第十九話 誰が好き?/ビビアナの気持ち
2022.9.19 軽微な修正を行いました。
私はいったい誰が好きなんだろう。
一番には、アマリアさんに甘えたい、抱かれていたいと気持ちで切なくなる。
また、中身五十歳のおっさんからすると大人の女性というのは、男性側が無理に気遣いする必要が無いからだ。
平たく言い換えれば、おっさんがJKと対等に話すというのはなかなか難しい。
アマリアさんには忘れて欲しいと言われたが、私のうっかり魔法で衝動的だったとはいえ、あの情熱的なキスはどうしても忘れることが出来ない。
彼女がカルロス君を抱いているときでも私は遠くから見つめてしまう。
この前は愛していると言ってくれたが、家族のように大切だとも意味が取れる。
だが彼女は既婚者なうえに、お世話になっている侯爵を裏切ることは出来ない。
私のことを一番好きに思ってくれているのはパティだろう。
健気で、焼き餅焼きで、一緒にいて楽しい。
しかし彼女はまだ十二歳だ。
私も男だし身体が若くなったので肉欲はそれなりにあるが、まるで娘のようだから理性が強く働くので、性的な衝動が出そうな気持ちにはならない。
彼女もまだ行為を行うには身体も心も出来ていない。
この前のデートで膝枕をしてくれた時は母性を感じたので、少しずつ成長していくのだろう。
エリカさんはどうだろう。
未婚だし歳は上だけれどそういう条件は問題無い。
私をよくからかっているのは勿論興味があるからなんだろうが、他にはどういうつもりなんだろう。
女性が多い屋敷にも他に男性がいるし外からの出入りもあるが、そういうことをしているのは見たことがない。
からかうだけでそれ以上のことはないが、男の子が女の子にいたずらするのも好きのサインと同じことだろうか?
服の上からもわかるナイスボディだけれど、私はヘタレなのでたまたま見えたぱんつを見ることしかできない。
たまたまが多いのは否定しないぞ。
勉強はとても熱心に教えてくれているし、私に対して何かしら思いが強いのはよくわかっている。
スサナさんとエルミラさんは、私のことをあまり異性として意識していない節があるけれど、時々思わせぶりの行動もあるし、つかみ所が無い。
言葉より拳で語るほうがずっと多いからね。
そういえば今度、エルミラさんと買い物をすることになっていたよ。
ビビアナはこの前私を「あてしのものニャ」のようなことを言っていたが、エリカさんと言い合っていた勢いだろうか。
なかなかプライベートで話すことも無いので、そうだ今度デートに誘ってみるか。
近頃パティとも仲良しだから、パティに正直に言えば嫌な顔はしないと思うが……
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午後の休憩の時、何かおやつを貰おうと厨房の近くに行ってみたら、ちょうどビビアナとマルシアさんがいた。
「この子ったら本当によく働くし、料理が上手で美味しいし、メイドの皆さんも娘のように可愛がっていて、いい子だよ」
マルシアさんがそう言いながらビビアナの頭をなでなでしていて、ゴロニャーンという笑顔をしていた。
うまくやれているようで良かったよ。
「ビビアナ、今度買い物とご飯食べに行かないか?」
「ニャニャニャ!?」
「あらデートのお誘いかい? 良かったねえ。
じゃあ明日にでも行っておいで。仕事は私たちでやるから」
「ありがとうございます、マルシアさん。」
「マルシアさんありがとうニャ。楽しみだニャ!」
「ビビアナちゃんずっと頑張ってるし、羽を伸ばさなきゃ。
マヤさんももっと早く誘ってあげてたら良かったのに」
「ははは、ビビアナがここへ来てからずいぶん経っちゃいましたね。」
そうだなあ、徽章を届けて貰ったお礼もまだだったし、何かプレゼントできるかな。
その日の夕食の後ビビアナもいる場で、パティに二人で出かけると話してみた。
パティは何故かニヤッとした表情で快く了解してくれた。
「ビビアナの料理は本当に美味しくて、毎日一生食べてみたいわぁ」
「ニャんだ、そんなことならパティとあてしがマヤさんと結婚すればいつでも食べられるニャ」
「まぁ!」
ビビアナは得意げに踏ん反り返っている。
パティは両手で頬を押さえて照れていた。
あの、ビビアナさん。今さらっととんでもないことを言いましたよね?
それに人間族と耳族って結婚できるの?
「あの、ビビアナ。冗談じゃなくて俺と結婚したいのかい?」
「耳族の女は強くて頼もしい男が好きニャ。
ビビッと来たら早く捕まえるニャ。
ただ強ければいいって訳じゃニャいから、ビビッと来たのはマヤさんが初めてニャ。
マヤさんはどんどん強くなっているから、あてしの目は間違いなかったニャ」
確かに押しかけ女房のような勢いで屋敷にやって来たからな。
徽章を落としてなかったらどうなってたんだろう。
外れないようにしていたはずなのに、落としたのはまさかサリ様の仕業ではないだろうな。
「ビビアナの気持ちはわかった。
俺はビビアナことが好きだけれど、まだ自分で気持ちがわからないんだ。
結婚できるかどうかはもう少し時間が欲しいな」
「わかったニャ。
明日のデートからあてしのことをよく知ってもらうニャ」
「マヤ様の活躍ならきっと叙爵出来て、一夫多妻の資格が持てますわ。
ご精進くださいませ。うふふ」
急に、思ってもみなかったことになってしまった。
この先が思いやられるなあ。