たえこママと、白山商店街のデジタルトランスフォーメーション(DX)
(舞台説明)
ここはメタバース空間にある、とあるバー、店を切り盛りするのは、雇われママのたえこママであった。
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ランチ営業中の
『The Wallet』
第一章:推し活の果てに
サマンサ・ビンガムがシカゴの超高層ビルで、秘匿性アプリ『Signal』の青い盾を手に世界の司法を裏からハッキングしていた頃。
メタバース空間、白山商店街の最果てにある居ぬきバー『The Wallet』のカウンターでは、全く別のデジタルトランスフォーメーション(DX)の嵐が吹き荒れようとしていた。
割烹着姿のたえこママは、ここ数ヶ月、ある「推し活」に狂っていた。
パンダのヤーヤー救出の際、世界中へのテキスト実況を裏で支えてくれたロシア生まれの爆速メッセージアプリ――「Telegram」の擬人化アバター、テレコちゃんである。
「見ておくれよタイチ、このテレコちゃんの限定デジタルステッカー。可愛いじゃないかい」
ママは仕込みの合間にスマホをタップし、Telegramのパブリックチャンネルに投げ銭をジャブジャブと注ぎ込んでいた。
そんなママのガチすぎる推し活の念が、メタバースのパケットを歪めたのだろうか。
ヤーヤー無事帰国の祝勝会で、バー『The Wallet』の重いドアを開けて、青いスタジャンを着たポニーテールの少女がフラリと店に入ってきた。
「ふぅ……サマンサの奴、お兄ちゃん(Signal)のことばっかり最優先にしてさ。アタシの暗号化チャンネル(Telegram)のほうが、何百万人も同時に集められてお祭り騒ぎできるから絶対に楽しいのに! ……あ、ママ、とりあえず生ビールとトマトおでん頂戴!」
そこにいたのは、本物のテレコちゃんだった。
第二章:酒の勢いと最高情報責任者(CIO)
「まあ、テレコちゃんじゃないかい! 本物かい!?」
たえこママのテンションは最高潮に達した。銀聯カード姐さんとUnionペイくんも「ホンモノのテレグラムが白山に来たアル!」と大騒ぎを始める。
ママは、特製トマトおでんの鍋から一番出汁の染みた大根と玉子を皿に盛り、キンキンに冷えたビールジョッキ、さらにはオロナミンCサワーを次々とテレコちゃんの前に並べた。
「アタシの暗号プロトコル、舐めないでよね! サーバーがドバイにあろうがどこにあろうが、世界中の自由な言論はアタシが守るんだから!」
テレコちゃんは、おでんを頬張りながらオロナミンCサワーを豪快に煽った。酒に滅っぽう強いはずのアプリの神格化アバターも、たえこママの人情が注ぎ込む「酒の勢い」には勝てなかった。
夜が更ける頃には、テレコちゃんは完全に泥酔し、カウンターでろれつの回らない声を上げていた。
「白山商店街、サイコー……。でもさ、八百屋も魚屋も、いまだにガラケーと紙の台帳って、DXが遅れすぎでしょ……。アタシが……アタシが全部ハックしてあげるわよぉ……」
「待ってました!」
たえこママは、すかさずカウンターの裏から、そば屋の居ぬき時代から残っていた古い契約書の裏紙を引っ張り出し、マジックで【白山商店街・最高情報責任者(CIO)辞令】と書き殴った。
「じゃあテレコちゃん、ここにサインしておくれ。うちの商店街のITを、あんたのインテリジェンスで全部ひっくり返して、サマンサの鼻を明かしてやるんだよ!」
「いーよー! アタシがCIOになって、白山を世界一のサイバー要塞にしてあげるー!」
テレコちゃんはゲラゲラ笑いながら、マジックを握って辞令に大きく「テレコ」とサインした。
翌朝。
激しい二日酔いと共に目を覚ましたテレコちゃんは、自分のアバターの肩書きに、公式な【白山商店街・最高情報責任者(CIO)】のデジタルバッジが、システムレベルでガチガチにロックされて表示されているのを見て、真っ青になった。
「ちょっと待って……アタシ、何にサインしちゃったの!?」
第三章:パウロ君のサイバーインテリジェンス
白山商店街がテレコちゃんの就任によって「ちゃんぽんDX」へと舵を切ったその瞬間、バー『The Wallet』の水槽の中で、一頭のタコが激しく触手を悶えさせていた。
伝説の予言タコ、パウロ君である。
メタバース白山の水に浸かった彼の8本の触手は、ただの吸盤ではない。
それは、大西洋と太平洋の海底に張り巡らされた「光海底ケーブル」の微弱なデータトラフィックの変動を、物理的にダイレクト感知する、生体量子センサーだった。
パウロ君は気が気じゃなかった。
彼の触手の先端が、シカゴのサマンサ・ビンガムの周囲で渦巻く『Signal』の鉄壁の暗号パケットと、白山商店街に居座ることになった『Telegram』の膨大な通信ログが、世界規模の「サイバーインテリジェンス・アクション」の巨大なトリガー(引き金)を引いたことを感知したからだ。
パウロ君は水槽のガラス面に、吸盤を使って文字をペタペタと描き始めた。
【C-H-I-C-A-G-O V-S H-A-K-U-S-A-N】
(シカゴ 対 白山)
そして、その下に不吉な予言のマークを刻む。サマンサが世界を支配するために動かそうとしている巨大なサイバー兵器の足音が、パウロ君の触手を通じてリアルタイムで伝わってきていた。
第四章:無敵のDXが幕を開ける
「おい、テレコCIO! 早速だけど、魚屋のじいさんのガラケーを、あんたのシステムでドローン配送の管制塔にしておくれ!」
たえこママが割烹着の紐をキリッと締め直し、新任の最高情報責任者にゲキを飛ばす。
「もう、ヤケクソよ! アタシを酒の勢いでハメたこと、後悔させてあげるんだから!」
テレコちゃんは二日酔いの頭を抱えながらも、ノートPCを開き、商店街の全アナログ端末をTelegramのAPIで強制的に同期させ始めた。
シカゴの超高層ビルで、Signalの盾に守られて孤独に微笑むサマンサ・ビンガム。
対するは、酒の勢いでCIOにされた天才アプリ・テレコちゃんと、海底の危機を予言するタコのパウロ君、そして割烹着のたえこママ率いる白山商店街。
世界で唯一の「サイバーインテリジェンス・アクション・DXコメディ」が、いま爆音と共に幕を開けた。




