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導師と玄武

スマホで書いてる途中に充電が0に。

最近80%からいきなり0%とかフェイントを覚えたらしく、やたらと仕掛けて来ます。

...治るんですかね、これ?

赤神達の提案で模擬戦をやることとなった俺達は、カルディア内にあるドームに来ていた。

大きさとしては学校の体育館程度なのだが壁や床の他、一階のコートを覆うように防御魔術が張られている。おそらく外にあった門と同じ様なものだろう。また、二階には観覧席の用なものがあり、普段はここで観戦もできそうだ。ただ、今回は俺達の能力をなるべく広めたくないと言う我が儘を聞いてもらい、誰もいない。


「この防御魔術、外にある門と同じで周囲の魔力を取り込み半永久的に発動するようになってるね。それも防御系だけでなく、自己修復なんかの効果もある」

「凄いですね。ストウスウェイトでもここまでのものは数える程ですよ。どうやって発動してるんですか?」

「...それについては私も詳しく知らないんだ。これらの魔術もすべて博士の手によるものだからね」

「まーた博士かよ...」


俺達は現在、ドームの貴賓席に居る。

赤神達四神はなにやら準備があるらしく、ここに来る途中で別れている。


「けれど、このような場所まであるんですね」

確かに、優花の言うとおり、観客席だけでも200人以上集まることができるだろう。今は人がいないとは言え、これだと中央に居る舞にも相当のプレッシャーが...


「...」


「ってそんなわけないか」

「あの顔は前しか見てない顔だね」

「つまり、いつも通りってことですよ」


軽く目を閉じ、自然体で立つ彼女に緊張は感じられない。

パット見静かに見られるが、あれは噴火直前の山と同じだと言うことはこれまでの付き合いで分かっている。


「というか、なんで舞ちゃんはあれほど怒っているんだろ?そりゃ、玄樹さんが煽ってるからなんだろうけど...そこまでかな?」

「確かに、そんなことを言い始めたら俺なんか1000回は灰になってる」

どんだけ灰から甦るんだ...不死鳥かよ。


「さりげなく自分をカッコよく表そうとしないで下さい、変態(ゆうご)くん...まぁ、大体予想はつきますけど。舞があそこまで怒る理由は一つですし」




なんだかんだでまだ、諦めきれてないんですね...舞






「お待たせしました」

俺達が貴賓室で待機していると、東宮と赤神が入ってきた。


同時。

俺と優人に走る衝撃。


女の子の服などあまり詳しくない俺は辛うじて中華風ということしか分からないが、これだけはハッキリと分かる。


エロいっ!!!


スリットが入りすぎてもうスカートとして役にたってないんじゃね?という赤神。

短過ぎてもうスカートとして役にたってないんじゃね?という東宮。


「...成る程。確かに、凄い」

「これ程とはな。これが、四神か」

赤神達の整った見た目も合間って、何だか変な気持ちになりますねっ


「ふぅーん。やっと私達の凄さを理解できたのね」

「...だからコレ着るの嫌なんですよ」


俺達の感想を勘違いしている赤神と、正しく理解している東宮。

どちらが幸せなのだろう。

少なくとも、俺と優人は幸せだった。


そう、

「随分と嬉しそうですね。まだそんなに余裕があるなんて。1週間では足りなかったのですか?」



この言葉を聞くまでは。








俺と優人が絶望に暮れる中、5メートル程の距離を置き舞と向かい合うようにして玄樹が立っていた。

玄樹も赤神達と同じように着替えている。


「それで、その格好は野郎共の夢を叶えたって訳じゃないんだろ?」

「当たり前よ。この服は博士が個人のために考案した特注品。魔力を込めるだけで自身の防御力を上げるだけでなく、魔術の効果まで上昇させる優れもの。...まぁ、見た目に文句が無い訳でもないんだけど」

「博士、実はいい人なんじゃないかな?」

「...3ヶ月、逝っときます?」

やべぇ、優人の顔から色がなくなったぞ。




「それでは、私達の魔術について少し説明しようか」

玄樹と舞が静かに見つめ会うなか、龍道寺さんがそう言い始めた。


「魔術が発見されたのはかなり昔の事なのだが、対魔物(ビジター)として活用できるようになったのは最近のことなんだ」


それまで、魔術を発動させるには意識を集中させる必要があり、詠唱をする等で集中しようとしたのだが目の前に魔物(ビジター)がいる状況でそんなことができる人は限られる。それ故、魔術は超遠距離からの射撃として使われていたのだが距離を置いた魔術に威力を求めることはできなかったそうだ。

