「だが、どの辺りが面白いのかいまいち分からんな。すまないが、もう一度頼む」


...イライラッ

今度は正面に回る。狙うは顔。お前の攻撃など効かない、とバカにされたと思ったハクは、全力の一撃を顔面に男に食らわす。

たが、


「やはり、まだ分からんな。ただ撫でているだけではないのか?」


ブチッ


未だ無傷の男、その発言にキレた。

その余波で周囲の景色が変わるのすら気にせず、ただひたすらに男を連打する。


これでっ...


最後に渾身の一撃を加え、男から離れたハクはようやく拳を降ろす。

土煙でよく見えないが、あれほどの攻撃を食らって...!?



「な、なんで...」

「言ったはずだ、俺を連れて行きたければ武力ではなく笑いを極めろ」

「どういう、ことですか...?」

意味がわからないよ


「まぁ、いいか。笑いについては日本で鍛えるとしよう。丁度、この視線にもうんざりしていたところだ」


ほら、行くぞ。


そういいながら歩き出す彼を、ハクは呆然見送ることしかできなかった。









今一度、勇者達は揃い、魔王が舞い戻る。

ソレは果たして運命なのか

それとも....















「あぁ、楽しみです。」

やっと、物語が始まるのだから。



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