第七十話 メリーダの街へ
2026.4.23 全体的に見直し、加筆修正を行いました。
マイモナという小さな街に到着。
カントスから二十キロくらいしか進んでないが、朝の出発が少々遅かった上に魔物討伐があったので仕方が無い。
街中の通りを走らせていると市場を見つけ、頃合いも良くそこにある適当な食堂で昼食を取ることにした。
馬車を店の脇に停め、セルギウスにも残ったカボチャと人参を食わせる。
野菜の在庫が凄まじい勢いで減っていくので、ちょうど市場だから後で補充しておく。
セルギウスは一リッター十キロしか走らない自動車より燃費が悪い。
――市場の大衆食堂へ。
お昼時なので混んでいたが、四人が座れるテーブルを何とか確保することが出来た。
エプロンが似合う若いウェイトレスが勧める、チーズクリームパエリア。
「そんなの旨いに決まってるだろ!」
「ではそれにしましょ。うふふっ」
それを四人分の量で頼んで、しばらくするとそのパエリアの皿がテーブルにデンと置かれる。
「まああっ チーズの良い香りですね!」
「帰ったらマルシアさんに作ってもらわないとね」
「マヤ君、そうしてもらおう!」
「これ、チーズ多過ぎない?」
それぞれの感想を言いつつ、早速パエリアを取り分けた。
合い挽きのミートボールがたくさんあって、エリカさんが言うようにとろけるチーズがたっぷり乗っかっている。
特に食べ盛りのパティはむしゃむしゃとすごい勢いで食べている。
行儀が悪いと注意するアマリアさんもいないので、余計に美味そうだった。
だが私はサイクロプスを焼却処分している様を見て、あまり食欲が無い……
そもそも日本で一般市民をやっていたらスーパーマーケットでパックになっている肉ぐらいしか見たことが無いので、動物の解体や自分で切り捨てた魔物さえもなかなか見慣れない。
この国では人間のご遺体がそこらに転がってるわけでは無いが、動物の解体や丸焼きはまったく普通に行われているので、パティ達はそこまで抵抗が無いのだろう。
「マヤ様、お食事はもういいんですの?」
「ああ、あまり食欲が無くてね。パティがみんな食べてもいいから。私はセルギウスの人参を市場で買ってくるから」
「そうなんですの…… お気を付けて行ってらっしゃいまし」
パティは続けてパクパクと美味そうに食べていた。
あんなに食べていたらすぐに胸が成長するはずだ。
二十代を過ぎてあの勢いで食べていたら一気に太り出しそう。
だがアマリアさんも小食ではないので、案外母娘とも太る体質ではないのかも?
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市場に出かけ、人参と、少し高かったけれど洋梨みたいなものがあったので、皆やセルギウスのおやつにも買っておいた。
店員さんが珍しく猫耳族の女の子で、顔つきは微妙に違うけれどだいたいビビアナみたいな顔だから、このお店の娘のように白毛の子を見かけると「あれ?ビビアナ?」と思ってしまうことがある。
飼い主か猫好きでもなければ猫の個体の区別がつかないのと同じことだろうか。
薄手のシャツにショートパンツという姿は実に可愛らしかった。
帰ってくる頃には皆の食事が終わっていた。
皆はすでに馬車へ乗り込んでいたので、洋梨を一個だけセルギウスにあげてから出発する。
洋梨でもセルギウスはすごく喜んでいた。
今後も食べられそうな物を見つけたら買っておいてあげよう。
マイモナの街から約八十キロ北上すると、今日の目的地であるメリーダの街へ着く。
予定より遅くなったが、セルギウスの快足であれば夕方までには到着するだろう。
メリーダ区の行政中心核はラミレス侯爵がいるセレスの街であるが、区の名前と同じメリーダは商業都市として大きく発展している。
メリーダではオルティス伯爵が周辺を統括しているというパティの話だが、特別面識があるわけでもないし、お互いが気を遣うだけなので今回は面会を遠慮する。
途中にあるフランカ、アメンドラの街を通過して、二時間余りでメリーダの街の手前まで来た。