しかし、それを解決したのが


「博士だ。彼女は魔力を流すだけで魔術を発動できる魔術基盤と言うものを開発した。この魔術基盤のおかげで魔物(ビジター)の前でも確実に魔術を発動できるようにしただけでなく、それまで常人にはほぼ不可能と考えられていた魔物(ビジター)との接近戦を実現したんだ」


魔術基盤とは俺達で言う魔方陣であり、特殊な規則性を持った回路の用なもらしい。それを既存の武器などに彫ることで、魔術を使用できるようにする。それ以来、博士以外にも魔術基盤を作れるようになったのだが、未だ博士が作る魔術基盤の性能を越える物はないらしい。


「博士が作る物の性能は桁違いたが、魔術基盤を扱う人物にも相応の実力と才能が求められるものばかりでね。一般の魔術師用の物も作られている」


そして博士が作った魔術基盤を扱える者が、彼女達四神。

日本を守護する魔術師。




しかし、その話が本当ならば。

博士の匙加減一つでカルディアの前線は崩壊するということでは?。



「軽く説明もしたところだし、そろそろ彼女達の戦いを始めようか」

そんな疑問を浮かべつつ、俺は舞達の戦いを見守った。








「へぇ、随分おめかししたのね。馬のほうが似合うでしょうけど」

「馬子にも衣装という言葉に掛けてるとしたら、間違ってますよ~。馬子にも衣装の馬子とは、馬ではなく馬に乗る人を指す言葉ですから」


ヤバい、ちょっと恥ずかしい...


「ふ、ふん!知ってるわよ、そんなこと。馬子さんのことでしょ?」

「...誰なんですか、馬子さん」

私だって聞きたい。


「本当~筋金入りの強がりですね、貴女」

「何よ、もしかしてバカにしてる?」

「いえ、少し羨ましいがってます~」

「はぁ?」

「こちらの話なのでお気になさらず」


向かい合った今日のコイツは少しおかしい。

普段なら馬子さんについてこの10倍はバカにしてくるはずだ。

...いや、薄々は気づいてる。コイツが彼や私を貶していたのは私達を探っていたからだって事くらい。この模擬戦だって、赤神さんの個人的な感情もあるだろうけど実際は私達の実力を図るのが目的だろう。


