第八十話 対戦前夜のこと
2022.7.2 微々たる改稿をしました。
すっかりお店に長居をしてしまったようで、もう夕方に近い時間になった。
時間はまだ余裕があるが、この買い物量ではグラヴィティで浮かせても邪魔なだけなので、王宮へ帰ることにした。
マドリガルタにはまだ滞在するつもりだから、また街へ出かける機会はあろう。
私たちは賃走馬車に乗って王宮へ戻った。
御者には当然のように、魔法でふよふよ浮いている荷物にびっくりされる。
王宮に到着。
「ではマヤ様、お夕食の時間にまたお会いしましょうね。」
「うん、じゃあまた。」
さて、自室へ戻らないといけないが、ルナちゃんはいないし私一人で迷わないかな。
………だいぶん近いところまで進んだと思うが、やっぱり迷ってしまった。
人通りはあまり無いし、あの大臣みたいな格好のえらそーなおじいちゃんに案内してもらうわけにはいかないし…、困った。
そこへイケメン女子が通りかかる。シルビアさんだ。
「シルビアさん!」
「おや、マヤ様。お出かけだったのですか? たくさん買い物されましたね。」
「はい。でも自分の部屋がどこにあるのか迷ってしまって…」
「じゃあお連れしますよ。」
「ありがとうございます。助かります。」
私はシルビアさんの後ろを付いて歩く。
今日はいつもの執事服ではなく、上着はベストだ。
引き締まった形の良いお尻がよく見える。
僅かにラインが見えてるが、ノーマルバックかな。
こんな時にも妄想をしてしまった。いかんいかん。
「マヤ様、こちらです。」
おっと、そんなことを考えているうちに部屋の前へ着いてしまった。
道順を覚えておくべきだったのに、今度ルナちゃんに案内してもらうときには覚えないといけないな。
「それでは、今晩もまたお呼びしますので。」
「ありがとうございます。あはは…」
サリ様騒ぎで忘れていたが、滞在期間は毎日女王の相手をしなくてはならない。
嫌じゃ無いし、むしろすごく気持ち良いし、そういうことをして何か取り入ってもられるものなら利用させてもらう。
懸念するのはパティにバレないようにすることぐらいだ。
ドアを開けると、ルナちゃんがベッドに新しいシーツを取り付けている最中だった。
「あ、マヤ様おかえりなさいませ!
申し訳ございません、お帰りの時間がわからなくてお迎えにあがることが出来なくて…」
「たまたまシルビアさんに会ったから大丈夫だったよ。」
「それは良かったです。お洋服たくさん買われたんですね。
シーツを掛け直したら、新しいお洋服もハンガーに掛けておきますからね。」
「ありがとう。」
ルナちゃんは手際よくシーツをベッドに取り付けている。
職場だったホテルでもベッドメイキングでシーツを取り付けたことがあったけれど、なかなか大変だったよ。
敷き布団に当たるベッドマットを包むようにシーツを取り付けてから、掛け布団にもシーツを掛ける。
二人一組で一日に何十部屋もやったもんだ。
「マヤ様、じっと私を見てどうかなされたんですか?」
「ああいや、前に宿屋で少し仕事をしていたことがあって、そういえば私もシーツを掛けたことがあったなあって。」
「ええ? そうなんですかぁ。親近感が湧きます。うふふ」
「ルナさんはすごく綺麗に出来るんだね。」
「王宮ですからね。先輩のおばさんから厳しい指導が毎日あって、泣きそうになったことが何回もありましたよ。」
「でもそれを乗り越えて、今こうやってきちんと仕事が出来るんだ。
君はすごく頑張ったし、とても強い子だよ。」
「ありがとうございます。そんなことを言われたのは初めてです…グスン」
ルナちゃんは少し涙をし、鼻をすすった。
出来る子はちゃんと褒めてあげたい。それだけのことだ。
ちなみに「少し仕事をしていた」ではない。中途採用勤続二十年だった。
「さあ、ベッドメイキングが終わりましたので休憩なさっても大丈夫ですよ。」
「こんなに綺麗に出来ているのに、もう崩すのは勿体ないなあ。」
「気にしないで大丈夫ですよ。それともお風呂になさいますか?」
「お風呂は夕食の後で良いよ。休憩しようかな」
「じゃあお買い物の服をハンガーに掛けてから、私は一度戻りますね。
お夕食の時間になったら迎えに上がりますから。」
私は上着を脱いでから綺麗になったベッドに大の字になって寝転んだ。
あー、綺麗なシーツは気持ちが良い。
ルナちゃんは袋から服を出して、スーツバッグを広げ、ハンガーに掛けている。
「あら、下着も買われたんですね。うふふ。これはいかがしましょうか?」
「それは、そのまま袋に入れておいてくれないかな。」
「はい。それと洗濯が上がった物は机の上に置いておきましたからね。