セルギウスのおかげで馬車とは思えないスピードで進んできたし、馬車の方も乗用車と変わらないくらいの乗り心地でとても快適だった。
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メリーダに到着。
ここでも検問所があるので、再び私は御者台に座って御者のふりをする。
検問官にはちょっと変な目で見られたが、ガルシア侯爵発行の通行証とラミレス侯爵の徽章を見せたら、最敬礼をされてあっさり通してくれた。
貴族様パワーはありがたいことだ。
この世界に来てパティに出会わなかったらどうなっていたんだろうねえと、時々考えてしまう。
『マヤ、雲行きが怪しいな。明日は雨かも知れない』
「雨なら止むまでここ滞在するさ。晴れたらまた呼ぶから」
『わかった』
メリーダまでたった一泊で来られたんだ。焦る必要は無い。
セルギウスが濡れて、私たちが馬車の中というのも気が引けるからね。
宿は決まっていて、以前パティ達が泊まったという五つ星の宿だ。
建物は古いが五つ星だけあって一目で豪華と分かる。
私は先に裏へ馬車だけ預けに行き、宿のランクを考えて馬車係に銀貨二枚ものチップを渡す。
馬車をセルギウスから切り離し、彼はポムッと消えた。
ここでも、この様子を見ていた宿の厩舎係の髭面おっちゃんに、奇異な目で見られる。
高いチップをあげて、世の中いろいろなものが存在するんだから騒ぐなよと、おっちゃんに念を押しておいた。
おっちゃんは素直に聞いてくれたので良かった良かった。
受付でチェックイン。
大きな街の高級宿だけあって、受付が広ければロビーもやたらと広い。
係はベテラン風で三十歳ぐらいのお姉様。
金髪お団子ヘアーでキリッとした顔立ちの美人だった。じっと眺めていたいくらい。
だが手続きは淡々と進み、やはりここでも二人部屋を二つ使うことになった。
一人部屋は元々無いらしい。日本でも観光ホテルはだいたいそうだ。
お値段は二部屋一泊朝食付きで金貨一枚と、そこそこ良い値段。
エリカさんはアレの時の声が大きいから、部屋はわざと離してもらった。
サイレンスの魔法で黙らせることも出来るが、息がちょっと苦しそうみたいだから極力使うのはやめておくつもり。
日本のホテルで働いていたときでも、会社内の身内同士で部屋を離して欲しいという要望がよくあったのを思い出したよ。上司のいびきがすごくうるさいとかね。
雨が降ってもいけないので、夕食は宿の中のレストランで取ることにした。
ここもお高いところだろうから、服装はこの革ジャンとカーゴパンツじゃダメかねえ。
エリカさんと私、パティとエルミラさんと別れてそれぞれ部屋に向かった。
部屋は三十畳くらいあって無駄に広く、クィーンサイズのベッドが二つドカンと並んでいる。
来客も可能なようにソファーとテーブルも大きくしっかりしている。
食事の前にお風呂へ入るか……
「ねぇ~ マヤくぅ~ん。せっかくこんないいお部屋なんだから、一緒にお風呂へ入りましょう~にゅふふ」
まあ、十分予想の範囲内だったな。
エリカさんも私もパサッと服を脱いで裸になった。
「ちゃんと下着も畳んでおいてよ」
「わかったわよ~ むー」
お風呂だけでも広いねえ。全部で六畳分はあるだろうか。
シャワーでお湯の掛け合いっこをしていたら私もムラムラ来てしまい、その場で連結。
解結したら二人で湯船に入って、私が後ろから抱っこする体勢で。
あぁ…… ずっと若いときも全く同じことがあったなあと思い出してしまった。
「ねぇ~ マヤ君」
「なんだい?」
「マヤくぅん……」
「どしたの?」
「私、すごく幸せ……」
「そうか……」
「ずっと一緒にいられたらいいね……」
「うん……」
普段はちょっとやかましいエリカさんだけれど、落ち着いているときは会話らしい会話でなくとも通じ合っている感じがする。
ずっと一緒かあ。何年後か、私たちはどうなってるんだろう。
しかし今晩の彼女はいつもより妙にベタベタと甘えてくる。
悪い方へ勘ぐりたくないのだが、一緒にいられなくなることがこの先起こりうるのを察してそんなことを言ったのだろうか?