「ま、燃やすのには変わりないけど」


手加減くらいはしてやろうと思う。


「何のことですか~?」

「こっちの話だから気にしなくていいわよ」


『それでは、両者とも準備はいいかな?』


「はい」

「大丈夫です~」



火加減はしないけどねっ







始まった模擬戦

先手を取ったのは舞の方だった。

「燃えなさいっ」


その声と同時、玄樹に迫る3つの火球。

導師は魔法の使用にこれといった条件は存在しない。思っただけで魔法を発動できる彼女は、魔力の続く限り相手を燃やす。


「無駄です」

対する玄樹なにもしない。しかし、彼女の周囲を浮かぶ3つの円形の盾が舞の火球を防ぎきった。緑黄の盾には傷一つ無い。

おそらくあれが玄樹の魔術基盤なのだろう。見た目通りなのだとすれば、俺と同じで守護専門。

ならば、


「なら、これならどう?」

「なっ!?」


対処法は2つ。

1つは相手の魔力切れを狙う持久戦。

もう1つは相手の守護能力を上回る火力による短期決戦。

そして、あの火力バカが後者を選ばない訳がない。


舞の背後には、先程の100倍はあるだろう火球。

視界全てを埋め尽くすソレは見るもののトラウマを新たに増やすほどだ。ソースは俺。



舞が腕を振るうと共に玄樹に襲いかかる火球。

着弾と同時に咲く爆炎の花。あれの直撃を食らって無事で済むとは思わない。

たが、咲き誇ったのは爆炎の花だけではなかった。



「起きろ、北方の守護者」



輝く緑黄の花。

それはいったいどこから現れたのか、玄樹を炎から守るようにはえていた大樹だった。相性が悪いはずの炎を完璧に防いだだけでなく、


「私の炎をっ!?」


樹の幹には紅く輝く魔力の塊。

あの魔力は間違いなく舞の物だ。


「私の能力は敵の魔力を吸収する樹を作ること。この樹の前には魔法は通用しないと思ってください~」

「...」


「それと、これは返しておきますね」

大樹が舞の魔力を吸い、紅く紅葉する。


「...」


玄樹の足元から生える樹が、先程のお返しとばかりに大波のように舞襲う。

しかもその樹は舞の魔力を吸収し、炎の属性まで得ているようだ。燃え盛る樹が、舞に叩きつけられる。







「あれが、玄樹君の持つ魔術基盤。北方七星・玄武。四神の中でも守りに特化した力。自身の魔力で作り出した樹により魔力や衝撃を吸収し、その力を樹に与えることができる」

そしてその性質上、魔術師の天敵と言える。



その言葉に、俺は声も出なかった。

それほどの驚きと動揺、何より1つの心配。


魔力を吸収し、その力を樹に与える...だと?


そんな能力ならっ、舞は勝てないんじゃ








とかではなく、


「俺と能力(キャラ)被ってんじゃねぇか!!!」

「失礼なこと言うなっ!!」



赤神に燃やされるが、今は気にならない。

このままでは俺唯一の特徴である"守護者系男子"というアイデンティティーがっ



「よっ、没個性!」

「親友の心抉るんじゃねぇ!」

「新しい個性でも作ればいいんじゃないですか?セーラー服男子とか」

「それ変態じゃね?」

「あ、確かに今と差ほどかわりませんねっ」

...結構真面目に泣きそう。





「あ、あの皆さん九条さんの心配は...?」

東宮がそう言ってくるが、


「心配?舞ちゃんの?」

「そんなことより今は俺の新たなキャラをだな」

「たたない系男子とか?」

「ナニがっ!?」

戻すよね?一週間後には戻してくれるよね?






「アンタの今後の変態生活についてじゃなくて、九条さんの心配よ。あのままじゃ厳しいんじゃない?」


魔力を吸収する魔術師の天敵。普通の魔術師なら確かに勝てない。けど、


「いや、それはないよ」

それは、期待ではなく確信。

これまでの3年間、俺達は死に物狂いで戦ってきた。その中で培った実力は誰よりも理解している。


「ま、見てなって」






燃え盛る樹が、舞に叩きつけられる。







直前、その樹が動きを止めた。







「...!?」

玄樹の顔を見るに、玄樹の意思で止めた訳ではないらしい。


「うわぁ~ここに来てまさかのキャラ被りとか。...いや、私も人のこと言えないか?」



「な、なんで!?」

そんな舞の呟きも今は聞こえないのか、玄樹は混乱しつつも問いかける。



あの樹は本物の樹ではない。私自身の魔力で作り上げた物。それが私の命令を聞かないなんてっ



「...みたいな顔してるけど。理由、聞きたい?」

「っ、お願いします~」

「そっかぁー、聞きたいかぁー」


そう言う舞の顔は死ぬほど腹が立つ。ソースは俺。

玄樹も同じ感情なのだろう。一周してなぜか笑顔だ。



「なら、しゃあない。特別に教えてあげよう」

勿体ぶった舞は、そこで一呼吸置きその理由を告げる。





「その樹、燃えてるじゃない」

「...」

「...」

「...えっ?」

「ん?」


...


「はい?」

「いや、だからね。この私が燃えてる物を操れないわけないじゃない?」




...



