第五十話 女神の使徒マヤ?
2026.4.3 全体的に見直し、加筆修正を行いました。
自室のベッドでエルミラさんと朝を迎える。
二人とも素っ裸だ。
「おはよう、マヤ君。うふふ」
「――おはよう…… うーん……」
ボヤッと目を開ける。
エルミラさんが寝転びながら肘をついて、私の顔を眺めていた。
昨夜は今まで以上にエルミラさんと愛し合い、思い出のベッドとなった。
エルミラさんがベッドから出て、服を着始めた。
日が昇り明るくなった部屋。
エルミラさんの白く美しい身体へ、窓から差した朝日が眩しく反射する。
そんな彼女を、私はしばらく眺めていた。
「なあに、マヤ君。恥ずかしいよ」
「エルミラさんの身体が綺麗で、見とれてしまってね」
「いつも私の身体を褒めてくれてありがとう。じゃあ、また後でね」
エルミラさんは手を振りながら部屋を出た。
何だろう……
別れたわけでもないのに、愛し合った後に離れると湧き出るこの寂しさは。
いつでも会えるのに、また会いたくなってくる。
思わずベッドに染みついたエルミラさんの残り香を嗅いでしまった。
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そして何事も無かったように、スサナさんとエルミラさんとでいつもの早朝訓練。
もう一年近くこれを続けているんだなあ。
一年? そういえば彼女たちの誕生日っていつだっけ?
訓練が一息ついたときに聞いてみた。
「私は半年前だよ」
スサナさんはそう応える。エルミラさんは…
「私は…… 三ヶ月前だね。それでマヤ君どうしたの?」
「え? どうして誕生日を教えてくれなかったの?」
「この国の平民はあまり誕生日というのを気にしなくて、誕生日パーティーもしないんだ。あれは貴族のお祭りだね。その代わり、大した理由も無しにちょくちょく宴会で騒いでるよ」
そういうことか。この国の国民性だと分かる気がする。
グラドナでも肉を持って来ただけで突然野外の宴が始まったからな。
ジュリアさんの旅立ちはそれほど理由になってなかった雰囲気だ。
「そうかあ…… マヤさんがここに来てからもうすぐ一年になるんだねえ」
「スサナさん、覚えていてくれたんだ」
「あの頃のマヤさんは可愛かったのにねえ。にひひ」
スサナさんはまるで少年のように笑う。
彼女は童顔で可愛らしいけれど、去年と変わった様子が無い。
伸びしろがもう無いのだ。
「私は可愛いマヤから格好いいマヤに成長したのだよ」
「あっはっは! マヤさん言うねえ」
パティはもうすぐ卒業だし、ジュリアさんが加わった。
いずれ何らかのパーティーをやってみたい。
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朝食だ。
早速ジュリアさんが給仕服を着て準備をしていた。
厨房から持って来た半熟カステラはジュリアさんが作った物で、隣の国ポトルガのメニューらしい。
国境の村らしい食文化だね。
地球ではポルトガルのパン・デ・ローという名の食べ物で、長崎へ行ったお土産にその半熟カステラを買って食べた思い出がある。
トロリとした味わいで勿論美味しかった。
ジュリアさんが作った半熟カステラも美味しい。
朝から食べても軽くて、ガルシア家のみんなにも好評だった。
ガルシア家で彼女の点数が上がり、連れてきた私も嬉しい。
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今日はパティが休みである。