それではまた後ほど。失礼します。」
ルナちゃんはいったん部屋を退室する。
もしエリカさんが買ってきたよくわからん男性向けランジェリーを持っていたら、うふふと笑われるどころじゃなかったぞ。
明日の王女との対戦、どうなるのか想像も付かない。
いろいろ考えていると何だか眠く…。
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「マヤ様、マヤ様。起きて下さい。マヤ様、お食事の時間です。」
「あー うーん… もうそんな時間か。」
近頃出先でよくこんな起こされ方をしているが、可愛いメイドさんに起こされるのは実に気持ちが良い。
顔を洗い、少し寝ぼけながら付いて行く。
「あっ 女王陛下です! 廊下の際に立ってお辞儀をして下さい。」
ルナちゃんが小声でそう話しかけてくると、女王陛下とシルビアさんが見えたので言われたとおり廊下のへりに寄ってお辞儀をする。
女王が通り過ぎた時にチラッと女王の顔を見たが、一瞬ニヤッとしていた。
あぁ…今晩のことだろうな。
食堂に着くと前日と同じく三人が先に席に着いていた。
豪華な食事を美味しく頂く。
叙爵だけだったらタダでこんな食事が出来たり広い部屋のふわふわベッドで寝ることは叶わなかっただろう。
前に聞いた、パティの父親であるガルシア侯爵がこの地で謀反者を捕らえたという功績と女王からの信頼故の恩恵だ。有り難い。
またルナちゃんに付いて行って部屋に戻るが、道順は何となく覚えてきた。
いくら力が強くなっても、頭はそれなりだからしっかり記憶しないとね。
そして部屋に戻る。
「マヤ様、お風呂の準備をしますので少しお待ちくださいね。」
聞きようによっては私と一緒に入りましょうとも意味が取れるが、今のところそれはないだろう。
私に対して好感は持ってくれているようだし、アレは見られちゃったけれど、さすがにこの短い滞在期間中にそこまで進展するとは思えないな。
ラミレス侯爵家のことについては例外中の例外だが。
おっと、下着の着替えは自分で用意しておこう。
やっぱりぱんつを履かせてもらうのは恥ずかしい。
「準備できましたので、どうぞお入りくださ~い!」
しばらくしてルナちゃんから声が掛かったので、脱衣所に入った。
替えの下着を持って…。
彼女はスカートを折り込んで裾を上げており、僅かに見える太股が美味しそう。
「あの… やっぱり恥ずかしいから下着は一人で履くからね。はは…」
「そうですか…。」
残念そうな顔をしているが、練習できないから残念なのか、アレが見られなくて残念なのか…、まあ前者であると思いたい。
今晩も女王の相手をしなければならないので、身体を隅々まで綺麗に洗う。
女王はどうもいろんなところにキスしたり舐めたりするのが好きみたいなので、耳の裏から足の指の間までしっかりと。
そしてゆっくり湯船に浸かる…。
「ふぅ…」
考えてみれば、王女との対戦で負けたら叙爵は取り消されて、パティとは結婚できるかも知れないが、他の女性とは結婚できなくなる。
むしろ貴族のパティと平民の私とではやっぱりつり合わなくて、お屋敷を去らなければいけないかもしれない。
そうなると付いてきてくれる女性は誰になるのだろう。
立場が近くそれほどガルシア家に深く関わっていないジュリアさんかなあ。
彼女はとても素直でいい子だし、二人で静かに暮らすのもいいな。
いや…、いらないことを考えすぎた。
明日は勝つんだ。
お風呂から上がるが、ゆっくり入りすぎて身体が火照り、結局ぱんつだけ履いて部屋に戻った。
もうルナちゃんはこれで仕事上がりなのに、待たせて悪いことをしたな…。
「ルナさんごめんよ。身体が温まっててしばらくこのままでいたいんだ。」
「じゃあこのバスローブを着ていて下さい。」
ルナちゃんは用意してくれたバスローブを後ろから掛けてくれた。
本当によく気が利く子だ。
「それではマヤ様、私はこれで失礼します。本当はもっとお世話したいのですが…」
「ああ、もう大丈夫だよ。寝るだけだから…あはは…」
ルナちゃんは部屋から退室した。
私の勘違いもあるかもしれないが、あんな子絶対惚れちゃうよ…。
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バスローブ姿のまましばらく過ごすが…、何もすることがないな。
本でも買ってくるんだった。
するとノックが鳴ったのでドアを開ける。
「マヤ様…、あ…お風呂上がりでしたか。今日は早いですが…、お願いします。」
「わかりました。すぐ服を着ますので。」
なんでまた昨日より一時間半も早いぞ。待ちきれないのか?
