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「王子…?」
押し倒されたことに内心慌てながらも、努めて冷静に王子を見つめ返す。カイ王子は何も話さない。肩を押さえつけられているため、動くことが出来ない。
「ひゃっ…」
するりと背中とベットの間に手が入れられ、エプロンを外される。ここまでくると、私が今からされる行為に予想が付いてしまった。
この予想は外れることになるのだが、このときは諦めがついてしまったために王子の予想外の行動を想像することは出来なかった。
靴が脱がされる。
そこで王子の手が止まった。
「寝る」
「は?」
随分と間抜けな声が出た。立場も忘れて王子を見ようとするが、それは叶わない。
ベットに潜り込んだ王子は、そのまま私の腰を抱きしめて動かなくなった。
「う、動けない…」
何とか王子の腕の中から抜けようとするが、失敗に終わる。両手が空いているというのに、全く歯が立たない。
足をベットから降ろそうと動かすと、見えないからはっきりとは分からないけれど、王子の足の間に私の足が入れられて押さえ込まれてしまったらしい。
「…っ」
腰をそっと撫でられる。
たまらず私は現実逃避をしたのであった。
そして、今に至る。
太陽の姿はなく、三日月が空で輝いている。部屋は静まりかえっていて、自分の呼吸の音すら煩く感じてしまうほどだ。
意識をカイ王子に戻す。
押し付けられた体が、規則的に動いているあたり王子はまだ寝ているようだ。
好奇心から、ベットの上に広がった金色の髪に触れてみる。
肩にかからない長さで切り揃えられた髪はクセがなく、軟らかな感触だった。長兄とも、次兄とも違う髪質。撫で続けていると、王子はくすぐったそうに顔を動かした。グリグリと頭がさらにお腹に押し付けられてしまう。
子供のような動作に自然に頬が緩んだ。
「髪を撫でるのはそんなに楽しいか?」
「王子?!お、起きていらっしゃったのですか?」
お腹から少し頭が離れたと思うと、カイ王子の感情の読めない声が、耳に入ってくる。
「いや、今起きたところだ」
そう言って、王子は起き上がった。片方の腕で私を抱きしめたままで、だ。
いや、あの。離して欲しいんですが…。
そんな私の思いなど微塵も感じ取っていないのか、それともただ無視されているだけなのか、王子はベット横にあった椅子に座りこむと私を膝の上に乗せた。
乗せた。
…………は?
膝の上に乗せた…?
「アイリ・ハルスカイネ」
「……」
膝の上に乗せたってなにそれどんな羞恥プレイなのおかしいどうしてこうなったやっぱりエイナリ様のせいかそうかそうだなあの野郎ハイル兄様の友人だけあって頭良いくせに使いどころが悪いのねいや待て冷静になるんだ私エイナリ様はともかく王子に一番原因が…
「アイリ・ハルスカイネ」
「はいぃいっ!」
怒りを含んだ、威厳のある声に私は驚いて変な声を出してしまった。話を聞く態勢を取ると、(膝の上に乗せられたままだが)王子は口を開いた。
「お前、今日から俺の抱き枕な」
「え?」
あらすじまでのお話、書けました。
ここまではもともと頭に流れがあったのてスムーズに書けていましたが、これ以降、更新に数日かかると思います。
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