お昼は二人で大聖堂のマルセリナ様の所へ行ってみることにした。
エリカさんとジュリアさんは、午前中から二人でまた買い物へ行くという。
昨日買い物へ出かけた分は、取り急ぎで最低限の物ばかりだったらしい。
エリカさんは張り切ってジュリアさんを連れて行った。
不安でしかない。
私は前もって魔力量測定器をエリカさんから借りていて、大聖堂へ持って行く。
午前中はパティの部屋でお茶会。
今までの出来事などいろんな話をして、彼女は終始ニコニコでとても機嫌が良い。
それからマルセリナ様のお昼休みに合わせるためにお昼ご飯を早めに食べて、パティと私は大聖堂へ行く。
彼女も張り切っているようだ。
久しぶりのように見えるが、これでも週に一度くらいはマルセリナ様のお昼休みに私だけ顔を出していたんだよ。
だが今回は間が空いてひと月ぶりになってしまった。
信徒でない者が教会へ頻繁に出入りするのも不自然なので、名目上は信徒として時々パティと一緒にミサへも参加していた。
マルセリナ様にも、私が女神サリ様によって転生したことを話した方がいいだろうか。
信じてくれてなくて、「神への冒涜です!」なんて言われたら困る。
――で、マルセリナ様の書斎にて。
「マルセリナ様、お久しぶりです」
「本当に久しぶりですね。寂しかったですわ」
「済みません。デモンズゲートを塞ぎにあちこち飛び回ってました」
「ホントです。忙しくてマヤ様は私もなかなかかまって下さらなかったんですよ」
パティ、庇ってるのかチクリと言ってるのかどっちなんだ。
私は早速これまでの経緯と、私がフルリカバリーを掛けた三人が魔力量の極端な増加があったこと、ジュリアさんが闇属性に目覚めたことをマルセリナ様に話した。
「それで私がフルリカバリーを掛けたらパティも風属性に目覚めたんですが、フルリカバリーはそういうこともある魔法なんでしょうか?」
「私がフルリカバリーを掛けた経験は実際少ないんです。あくまで大きな病気や怪我を治すだけのもので、何か他のものが付与されることはありません」
ということは、フルリカバリーを掛けただけでは何も起こらないのか。
私の魔力の影響なのか。
「例えばですよ。私が怪我をしていないマルセリナ様に、今フルリカバリーを掛けたらどういうことになるんでしょう?」
「身体が元気な状態で魔力消費量が大きいフルリカバリーを掛けることは常識的にしないので分かりかねます。ミディアムリカバリーの場合、元気な人に掛けたら疲れが取れて幾分元気が出るぐらいの効果しかないという話は聞いたことあります。そうですね…… マヤ様なら魔力量が多いですから、実験で私にフルリカバリーを掛けてみられますか?」
「マルセリナ様。何が起きるかわかりませんから、それは私にやらせてください!」
パティは心配なのか、マルセリナ様の代わりにやろうとする。
だがマルセリナ様はパティの言葉を聞こうとしない。
「いいえ。立場的にも私自身が確かめたいことですから、私に掛けて下さい。あなたの身体も大事でしょう?年上の私がやらずに何としましょう」
「わかりました……」
マルセリナ様はスッと私に近づき、抱きついてきた。
手を繋ぐだけかと思ったのに、まさかのことで私はすごく緊張している。
「――はわわわっ」
マルセリナ様のまさかの行動で、パティはびっくり仰天。
私は彼女の腰を抱いて、ゆっくり魔力の出力を上げてフルリカバリーを掛けた。
「はうっ マヤ様の魔力が流れ込んで来るのがわかります…… ああっ 身体が熱い! あぁぁっ はぁっ あぁぁぁぁ!!」
ひいいいっ!?