「はぁぁぁぁぁぁっ!?」

「んだよ、うるせぇな」

なんで赤神が驚いてるんだよ。


そう思っていた俺だが、驚いていたのは赤神だけではなかったらしい。


「レイランちゃんの気持ちも分かります。魔法は発動した人の意思で動く存在。それを操るなんて...」


「まぁ、普通はそうなんですけど」


思っただけで魔法を発動できる、舞の能力。

これは言葉よりで聞くより難しい。

この力の欠点として、自身の感情に反応して勝手に発動される点だけでなく、自分自身が出来ないと思っている魔法は使えないと言う点がある。


例えば前者は常に冷静に感情を制御することで、ある程度抑えることができるらしい。...どう見ても抑えられていないが。

ま、まぁ前者は解決の目処がある。

しかし、後者はなかなか解決できない。死者蘇生、時間操作など舞が出来ない、してはならない(・・・・・・・)と思うことはできないのだ。


しかし、それらの欠点を補うほどの長所。

舞がこの能力を持つからこそできた長所。

それが、


「思い込み。舞ちゃんが"自分にできない訳がない"って強く、世界を貫く程強く思うことで常識すら壊す能力になる」

「簡単にいえばバカだな。世界を越えるバカ」


その性質故、俺達勇者パーティーの中で最も可能性のある能力。



「これが、九条 舞。世界の闇を焼き払うとまで言われた導師。私達の仲間の力です」







「くっ、それなら」


理由は分からないが、今は燃えてる物は彼女に効かないということだろう。そう思い、大樹に宿した舞の魔力を解放しようとするが


「無駄よ。その樹はもう私の支配下。全ての炎は、私の前に跪く」


燃え盛る大樹。それが自身に矛先を向けられ


「...私の、敗けですね」


今から新しい樹を作っても押しきられると、そう理解したから。

悔しさを呑み込み、自身の敗北を認めた。



が、


「だから?」

「...えっ」


導師は止まらない。

燃え盛る大樹を背に歩く舞は本物より魔王してる。


「悪いわね、私誓ったの。貴女は燃やす」

「ひっ」


思わず後退りする玄樹だが、壁のように立ち塞がる炎に遮られる。

そして、




「歯ぁ食いしばれっ!」



ドガンッッッ!!!



「っ!?!?!?」


悲鳴すら上げられず額を抑え蹲る玄樹。

おおよそデコピン(・・・・)とは考えられない音がなったが、


玄樹のヤツ、生きてるか?


あれは指先に魔力を籠め、指先を発射と着弾の二回爆発させる舞お得意の技。

玄樹の顔が消し飛んでいないから、本気ではないらしい。


あれ、全力だと地面が割れるからな...


デコピンで地割れとか地球も予想外。







「言ったでしょ?手加減はしてあげるって」

「...聞いてないですよ~」

痛みから抜け出したのか、玄樹が立ち上がる。


「咄嗟に防御に回した盾ごとぶち抜くとか、ホント野蛮ですね~」

「歯ぁ食いしばれっ!!」

「ごめんなさい」


トラウマ増えたな、あれは。


「...まぁ、さっきので許してあげる」

「青崎さんをバカにしたことですか?」

「っ!?はぁ?違いますぅ~。ゴリラの件ですぅ~」

「分かりやすいですね。そんなに好きなんです?」

「~~っ!」


先程の魔王と同じとは思えない、乙女みたいな顔。

そのギャップに堪えられず、吹き出してしまう。


「な、なに笑ってんのよ!?」

「いぇ、なにも。ただ、そんなに好きなら告白すればいいんじゃないですか~?」


だからこの台詞も、そんな可愛い乙女をからかうつもりで言ったのだが、


「...」


思っていた反応が返ってこず、今更ながらに地雷を踏んだことに気づく。


ヤバイ、私、死ぬかもです?


「...したわよ、告白。そんで、振られたの」

「あ、あ~と、ですね」


しかし、舞はデコピンするでなく、燃やすでもなく、哀しみを滲ませながらそう言う。

本気で焦り始めた玄樹はどうすることもできずにワタワタしていた。



そこに、


「おーい。玄樹ー生きてるかー」


ご本人登場っ!?


笑顔でこちらに歩いてくる青崎。後ろには他のメンバーもいることから、自分が心配で来てくれたのだろう。しかし、その心配がなによりも自分を追い詰めている。


「そ、そ~です。舞ちゃんは美人なんですし、新しい恋がありますよ~。それに、あんな変態っ!?」

「は?今なんつった?」


墓穴ったー!?


どれだけ好きなんですか、この人。

先程よりも怒気を含ませる舞にどう接していいか分からない。

そこに、バカが登場する。



「いや~良かった、ちゃんと首引っ付いてるな」

「流石にそこまでしないわよ」


あ、あれ?

