傘松
金上盛備が陣を構えたのは栃尾城外にある傘松。ここで……。
「千人溜りにあれだけの兵がいる。他の丸にもあれだけの旗があるとなると攻略は厄介……。」
「城主館はどうなっている?」
「無人であります。」
「長期戦に持ち込むのであれば、ここを拠点に……。」
「敵が棄てている場所だぞ。あそこに居るとわかったら、何をしてくるかわからぬ。」
「ただあそこから登る事はできるはず?」
「確認はできていませんが、直接二の丸に行けるかもしれません。」
「回り込み……。」
「しかしあの旗の数を考えますと……。」
「偽物かも知れぬぞ?」
「もし偽物でありましたら……。」
何処かに隙を作るものでしょう?
「でも満遍なくの方が怪しくないか?」
「確かにそうでありますね……。」
「一度調べてみる価値はあると考えますが?」
と城攻めの方針を話し合っていたその時。
戻って保田。
出浦盛清「傘松でありますか?」
直江兼続「はい。恐らく金上はここ傘松に陣を構えます。」
出浦盛清「何故そう言い切れるのでありますか?」
直江兼続「それは……。」
軍議に没頭していた金上陣目掛け、出浦盛清の一隊が突撃。陣内は大混乱。そこに……。
「金上様。城からも!」
栃尾城内から藤田信吉が出撃。
金上盛備「挟み撃ちとなってはかなわぬ!」
と退却を指示。しかし混乱に陥った金上勢は統一した動きを取る事ができなかった上、近くを流れる刈谷田川が増水。金上盛備は窮地を脱する事に成功するも、少なくない損害を出しての撤退を余儀なくされたのでありました。
城主館。
藤田信吉「出浦様。ありがとうございました。」
出浦盛清「全て直江様の指示通りに動いただけであります。」
藤田信吉「しかし直江様は何故本陣の場所まで?」
出浦盛清「ここ栃尾城は……。」
上杉謙信が初陣を飾った場所。
出浦盛清「ここを守っていた謙信公は、戦う前に城の全てを調べられたとの事。そこで
『もし栃尾でいくさとなった時、敵が陣取るのは傘松。』
と特定。見事に的中。予め配していた伏兵で以て勝利に結びつけられたとの事であります。以来いくさがなかった事。加えて金上盛備はこれを知りません故。此度もとの事であります。」
藤田信吉「もし違う場所でありましたら?」
出浦盛清「その時は臨機応変と考えていました。どちらにせよ……。」
軍議を設ける時間が発生するのが前提でありましたので。
藤田信吉「仮に……。」
力攻めで奪われそうになった場合は?
出浦盛清「冷たいかもしれませんが……。」
『無理するな。』であります。




