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第四十九話 ジュリアさんの仲間入り

2022.12.12 微修正を行いました。

 ガルシア家の屋敷に帰り着いたのは昼下がり。

 天気が良かったので、エリカさんがガーデンテーブルで一人本を読んでいたので、私たちはそこへ向かった。


「あら、マヤ君おかえりなさい。日帰りだと思っていたのにどうしたの?」


「グラドナのほうで黒い球体の魔物が二度現れてね。

 ちょっと手こずったんだ。」


「え!? またあいつが出たの!!? 怪我は?」


「怪我はしたけれど、ミディアムリカバリーで治ったよ。」


「それなら良かったけれど…、ほんとに気をつけてね。

 で、なあにその子は。」


 ここから問題だ。さてどう説明しようか。


「は、はズめまスて!

 わたスはズリア・カルネイロというグラドナの魔法使いデございまス!

 マヤ様のお嫁になりにこツらへ来まスた!

 どうかよろスくお願いスまス!」


「はへ!???」


 あぁぁぁぁ…言っちゃった。

 エリカさんは目が点になっている。

 ジュリアさんは、何故かグラドナにいたときより訛りがキツい。


「ちょっとマヤ君! お嫁ってどういうことよ!?」


 私はグラドナで起きた経緯(いきさつ)について、エリカさんに詳しく話した。

 ジュリアさんは緊張して縮こまっている。


「ふーん、この子もだけれど、マヤ君も思いきった決断をしたわね。

 マヤ君のフルリカバリーかぁ」


「それでジュリアさんにも魔力量測定と、マジックエクスプロレーションをかけてみてほしいんですよ。」


「わかったわ。私の部屋へ行きましょ。

 よく見たら、この子可愛いじゃない。はぁはぁはぁ…

 ジュリアちゃんだっけ? お姉さんと仲良くしましょ。ふひ」


 エリカさん気持ち悪い。ラミレス家のお風呂以来、趣味が変わってないか?

 オリビアさんの時も同じ反応だったし。


「あのぉ、マヤ様…。こちらの方は…?」

「おっと。私はちょっと名の知れた魔法使いの、エリカ・ロハスよ。

 マヤ君の恋人なの。以後お見知りおきを。ふふ」


「よ、よろしくお願いしまス…。」


---


 お腹が空いているので、厨房へ寄ってビビアナに言ったらタコスを作ってくれることになった。


「エリカも食うかニャ?」


「じゃあお願いするわ。」


 ビビアナは即行でタコスを三つ作って渡してくれた。

 せっかくなので、ビビアナにもジュリアさんを紹介した。


「おお、仲間かニャ! あてしもマヤさんと結婚するニャ。よろしくニャぁ」


「私も料理は得意なんでス! よろしくお願いしまス!」


 相変わらずビビアナは軽いが、楽でいい。

 ビビアナとは仲良くなれそうで良かった。

 廊下で給仕服姿のスサナさんとエルミラさんを見かけたので、彼女らにもジュリアさんを紹介した。


「私スサナ! よろしくね! マヤさん、また女の子が増えたね。にひひ」


「あの…、エルミラです。よろしくお願いします。

 マヤ君、また今度私と…、ううん、また後でいいよ。」


 スサナさんはともかく、エルミラさんはやや不安な表情だった。

 さっき言いかけたことから察するに、私との時間がますます減るかもしれないと思っているのだろうか。

 彼女との時間を作らないとなあ。

 そして、遠回りになってしまったがエリカさんの部屋にやってきた。


「うわぁ~ 魔法書がいっぱいなんでスね。あら、これは…。」


 ジュリアさんが、ベッドの上に脱ぎ捨ててある黒い透け透けぱんつを発見し、手に取って眺めている。

 この前のパティと同じ事になっているじゃないか!


「はわわわわわわ。こ、これが噂の透け透けぱんつ!