しかし、振られた女と振った男との会話は思えない空気に思わず首を傾げる。


そう言えば、昨日も普通に会話してような


「気にしないで下さい。舞達の関係はよく分からないんですよ。それより、痛みは引きました?」

「ありがとうございます~」

舞としては手加減したつもりだろうが、受けた本人としては尋常じゃない衝撃だった。それなりの痛みを感じていたのだが、いつの間にか治療してくれたらしい。


「それより、玄樹さんの力も凄かったですね」

「それを舞さんのお仲間に言われても、嫌味にしか聞こえませんけどね~」


それなりに自分の力には自信があったのだが、今や粉々だ。


「負けたことなら気にしなくていいわよ?なにせ私達は勇者だからね」

「そう、でしたね」


強気に笑う舞が、そう答える。

普段なら理解できないだろうが、今はなぜかひどく納得した。


「ねぇ、舞さん」

「なによって...貴女、名前を?」

「今更ですか~?これから仲間になるんですもの。いつまでもゴリラじゃ、駄目でしょう。それとも、案外気に入ってたりします?ゴリラ呼ばわり」

「え、そうだったの?それなら言ってくれれば良かったのに。な、ゴリラっ!」

「そんな訳ないでしょう?」


なかったことの用に燃やされる青崎をみて、本当に彼が好きなのか怪しくなる。


「ま、好きなように呼びなさい。私もそうするから」

「あれ、舞ちゃん照れてる?顔赤いよ?」

「はぁ~?照れてません~。これは自前の赤みです~」


けど、彼女が彼を好きなのは本当だろう。あんな顔してるんですし。

それより、

「これだけ可愛いのに、なんで振られたんでしょ~?」


同姓から見ても彼女はとても綺麗だ。

こんな彼女に告白されて、断る男など...いや?


「もしかして...」

そう言えば、カリンちゃんの部屋にそういう本があった気が。

あの本には確か、男の人同士で恋愛を...?


ちらりと見る。

そこには、仲良く話す青崎と皇の二人。

そして、それをニコニコ見守るカリンの姿を見て。


「あぁ~そういうことですか~」









「ん?今とてつもなく不愉快なキャラ設定を植え付けられた気が...?」

「奇遇だね。僕も寒気がしたところだ」


2人して嫌な予感。これは博士が何かしてきたか?


念のために紋章の力で外から遮断していたのだが、相手は未だ謎に包まれる女。気を引き締め、紋章の力を強化する。そこに、



「じゃ、次は僕だね。東宮さん、相手してくれるかい?」

「正直、九条さんの実力を見て十分納得したのですけど。まだ戦います?」

「駄目よ、カリン。貴女が戦わないと私がコイツと戦えないじゃない」


...嫌な予感はコイツのせいかもしれない。



「でも、青崎君も九条さんと同程度の実力ですよ?そうだとすれば、私達に」

「勝てる勝てないじゃないのよ、カリン。私は勝たなくちゃいけない、絶対に」

「レイランちゃん...」

「赤神君...」



東宮と龍道寺さんの顔をみるに、コイツもコイツでいろいろあるんだろう。

正直、予想できるっちゃできるんだけど。


「...そんな覚悟で、俺に勝つだと?」


聞こえない用に呟くが、近くにいた舞には聞こえてたらしい。


「どっかの誰かに似てるわよね?」

「自分の事だろ?それより、次は優人だ。早く戻ろうぜ」

「...そうね」

殴りたい、この笑顔。




優人と東宮をその場に残し、俺達は貴賓席へと戻る。

考えるのは優人の事ではなく、赤神のこと。


アイツが俺の事を嫌うのはただ、負けず嫌いなだけかと思っていたが、


「同族嫌悪かよ...」




『俺は負けない、負けられないんだよ!』

『舐めるな、クソガキ。そんな覚悟で俺に勝てるか』




俺を真っ向から叩きのめしてくれた騎士団長。

赤神と俺の違いは、その"間違った覚悟"を正してくれる人が居るか居ないかだけだ。

俺に、あの誇り高き騎士団長と同じことができるとは思わないけれど。



「やれるだけ、やってみるよ...団長」



今なお遠い先人の背中に、そう呟いた。

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