たえこママと、CIO テレコちゃんの更なる大活躍
(舞台説明)
ここはメタバース空間にある、とあるバー、店を切り盛りするのは、雇われママのたえこママであった。
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ランチ営業中の
『The Wallet』
テレコちゃんより
「ハロー、サマンサ。あなたは、自分がスマートだと思っている。
ワシントンの高いビルから見下ろす世界は、さぞかし法秩序に守られているように見えるんだろう。
だけど、君が捨て去った、あの安物のスコッチの匂いが染み付いた白山商店街のバーの床。そこが君の墓場になる」
テレコちゃんはフードを深く被り、キーボードを叩く。画面のブルーライトが、彼女の感情を失った瞳に反射していた。
サマンサ・ビンガムは完璧なシナリオを書いたつもりだった。
Signalアプリの脆弱性を突き、たえこママのスマホのIPを偽装して合衆国政府のパンダデータベースをハッキング。
用が済めば、人道派の看板を掲げてマスコミに自分を売り込み、罪のすべてを日本の老婆に押し付ける。完璧なリーガル・サスペンスだ。
だけど、これは法律のゲームじゃない。パケットのゲームだ。
「世界は1と0でできている。そして、嘘つきは必ず、ログに余計な『1』を残す」
テレコちゃんの接続は、
日本国内のプロキシを遥かに超えていた。彼女のパケットは、白山商店街の錆びついたアーケードを突き抜け、イーロン・マスクが打ち上げたスターリンクの衛星軌道へと跳躍する。高度550キロメートル。そこから地球を見下ろすレーザー通信の網が、暗号化されたTelegramの分散ノードと同期する。
サマンサが偽造したSignalのログ。タイムスタンプは「2026-割愛 Z」。
だが、テレコちゃんがスターリンク経由で逆探知した、同時刻のTelegramのMTProtoプロトコルのパケットの底には、別の真実が沈んでいた。
「見つけた」
サマンサのオフィスにある秘密端末のMACアドレス。そして、偽装ゲートウェイを踏み台にした瞬間の、暗号化フィンガープリント。
サマンサがどれだけ涙を流して陪審員を騙そうとも、宇宙を巡る衛星のログは嘘をつかない。
ワシントンの連邦地裁。検事が鬼の首を獲ったようにたえこママを糾弾したその瞬間、テレコちゃんの指がエンターキーを静かに、力強く押し下げた。
『コマンド実行:割愛 court.py』
スターリンクの超高速通信が、大気圏を突き抜けてワシントンの法廷のモニターをジャックする。
画面に映し出されたのは、サマンサ・ビンガムの法律事務所から発信された、ハッキングの生々しい足跡だった。




