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忘れない想い出

タイトルを変更しました。

作者の確認不足のせいです。まことに申し訳ございません。

新しいタイトルは「守護者が謳った英雄譚(ラブレター)」


...なんで英雄譚でラブレターと読めるのかは作者も分かりません。

「いや~なんて言うか、すごい子だね赤神さん」

「あぁ間違いない、女神だ」

「なに言ってんだよバカ。女神はマリーだ」

「オマエこそなに言ってんだよ...」


夏休みが終わり、二学期が始まった。普通であれば目が死んでいる生徒がいてもおかしくないこの時期だが、うちのクラスの大半は何故か皆笑顔だった。


「笑顔って言うか、ニヤニヤしてるよね。特に男子」

「全く、情けない。大和男子たるもの常に気を引き締めてなければというのに。」

「だったらその潰れた芋虫みたいな顔何とかしろよ」

「これ地顔だからっ!しかもトマトよりひどくなってる!!」

そう叫ぶバカはほっといて。




「はじめまして、赤神 レイランです。これから、よろしくお願いします」




一回の自己紹介でクラスを話題を掌握した転校生、赤神 イリアは今クラスメイトの質問攻めにあっている。

中には失礼な質問もあるというのに、顔色ひとつ変えずに対処している辺りどこぞの導師がよぎったのは気のせいらしい。


舞にスリーサイズを聞こうものなら燃えるか、焦げるか、灰になるかのどれかしかない。


「はいはーい、皆さん、質問はそこまでですよ!経験無さすぎてがっつくのはわかりますけど、今から授業なので続きはお昼休みにでもしてくださ―い」


すげぇ、一撃で男子連中が黙った。


「ふっ、これだからチェリーボーイは困る。俺みたいに常に気品を持って優雅でなければモテないぜ?」

「黙れ、潰れた芋虫風情が」

「がっつく度胸がなくて、キョドってただけでしょ?」

「....っ」

無言で泣くなよ。



なんだかんだで、四時間目。授業の時間が残り10分を切った今、この教室には場違いな殺気が流れていた。原因はおそらく誰が赤神を昼食に誘うか、という事だろう。


何事も、一回目というのは重要だ。

慣れない制服、慣れない教室、慣れない授業。新しい場所で、不安になっているであろう転校生を優しく昼食に誘う。そうすることで今後も昼食を共にしてもおかしくない空気を作る。そして、そこから始まる、甘くせつないラブ...


まで、殴るのを我慢してバカの話を聞いた俺を誉めてあげたい。



その転校生はというと、教室に流れる不穏な空気も、その原因もまるで理解していないとでも言うように、薄く微笑みながら授業を受けるその姿は普通の高校生だ。



...俺に向けて、殺気を送っていなければ。

教室に入ってきた時に目が合ったのは気のせいではなかったらしく、それからもちょくちょく(殺気の籠った)視線を俺に送ってきた。しかも、かなりの魔力を籠めているらしく、魔法のレベルに達している。ばれないように紋章の力で防いでいるが、一般人なら首から上が消し飛ぶ威力だ。確実にコイツは魔法のことについて知っているだろう。


魔力というのは通常、空気中に魔力が含まれていたら誰の体内にも存在している。それは呼吸で魔力を取り込むことができるからだ。一回の呼吸で取り込める魔力の量が多ければ多いほど、失った魔力を回復するのが速い。これは才能に依存し、訓練しも、一呼吸で取り込める魔力量は差ほど変わることはない。


一方、体内に所有できる魔力量は訓練である程度上昇させることができる。これは、血液と同じように体内で魔力を作り出す器官(一般的には心臓)の性能を向上することができるからだ。

向上させるには一度体内の保有魔力を使いきる必要があり、そのためには魔法を使わなければならない。

最大量も才能によって上下するとはいえ、赤神の保有魔力は俺たちが呼び出された王国の魔法部隊でもトップクラスだろう。


...だが、コイツじゃねぇな。


それは、予想ではなく確信。

先ほどから送られる視線と、俺がこちらに戻ってきた時から感じている視線は別人だ。赤神の視線には純粋な殺気しかないのに対し、謎の視線から感じるのは敵意ではなく愛情(・・)。

それも、研究者が有能な実験動物に向けるような好意。こちらが相手にとって有益であるうちは危害を加えられないだろうが、もし実験に不要になった場合は...