 わたス、初めて見まスた!」


「あらそう? じゃあ今度買い物へ連れて行って、プレゼントしてあげるわ。うひ」


「ああああ、ありがとうございまス!」


 確かに田舎じゃそういうランジェリーショップは無いから珍しいんだろうけれど、ジュリアさんはぱんつに何か思い入れがあるんだろうか。

 それより、ジュリアさんは目をキラキラさせながらぱんつに夢中で、エリカさんは彼女に夢中で、私が空気になっている。


「あぁ、すみません。わたス緊張しちゃって、訛りが出てしまってまスね。

 ちょっと意識したら普通の発音も出来るんです。」


 あ、訛りが元に戻った。

 ご家族や村の皆さんも訛っていたけれど、確かに彼女は訛ったり標準語にいろいろだ。


「じゃあ魔力量測定器で計ってみるわね。

 ジュリアちゃん、この板に手を乗せてちょうだい。」


「はい…。」


「え…。えぇ? えぇぇぇぇぇ!!!???」


「な、なんでスかね?」


「この子、38112もあるじゃない! 私の三倍以上よ! どうなってるの?」


「それって、多いんでスか…?」


「たぶん、元のあなたの魔力量の百倍以上になってるんだよ。」


「へ? えぇぇぇぇ!!???」


 やっぱりフルリカバリーの影響か。

 一気に百倍以上の魔力量になったら、身体がついていけなくて魔法のコントロールが聞きにくくなっているのかも知れない。


「次はマジックエクスプロレーションをしてみるわ。

 ジュリアちゃん、両手を出してみて。」


「こうですか?」


「ふふふ 可愛いお手々をしてるじゃない。」


 エリカさん、ヤバいな。

 このまま放っておいたら、もしかしたらジュリアちゃんを取られてしまうかも知れない。


「うーん…。さっき聞いた土水風の属性はあるわね…。

 え? これって…、闇?

 ジュリアちゃん、闇属性魔法が使えるようになってるかもしれないわ!」


 おいちょっと待てよ。

 光属性のフルリカバリーを使ってなんで闇属性が目覚めるんだ?

 ジュリアさんの変化の場合、直接フルリカバリーが干渉していないということか。

 私が無我夢中で魔力注入したものだから、そっちのほうの影響が強かったのか。

 パティやエリカさんの時もそうなのかもしれない。


「エリカさん、私がフルリカバリー使っているときの魔力そのものが干渉してしまったのかも知れないよ。」


「そう考えるしかないのかなあ。だとしたら、フルリカバリーを掛けなくても、マヤ君が直接魔力を注入した魔法使いは、何らかの大きな変化があるかもしれないね。」


「でも何が起きるか分からないから怖いよ。命を失うことも、もしかしたら…」


「今度マルセリナ様にまとめて相談してみるか…」


「あ、あの…私どうなっちゃうんですか?」


「せっかくの魔力量と闇属性だ。私と魔法の勉強をしよう! 勿論マヤ君もね。」


「わぁ、すごい! ありがとうございます!」


 そういうことで落ち着いて、私たちはビビアナに作ってもらったタコスを食べた。

 ジュリアさんはタコスを初めて食べたようで、気に入ったみたいだ。


「じゃあ私たちはジュリアちゃんの日用品を買ってくるよ。お金は私が出すから。」


「いいの? 金貨一枚くらい出すよ。」


「ジュリアちゃんのためなら安いもんよ。ふひ」


 どうも不純な動機にしか見えない。

 ジュリアさんを別の意味で守らないとなあ。


---


 エリカさんの部屋を出て玄関まで行く途中に、いつも侯爵閣下と一緒に行政官庁へ行ってるフェルナンドさんを、この時間では珍しく見かけたので、話しかけたみた。


「あれ? フェルナンドさん。閣下もお帰りに?」


「いえ、私だけ所用で早めに帰ってきたところです。それでその子は?」


「訳ありでグラドナから連れてきたジュリアさんです。」


「それは初めまして。ガルシア家執事のフェルナンドと申します。」


「は、初めまして。ジュリア・カルネイロと言います。マヤさんのお嫁になりに来ました。」


「えぇ? マヤ様、これは…。」


「あの…、そのことについて夕食の前にいろいろ報告したいので、ガルシア家の皆さん全員を応接室に呼んで頂けますでしょうか?

 勿論フェルナンドさんもご一緒に。」


「はい、かしこまりました。」


 フェルナンドさんはきょとんとした表情をしていた。

 久しぶりに登場したフェルナンドさんだが、屋敷にいるときはほとんど毎日会っている。

 ジュリアさんとエリカさんはそのまま買い物へ出かけ、私は自室に戻った。

 はぁぁ…

 グラドナへ出発してからたった一日半だというのに、いろんなことがありすぎだよ。

 疲れた…。


---


 自室のベッドで寝ていて、ぱっと目が覚める。

 一時間半ほど寝てしまったようだ。

 もう夕方になって皆が帰宅している頃だろうか。


 家族会議の前に、エルミラさんの部屋へ寄ってみた。

 また今晩マッサージをお願いしたら、表情がパアッと明るくなって快く了解してくれた。


 そして家族会議。

 ガルシア侯爵、アマリアさん、ローサさん、パティ、フェルナンドさん、エリカさん、ジュリアさん、私が応接室にいる。

 ジュリアさんはガチガチに固まっている。

 そりゃ会社で言えば、社長もいる役員会議の中に、一人ポツンと新入社員がいるようなものだからな。


 私はグラドナで起きたことを一部始終と、黒い球体の魔物の危険性、ジュリアさんの適性と身体の変調を報告した。

 ジュリアさんも緊張しながら、自己紹介した。


「み、皆様初めまスて。

 わたス、グラドナで討伐隊の魔法使いをやっていた、ジュリア・カルネイロと申しまス! 二十歳でス!