そして女王の部屋に入る。
昨日と同じく薄暗い部屋の中で、女王はベッドの前で立っていた。
「いらっしゃい…。今日はあなたのことばかり考えてしまって…。
もう我慢できないわ。」
女王は真っ赤なベビードールに、ひらひらが付いた赤い紐パン。
すごくエッチだ…。
私たち二人はベッドの前で立ったまま、お互いが吸うような激しいキスをする。
そして女王はしゃがみ、急ぐように私のズボンとぱんつを下ろし、女王自身が慰める。
だが私は一分も持たず終わってしまった。
「うふふ 若いっていいわね。でもまだ大丈夫よね。」
女王は口の中のものを出しながらそう言う。
骨抜きにされてしまいそうだ。
私はベッドの上で裸になって寝転び、女王は私の全身にキスをする。
そしてエリカさんやエルミラさんの時のように、四つん這いになってお尻を突き出す恥ずかしい格好をさせられ、女王は興奮しながら見つめている。
「はぁぁ なんて可愛くて綺麗なの。マヤさんのお尻はとても素敵よ。」
喜んで良いのか複雑な心境だ。
前世で、ある女性にお尻が女の子っぽいとは言われたことがあるが、それなのか?
その後は六十九の形になったり、女王の欲望のまま事を終えた。
今日は二人で寝転びながら女王の胸に抱かれている。
「マヤさん、このまま王宮に留まりませんか?
何か魔物討伐の、直属の役職を着けますよ。」
「うーん…、有り難いお話ですが、私には帰る家があって、その家がとても居心地がいいんです。」
「そうね、そうだったわね。レイナルドの家ならわかるわ。
私が悪かったわ。ごめんなさいね。」
「いえ…。今、マカレーナにいるブロイゼンの技術者を頼って、高速で移動できる乗り物を作ってもらっているんです。
初めて作るものですからいつ出来るのか分かりませんが、完成したらマカレーナからマドリガルタまで半日ぐらいで行けるようになると思います。
ただ大量の魔力を消費するので私を含めた一部の者しか動かせませんが…。
完成したらすぐお会いできるようになると思います。」
「そんな凄いことをやっているんですか? マヤさんはいったい…。
ああそうね。別の世界から来たとおっしゃってましたね。」
女王の胸に抱かれながら話をするのも、乙なものだ。
だが男妾は勘弁して欲しいのでやんわりと断った。
「移動速度についてはこの国にとって革命的ですから、国策として援助していきたい所だけれど………、私の一存では国の予算から出せないし、まだあまり騒ぎにならないほうがいいかしらね。」
「そうですね…。私の身の上、今はひっそりとやっていきたいと思っています。」
うまくいけばお金を出してもらえることと考えても良い訳か。
これには魔物討伐の実績を積まないといけない。
来て欲しくない魔物が頼りになるのも皮肉な話だ。
「明日は娘と対戦ね。娘を応援したいところだけれど、あなたが勝たなくてはね。
あの子自身には何の得にもならないことなのに、私の言うことを聞いてくれたんです。
口は悪いですが、根はいい子なので分かってあげてくださいね。」
「分かりました。彼女に恥を掻かせないようにします。」
女王の言うとおりで、彼女自身には得にならない戦いだ。
強いて言うなら、勝っても負けても女王のプライドを護るためだ。
それほど母親が好きなのだろう。
そういう相手が厄介で、欲にまみれたチンケな貴族息子だったらどんなに気楽だろうか。
私はベッドから出て、服を着た。
女王はニコニコしながら私を見つめている。
明日もなんだよな…きっと。
「あふっ あ…」
部屋から退出しようとドアノブに手を掛けようとしたら、そんな声が聞こえた。
シルビアさんの声だ。どうしたんだろうか?
ドアをゆっくり開けて廊下を出たら、シルビアさんがドア横に立っている。
顔を赤らめ、俯いていた。ズボンのベルトが少しはだけかけている。
まさかね…。
「あの、大丈夫ですか?」
「はい。何でもありません… おやすみなさいませ。」
女王の部屋は防音性が高そうだけれど、女王の声は大きいし、自分も声が出ちゃったからなあ。
あれをずっと聞かれていたかと思うと恥ずかしい。
あ! 今日もサリ様は覗いていないだろうな?