そうなる前に、こちらから潰すか?

殺気を受け続け、思考が勇者のものに変わっていたのかもしれない。そんな物騒な考えをしているうちに、授業が終わっていた。これまでなら一樹や他の男友達と一緒に食堂にでも向かうのだが、男どもは視線で牽制しあい、妙な膠着状態に陥っており、女子生徒達は気楽なもので赤神に話しかけようとする。


しゃあねぇ、一人で食うか。

そう思いつつ、食堂へ向かおうとした時、スッと赤神が立ち上がる。

赤神から動き出すとは考えていなかったのか、一瞬クラスの空気が止まる。その一瞬を狙い、



「青崎 雄護くん」

「...なにか?」

「一緒にご飯、食べませんか?積もる話もいろいろと、あるでしょう」


...考えろ。

このタイミングで仕掛けてくる理由。

少なくとも、今日一日は様子を見るだろうと考えてコイツに話しかけなかったんだが。


「へぇ、それは光栄だな。アンタみないな美人さんに誘われるなら、喜んでお供させてもらおうか」


相手に気取られないように発動していた紋章の力を強化する。

コイツや謎の視線の主が無関係な人間を巻き込まないとも限らない。最悪、日本ごと消し飛ばされるこも意識に入れて展開範囲を広げられるようにしておく。ユーラシア大陸までだったらなんとかカバーできるが、それ以上だと防御能力に不安が出てくる。


このタイミングである必要性でもあるのか?

様々な可能性を考えるが、


「それは良かった。では、まだこの学校に詳しくないので、いい場所を紹介してくださる?できれば二人っきり(・・・・・)で過ごせる場所を」


いや、まてよ...


コイツまさかっ!?


膨れ上がる殺気。

それは、目の前の転校生からではなくその周りから。


「ブツブツブツブツブツブツ...」

一樹を筆頭に男子生徒が幽鬼と化す。


女子連中も興味津々といった風にこちらをみてくる。

折本のやつがすげぇ腹立つ笑顔でサムズアップしていて。



コイツ、俺に嫌がらせしたくてこのタイミングでっ!?