 この度、マヤ様に魔物から命を助けて頂いて、お嫁になりに来まスた。

 料理も得意でス。

 とても我が儘なお願いとは承知しておりまスが、どうか、この屋敷に置いてやってください。」


 ジュリアさんは精一杯の自己紹介を終えて、深々と頭を下げた。

 緊張してまた訛っている。


「うーん、ジュリア殿の気持ちはわかったし、それは私も良いと思う。

 マヤ殿の結婚相手が増えても、パティさえ大事にしてもらえれば私が干渉することでは無いからね。

 それで我が家での処遇は、魔法使いについては直属兵部隊に加わること。

 手が空いている時はエリカ殿に魔法を教えてもらうこと。

 それ以外は厨房の手伝いをすること。

 部屋はエルミラたちの近くに空いている所を使ってもらって、食事は彼女らと一緒にしてもらうこと。

 それでいいんじゃないかな。

 当然給金は出すから安心してくれたまえ。」


「ありがとうございます!」

 ジュリアさんはまた深々と下げたが、緊張は少しほぐれてきたようだ。

 ガルシア侯爵の問題内容把握と即決判断の力はさすがだね。


「ま、まあ…、マヤ様のお嫁さんが増えることは私も咎めませんわ。

 私のことをちゃんとかまって下さるなら。」


 パティについてが一番難問だったが、これなら何とかなりそうか。

 最初に、お嫁さんが多いのも男の甲斐性と言っておきながら、一番焼き餅焼きなのはパティだからだ。

 また明日にでもお茶会をしよう。


「ジュリアさんも田舎のご出身なのね。私も田舎のラフエル出身なの。

 同じ田舎の魔法使いで何だか親近感がありますし、可愛い子ね。

 今度私の部屋で髪の毛をセットして、化粧をしてあげるわ。」


 アマリアさんもそうだった。似たもの同士で仲良くなれそうかな。

 こうしてガルシア侯爵家の一員としてジュリアさんが加わった。


 家族会議は解散し、ジュリアさんとは分かれてそれぞれで夕食をとった。

 私はまだ平民なのにずっと貴族のガルシア家と一緒に食事をしているのは、何とも申し訳ない気持ちになる。

 最初にこの屋敷へ来たときからの流れというか、パティたちを魔物から助けたことと、パティのお気に入りになってしまった理由が大きいが、本来はエルミラさんたちと食べることになっているはずだ。

 でも(まかな)い料理は私たちの料理のついでに作るだけで使っている食材も共通のメニューが多く、内容は良いとのことだ。


 さて、パティたちは夕食前にお風呂に入ったみたいだから、私もお風呂に入ろう。

 その後はエルミラさんのマッサージが楽しみだ。むふふ

 この二日間、いろいろあり過ぎて疲れたからなあ。


---


 お風呂から上がって自室でしばらく休憩しているとノックがあって、エルミラさんがやってきた。

 前回と同じシャツとショートパンツ姿で、白くて長い脚が眩しい。

 マッサージをしてもらいながら、話をする。


「ジュリアさん、健気でいい子だね。

 グラドナでの話を聞いたよ。お母さんを守って…うぅぅ…」


 エルミラさんは涙もろい女性だった。

 エルミラさんとも仲良くやっていけそうで良かったよ。


「マヤ君、彼女の大怪我を魔法で治したそうじゃないか。

 もう大司祭様よりすごいんじゃないのかな?」


「いやあ、まだまだ知識が足りないから教えられることばっかりだよ。」


 コンコン。ノックがあった。誰だろう。


「どうぞ~」


「あ、あの~ マヤ様………はわわわわわわわ! 失礼しまスた!」


「あ! 待って! ただのマッサージだから。」


「え…、そうだったんでスか。びっくりしまスた。」


 ジュリアさんだった。

 私がうつ伏せになっていてエルミラさんが私の股の間で腰の辺りを(さす)っている体勢だったから、ソレっぽく見えたのかも知れないな。


「それで、何かありましたか?」


「いえ…。何から何までお世話になって、ありがとうございまスた!

 どうかこれからもよろしくお願いしまス!

 それだけを言いたかったので…。それでは失礼しまス!」


 ジュリアさんはお辞儀をして退出していった。


「律儀な子だね。」


「真面目で優しいところが気に入ってね。」


「私のことはどう思っているのかな?」


「エルミラさんは、純粋で、強くて、ボーイッシュだけれど女の子らしくて、それでいてお姉さんみたいで、あとは…スタイルがいいところかな?」


「ありがとう。私のことを見てくれて。」


 実はエルミラさんの一番好きなところは、知ってる女の子の中で最もいい匂いがするからだなんて絶対言えない。

 一通りマッサージが終わったところで…。


「……。マヤ君、そろそろ… いいでしょ?」


「うん。」


 私はドアの鍵を掛けた。


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