聖女たるマルセリナ様が耳元で色っぽい声を出すから、私の心臓はドキドキぞわぞわっ
「マルセリナ様!!」
パティが叫ぶと私は我に返る。
危険を感じ、すぐフルリカバリーを止めて椅子に座らせた。
「はぁ はぁ はぁ…… 大丈夫です…… マヤ様の魔力はすごいですね……」
「マルセリナ様、何か身体の変化は感じられますか?」
「そうですね…… お待ちください。少し落ち着いてからお話しします」
うーむ、やっぱり健康体にフルリカバリーを使うのは良くないのか。
マルセリナ様には悪いことしたな……
五分もすると落ち着いてきた様子なので、マルセリナ様は口を開いた。
「それでは…… コホン。体感的にはずいぶん活性化したと言いますか、力がみなぎっています。まるで若返ったように……あら、私ったらオバさんみたいですね。身体は痛くないですよ」
あそこでフルリカバリーを止めたら身体に害は無いということか。
魔力量はどうかな。
「ではマルセリナ様。これはエリカさんから借りてきたこの魔力量測定器です。この台の上に手を置いてもらえますか?」
「まあ、エリカ様はそんな物をお持ちでしたのね。それでは……」
――ピピピピッ
「――20372。ええっ!?」
「それはどういう数字なのでしょう?」
「フルリカバリーの使用魔力量がおよそ1000なんです。マルセリナ様はフルリカバリーを使うのが一回で精一杯と前に伺いましたから、二十倍くらい魔力容量が増えたことになります」
「え? そんなことって……??」
マルセリナ様は今何が起きているのが受け入れられないみたいだ。
パティが私に話しかける。
「マヤ様! 私にもう一度フルリカバリーを掛けてもらえますか?」
「危険かも知れないから、気が進まないよ」
「それでも!マヤ様が大怪我をされたら、誰がフルリカバリーを掛けるんですか! 私はマヤ様を信じています。だから……」
「うーん…… わかった。気をつけてやってみる」
パティにはもう一度魔力量測定器で計ってもらった。
3352と出た。
ムーダーエイプと戦った後に私からの光を浴びて魔力量が増えた彼女。
それから計った数値が3345だから、微増している。
通常の成長だとこんなものなのか。
「じゃあ、パティ。フルリカバリーを掛けるよ」
「お願いします」
私はパティを抱き寄せ、マルセリナ様の時より慎重にゆっくり魔力の出力を上げた。
彼女の身の安全に集中するため、身体の感触を楽しんでいる余裕は無い。
「あっ くぅ…… 大丈夫です。もう少し続けて下さい」
「わかった」
「だんだん熱くなっていってます……」
「もう止めた方がいいかい?」
「まだです。――あぁ! 熱い!熱い!」
私はフルリカバリーの出力を急停止した。
やはり健康体にはリスクがあるから、むやみにすることではないようだ。
「パティ、痛みは無いか!!?」
「はぁ はぁ 大丈夫です。痛みはありません……」
パティが落ち着いた後、再び魔力量測定器で計ってみた。
「10091だね。すごいよ! 三倍くらい増えた!」
「マヤ様! ありがとうございます!
これでマヤ様の足手まといにならず、たくさんお助け出来ます!」
「パティは元から足手まといじゃないよ」
「うふふ。」
パティは満面の笑みを浮かべて喜んでいた。
今度はマルセリナ様が深刻そうな表情で話しかけてくる。
「あの…… マヤ様。あなたの魔力が注ぎ込まれて、体内の魔力から綺麗な女性が話しかけてくるんです。『マヤさんを助けなさい』と……」
「え? それはどんな姿でしたか?」
「白いワンピースを着ていて、黒毛に赤紫の色が付いた髪の若い女性です」
「サリ様だ!」
「「え? えぇぇぇぇ!?」」
マルセリナ様とパティが同時に叫ぶ。
こうなった以上、マルセリナ様にも私の素性を話さなければいけないか。
パティやエリカさんたちには前に話したが、私は思い切って、別の世界で死んで女神サリ様と出会い、この世界に降りてきたことを話した。
「マヤ様は、女神サリ様の使いでいらっしゃいますか?」
「そう大層な者ではありませんが…… イスパルへ来る前に、天界で女神サリ様に魔物の討伐と魔物が発生する原因を見つけてそれを正して欲しいとお願いされました」
「まさか、そんなことが…… 私にもう一度、マジックエクスプロレーションを掛けさせてもらえますか? 前に感じたことがもっとはっきりすれば、確信出来そうです」
「わかりました」
私は両手を差し出す。
マルセリナ様は白磁のような手で私の手を握る。
「――とても広大な、魔力の海を感じます。以前エクスプロレーションをした時と比べものにならないくらい大きくなっています」
――デデデデーンッ
「あれは…… マヤ様の後ろに見える女性は…… サッサッ…… サリ様!?」
マルセリナ様はびっくりして手を離し、バランスを崩して尻餅をついてしまった。
私の後ろにサリ様が見えるのか?