俺の手を引き、教室を出ようとする赤神。手を握る瞬間、俺にしか聞こえない用に小さく、


「なんで私の熱い視線(物理)くらって死なないのよっ」


しかし、その台詞に。

今まで考えていた可能性のことや、

コイツ今まで猫かぶっていやがったとか、

お前より後ろのバカの視線の方がキツイんだよとかよりも



『なんで、私の魔法直撃して死なないのよっっ』

『ハッ、泣きそうな小娘のロウソク程度、紋章使わなくても、俺は死なねえよ』



懐かしい、想い出が甦って、



「やっぱり、第一印象って当たるもんだな...」



そんな感傷に浸りながら、俺と赤神は教室を出ていった。









ふと、昔のことを思い出していた。

昔と言っても、こちらでは6年程しか経っていないらしいが。


体感時間で300年程前、俺は異世界に連れ去られた。

訳もわからず世界の怒りを静めろと命じられ、まともな装備も知識も与えられず追い出されるように国を出た時は、怒りや憎しみしか感じなかった。


しかし、その思いは旅をするうちに変わることとなる。


疫病で苦しむ村、飢餓で生きる気力を失った街。局所的な氷河で時の止まった国。


そして、そんな中でも変わらず輝き続ける暖かい光(ひとびと)。


そんな光を消したくなかったから。

「君は、ここで、消えてゆけ」


世界に害しか与えない人類を、世界を守るために滅ぼそうとした幼い女神。

このままでは世界も人類も、どちらも救えないから。

だけど、世界が残れば遠い未来で人類が甦る可能性もあるから。

それが例え、どれだけかかっても見守り続けると誓ったから。

今は、世界のために眠ってと、そう願った。

けど、


「なんで...泣く..の?」


自分のしたことは、人類にとって悪いこと。

世界と人類を天秤にかけ、人類を見捨てた私が殺されるのはおかしなことじゃない。

それくらいは、生まれたばかりの私でもわかる。


生まれながらにして自然のすべてを司り、制御しきれない力を持った彼女は願っただけでもそれが具現化する。

そこに悪意がなく、純粋な想いしかないことが分かってしまったから。

その顔に、どうしても彼女が重なってしまったから。


「約束する。確かに、人類の中にはどうしようもない人も存在する。けど、そんな中にも、いるんだよ」


望みもしない力を与えられ、そのせいで恐れられ飯も食えずに死にかけていた子供に優しく手をさしのべてくれる人が。


「あのとき、人類を滅ぼさなくてよかったって、思わせるから」

だから、


今は、僕達(じんるい)のために、眠ってくれ。


その願いに、

「それじゃ、1つだけ約束して?」


その約束を、今でも覚えている。


「もし、そのときが来たら」

そんな、誰もが笑って暮らせる日がきたら

「あなたの、飛びっきりの笑顔を、見せてっ!」


「...あぁ、最高の笑顔を見せてあげるよ」







...だから、




「お前はよく働いてくれたよ」


世界を襲っていたあらゆる災害がなくなって


「たが、お前は強くなりすぎた。はっきり言って、もう邪魔なのだよ」


僕を呼び出した国に戻った時


「だから、死ね。この女を殺されたくなければ」


あのとき、優しく手をさしのべてくれた少女が、見るも無惨な姿になっているの見て


「すまない、シェルファっっ」


例え、君をここで見捨ててでも、人類(こいつら)を滅ぼすべきだと確信したから


「すまない」


幼き女神よ。生まれたばかりで、名前すらなかった君の選択が、正しかったと後悔したから


「な、なんだっ この力はっっ!?」


その間違いを償うために、


「よ、よせっ!!この女がッッ!?」


今度は俺(・)が、


「世界の敵になろう!!」


ここに誓う、俺は負けない

今度こそ、真に人類を救うために

世界がひとつとなる、その時まで

だから、それまで俺の笑顔は待っていてくれ

ちょっと時間はかかるかもしれないが、その間は俺の仏頂面でも見て笑ってていいからさ






その日、ひとつの王国が滅び、一人の『魔王』が誕生した。


あらゆる悪行を、表情ひとつ変えずに行うその姿は世界を絶望に陥れ、


それから300年、世界と魔王の戦いは続くこととなる。


4人の勇者が現れるまで、その命尽きる寸前まで、


彼が笑うことはなかった。







そう、


「命が尽きたと、思ったんだがな...」


あの4人になら討たれてもいいと感じ、あの世で笑う練習でもしようと思っていた時、随分と懐かしい感覚がした。

それは異世界転移。身体を分解、再構成することで転移するその魔法はその過程である程度融通がきく。

例えば服装を変えたり、例えば、怪我を治療したり(・・・・・・・・)。黄金の剣で貫かれたはずの心臓は、傷ひとつ無い。





「誰かは知らんが、」


ようやく約束を果たせる時が来たと、そう思ったのにもう少しだけ待たせることになりそうだ。

けれど、ちょうど良かったと考えればいいか。

あの4人の気配を感じるということは、俺の二の舞にはならなかったらしいし、

彼らには随分無茶を押し付けたから、少しくらい借りを返さないと笑うに笑えない。



だから、



「無事でいられると思うなよ」



無遠慮に視線を向けてくる、この世界の神(・・・・・・)に

そう、宣言した。





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