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チート売りの少女/女神は最近の転生者が「普通すぎるチート」に飽きていると嘆き、斬新なアイデアを求めて私のところにやってくる!  作者: 弌黑流人


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81/81

【Cheat Ability No.81】虚像の聖域・囮の福音(ダミー・ゴスペル)

「……セレーナの居場所を、あんな狂信者に嗅ぎ回られるなんて。最悪のモーニングコールね」


フェアカさんは、漆黒の羽をゴミ箱へ放り込むと、帳簿の隅に複雑な魔法陣を書き込みました。銀のペンダントの中にいるセレーナと、その持ち主である少女・日和。彼女たちの放つ清廉な魔力は、エルシィのような鋭敏な「鼻」を持つ者には、暗闇の灯火も同然です。


「隠すのが無理なら、もっと目立つ『偽物』を立てればいいのよ。……ちょうどいい素材が転がっているし」


フェアカさんの冷ややかな視線の先には、先ほどの騒動で髪を振り乱し、「私はプリンの妖精……じゃなかった、何だっけ?」と自分の改竄した記憶の泥沼で溺れているルミナリエ様がいました。


「ねえ、ルミナリエ様。今なら、あなたのそのバラバラになった尊厳を、一瞬で『至高の存在』に書き換える特別なチートを貸してあげてもいいわよ?」


「えっ!? 本当!? さすがフェアカ、話がわかるじゃない!」


食いつきは上々です。フェアカさんは、棚の奥から虹色に明滅する怪しげな香炉を取り出しました。


「これは『虚像の聖域・囮の福音』。これを使えば、あなたの周囲一帯に『伝説の聖女』級の神聖な波動を垂れ流すことができるわ。誰もがあなたを崇め、ひれ伏し、あらゆる災厄はあなたという『光』に吸い寄せられる。……神殿で注目の的になりたいあなたには、ぴったりでしょう?」


「最高じゃない! 私、今日から聖女ルミナリエとしてデビューするわ!」


ルミナリエ様は、副作用など一文字も聞かぬまま、香炉をひったくって神殿の最上階へと飛んでいきました。直後、神殿からは空を割るような黄金の光柱が立ち昇り、セレーナのものと酷似した、けれど中身の伴わない「空虚な神気」が世界中に撒き散らされます。


「……よし、これでエルシィの意識はあのバカに釘付けね。本物のセレーナの微かな気配なんて、あの騒がしい黄金の光にかき消されて、誰にも見つけられないわ」


フェアカさんは、遠くで「私が聖女よー!」とはしゃぎ回るルミナリエ様の声を聞き流しながら、ワゴンの接客用カウンターにある小窓を静かに閉めました。


「ただし、代償としてあなたの『プライバシー』を完全に消滅させてもらったわ。その香炉が燃え尽きるまで、あなたは世界中の『聖女を求める魔物や狂信者』のターゲットとして、24時間休む暇なく追い回されることになるけれど。……まあ、あのセレーナを守るための盾になれるなんて、光栄でしょう?」


フェアカさんは、帳簿に「成約(囮代行)」の文字を、少しだけ楽しげに書き込みました。


「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。眩すぎる偽光、身代わりの聖域、それと自業自得の熱狂。……偽りの光に群がる羽虫たちを相手に、精々『聖女ごっこ』を楽しんで頂戴。当然、返品不可ですよ?」


その頃、世界の裏側で日和たちの気配を追っていたエルシィが、突如として神殿方向に現れた猛烈な「聖女の気配」に顔を顰め、進路を反転させるのが見えました。


「……ふん。単純ね」

フェアカさんは、新しい茶葉を蒸らしながら、静かな勝利の微笑を浮かべるのでした。

(了)


突然ですが、この物語はこの辺りで終わりとなります。その後のフェアカさんの日常は、日和とセレーナの冒険の無事を祈りながら、相も変わらず天界広場で癖のあるチートを売りさばいていきます。

ここまでご拝読頂き、誠に感謝申し上げます。

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