キョロキョロ―― 誰もいない。
彼女にしか見えない幻なのか……
マルセリナ様は大開脚で座り込んだままだが――
残念。裾が長い司祭服では、ぱんつが見えそうにない。
いやいや、不敬なことは考えるのを止めよう。
「あ…… あ…… まさしくマヤ様は女神サリ様の……」
マルセリナ様は両膝をついて手を組んで神様を拝む体勢になる。
ほらほらっ 頭を下げても私は神様じゃないですよー
「あぁ、マヤ様は女神サリ様の使いです。私は一生、この身をあなたに捧げます。どうかマヤ様にお仕えさせて下さい」
「あああの…… どうか頭を上げて下さい。私は神の使いのような偉そうな者ではないです」
「――」
「そう…… 私は以前、宿屋の雇われ店主に過ぎませんでした。どうか今までのように接して頂けますか?」
「いえ、そういう訳には参りません。今まで大変なご無礼だった上に、女神様の使徒である方に対してどうして対等以上になれましょうか」
あー マルセリナ様は案外頑固だな。
そうだ。この逆転の発想でいこうか。
「マルセリナ。私はこの世界で動きやすくするために身分を隠している。だからあなたにも協力して欲しい。これは命令です」
「はい! はいぃぃぃぃっ! 仰せに従います! マヤ様!」
ありゃ…… 彼女が卑屈に土下座してしまう。
余計におかしなことになってしまった。
すると、パティがジロッと私を睨んでこう言う。
「マヤさまっ やり過ぎじゃないですか? 凄く失礼だと思いますっ」
「あぁ…… 今そんな気がしたよ。ははは…… マルセリナ様、ごめんなさい」
「ウルウルウル……」
案の定、パティに怒られてしまった。
マルセリナ様は頭を上げてくれたが、感涙の目で私を見上げる。
どうしたら良いものやら。
「あの、マルセリナ様―― 私が女神サリ様によって転生してきたことは、ガルシア家の若い人たち五人しか知らせていません。そういうことで、神父さんや信徒さんの他、誰にも私の立場は一切隠して下さい」
「はい。はいっ! 承知いたしました!」
「それから、パティも魔力量が大幅に増えています。パティは間もなく卒業しますから、フルリカバリーを教えてあげてくれませんか?」
「はいっ それも承知しました! お昼休みでしたら何時でもお越し下さい!」
「パティ、それでいいよね?」
「はい、マヤ様! うふふっ」
残念ながらマルセリナ様の休憩時間が終わり、面会もこれで終了。
今日のことで、何だかマルセリナ様の印象がずいぶん変わってしまった。
時間が経てば慣れてくれるかな。そうであってほしい。
次回はジュリアさんをマジックエクスプロレーションに掛けて欲しいとお願いをして、お暇させてもらった。
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その後は続けてパティとショッピング。
靴が欲しかったみたいで、稼いだお金で私がプレゼント。
そのお礼にと、オープンカフェでお茶を御馳走になった。
近頃はエリカさんと一緒が多かったから、私自身も久しぶりに気分転換が出来て明日も頑張ろうと思えてきた。
パティはそれを感じてくれたのか、腕にギュッと掴まれて身体の密着度が高かった。
こんなに胸が当たっていて良いのだろうかと、理性を保ちつつ並んで歩く。
思春期の成長は著しいので、一年前と比べたら身体がますます大人びてきたなあ。