――いや、つまらないことを考えるのはよそう。
私たちはお風呂から上がり、レストランへ行くための服を着る。
私は貴族ブラウスに黒いズボン、エリカさんは…… さっきと同じミニスカスーツだった。
パティとエルミラさんとは約束した時間に、ロビーにて集合。
牛肉とマッシュルームのパエリア、豚肩ロースのプランチャ(焼肉)、トマトソースのモツ煮、アヒージョ、シーザーサラダなど肉料理が目立ち、デザートはパティが大好物のプリンだった。
どれもとても美味しい。それどころかこの国の料理はすごく美味しくて自分の口に合っていたからあまり気にしてこなかったから、日本で食べていた料理を忘れていた。
おにぎり、ラーメン、お好み焼き、うどん、あんこ餅……
懐かしい日本の食べ物、また食べてみたいなぁ~
こんなことならば料理の勉強をしておくべきだった。
素材の問題があるが、うどんくらいならばこの国の物でも出来そうな気がする。
「マヤ君、私はしばらく宿のバーで飲んでいるから、どちらかとごゆっくり…… ふふ」
「あ、あぁ…… マヤ君。私は部屋で一人になってゆっくり本を読みたいから、パトリシア様とお二人で…… はは」
「いいんですの? じゃあお言葉に甘えて…… うふふっ」
二人とも気を遣ってるなあ。
パティはニコニコ顔で私の腕を組み、私とエリカさんの部屋へ向かった。
部屋に入ると、ベッドを椅子代わりにして二人で並んで座る。
エリカさんとエッチなことをしたのはお風呂だったから、ベッドは綺麗なままなので良かった…。
「私もうお腹いっぱいになっちゃって、こんなに膨れてしまいましたわ」
「あらら。私たちの子供はいつ生まれるのかな?」
「嫌ですわもう~ マヤ様ったらデリカシーがないんですから」
揶揄ってみたが怒っていない。パティはむしろ照れている。
それから片手同士で手を繋いでそれをパティの膝に置き、いろいろ語り合った。
愛し合っている者同士で手を繋ぐことはとても大事だと思っている。
滅多にしないことだが、今回は私が日本にいた時の話をたくさんした。
食べ物の話が中心になってしまったが、パティは目をキラキラさせながら聞いてくれた。
――二時間ばかりおしゃべりをしたところで……
「マヤ様、今日はゆっくりお話が出来て楽しかったですわ。マヤ様の秘密がいろいろ分かった気がします。そろそろエリカ様が帰ってらっしゃる頃ですから、これで失礼しますね。おやすみなさいませ」
「うん、おやすみ」
他の女性のことまで気配り出来るようになったんだねえと思った直後、一夫多妻制に驕り高ぶっている自分になっていることに嫌気がさした。
でも、せっかくこの世界に来たのだから私の力で誰かが幸せになってくれるのならば、そうしてあげたい。
前世は誰一人幸せにしてあげることが出来なかったのだから――
私はパティを抱き寄せ、軽くキスをした。
パティはニコッと微笑み、部屋を退出していった。
その後は上着を脱いでベッドで寝転びくつろいでいると、エリカさんが戻ってきた。
「ああもうっ! バーで飲んでても、いきなり身体目当てで声を掛けてくるいけ好かない貴族のブ男ばっかり! やっぱりマヤ君が安心するわぁ~」
「エリカさん、わかったから酒臭いよ」
何を期待してバーに行ったんだか。
エリカさんは私に抱きついてむっちゅう~とキスをしてくるが、その通り酒臭い。
酔っ払いは面倒くさいので、そのままベッドに寝転がした。
「ねぇ~マヤ君。私のこと愛してる?」
「愛してるよ」
「あーーーん! マヤ君可愛い!!」
エリカさんが私を押し倒して、腰の上に乗っかってくる。
もうどうにでもして下さいという気分でそのまま寝転がっていたら、私のズボンとぱんつをずらし、エリカさんはミニスカスーツのままぱんつだけを脱ぎ……
さっきお風呂で連結したばかりだし、服も脱がないでどれだけ溜まっているのだろう。
私が言えたことでは無いが……




