第二十話 ビビアナのお家で
2026.3.9 全体的に見直し、加筆修正を行いました。
今日はビビアナと出かける。
スサナさんたちとの訓練を早めに切り上げて、十時頃に出発することにした。
ビビアナの服装は白いシャツと明るい茶色のショートパンツとかなり軽装だった。
「今日はマヤさんを家族に紹介するから東の街へ行くニャ。お昼ご飯は家で食べていくニャ。ママの料理はあてしよりもっとウマいニャー」
うーん、早速だな。
耳族は思い立ったらすぐ行動するのか。
私たちはたまたま通りがかった賃走の馬車で直接東の街へ向かう。
ビビアナは無邪気そうに対面の座席で足を曲げて座ってるもんだから、ショートパンツの裾からぱんつが覗いている。
ふむ、エッジ付きのピンクか。
東の街へ着くと、ビビアナに着いていって山というか少し小高い丘に登った。
見晴らしが良く、マカレーナの街全体が見えるくらいだ。
素晴らしい景色に私は少し見とれていた。
「ここはあてしが子供の頃によく遊んだところだニャ。マヤさんをここへ連れてきたかったニャ」
ビビアナは私の腕に絡んでベタベタしている。
柔らかい胸が当たっているが、彼女の様子ではあまり何も考えてないだろう。
まるで小さな娘がじゃれついているように。
「ビビアナ、今度はここへ弁当を持って来て食べようか」
「それはいいニャ。あてしが腕を振るって作るニャ!」
ビビアナはますます私にくっ付いてくる。
こういうのも青春でいいもんだね。
丘を降りてお昼前まで屋台市場をぶらついてみた後、ビビアナの実家へ向かった。
「ママ、ただいま!」
「まあまあ! ビビアナ久しぶりニャ!」
「この前助けてもらったマヤさんを連れて来たニャ! あてしはマヤさんと結婚するニャ!」
「おい! 玄関でいきなり過ぎるだろ!」
思い立ったらすぐ行動する耳族の性格も、ビビアナは度が過ぎる。
「あはは…… どうも初めまして、マヤです」
「まあまあまあ! ビビアナの母ですニャ。どうぞ上がって下さいニャ」
ビビアナのお母さんは三十歳過ぎだろうか。
エプロン姿で、見た目は若くビビアナがそのまま歳を取った感じだ。
「ママ、お昼ご飯を一緒に食べるからあてしも作るの手伝うニャ。あ、マヤさん。これはあてしの弟と妹ニャ。パパは仕事で、もう一人の妹は学校へ行ってるニャー」
なっ…… 一、二歳ぐらいの小さな猫耳男の子と女の子が……
かっ かっ かわいい!!
「ニャ~」
「ニャニャニャ~」
言葉はまだあまり喋られないようだ。
足下にニャーニャーと纏わり付き、懐いてきた。
思わず二人とも抱っこしてしまった。
か、可愛すぎて鼻血が出そう…… むふー
「もうマヤさんに懐いたかニャ。さすがマヤさんだニャ。ちょうどいいからご飯が出来るまで面倒見てて欲しいニャ」
私は膝に乗せたりニャニャニャと話しかけてくるので自分もニャニャニャを言ってみたり、もふもふと楽しんだ。
私は子供がいなかったけれど、いいもんだなあ。
そうしているうちにご飯が出来たようだ。
「まあまあ、チビにゃんたちをありがとうございますニャ。さあどうぞ、召し上がってくださいニャ」
ママさん特製のミートタコスや揚げた魚料理、スープなどどれも旨すぎる。
パティが食べたら必ずハマるであろう逸品だった。
地球の猫は辛い物がダメだったはずだが、耳族は何でも猫に非ずか……
――ああ、それよりも。
結婚のことは勘違いされてもいけないから、今のうちに言っておく。
「あの、お母さん。結婚はまだ決まってなくて……これからお互いをよく知っていくというか……」
「わかってますニャ。耳族の女は思い立ったら素早く行動するニャ。
ビビアナはよく男に声をかけられるけれど、全部断ってきてるニャ。
珍しく気に入ったのがマヤさんで、あてしもマヤさんを見ていて間違いないと思ったニャ。
チビにゃんたちが懐いているのもその証拠だニャ。
耳族と人間族は差別がニャいと言われてるけれど、人間の男は耳族の女を下に見てるやつもたくさんいるから、そういうのはあてしたちならすぐおかしいと感じるニャ。
マヤさんはそんなことないニャ。
急かすことはしニャいから、ゆっくりビビアナを知って欲しいニャ」
ふーむ、物わかりが良いお母さんで良かったよ……
耳族の女の子はその場ですぐ行動か。
「それを聞いてホッとしました。ところで、耳族と人間族は結婚できるもんなんですか?」
「滅多にいニャいけれど、問題無く結婚できるニャ。耳族のほうが血が強いから、産まれてくる子供はみんな耳族の姿ニャ」
「ほほぅ…… そうなのですか」
人間のほうが劣性遺伝子なのか……
出来るならハーフか、生き物自体が違うから子供が出来ないと思っていた。
ビビアナと結婚したら自分の子供も、もふもふチビにゃんになるのかあ。
どうしよう。人間の赤ちゃんより可愛いかも知れない。
――すっかりご馳走になって、デザートにママさんのプリンも頂いちゃって、休憩がてらまたチビにゃんたちと遊んでいたら時間が経つのを忘れていた。
これはお家デートになるのかな。
そろそろお暇し、ビビアナママとチビにゃんたちも手を振って見送ってくれた。
チビにゃんたちが手を振る姿がとても愛らしく、萌え死にする人がいるかも知れない。
「ビビアナ、この前の徽章を届けてくれたお礼に、服をプレゼントしてあげるよ」
「ニャニャニャ!!」
ビビアナは目を輝かせながら喜んでいた。
わかりやすくて、プレゼントし甲斐があるよ。
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賃走の辻馬車で、前にスサナさんと行った貴族向けの商店街へ向かった。
このあたりでも大きめの衣料店に入ってみた。
「ニャニャ! こんな高そうなお店でいいのかニャ!?」
「遠慮はいらないよ、私の気持ちだから」
前にパティを助けた礼金もまだあるし、給金を頂いているのでかなり余裕だ。
私は服に無頓着なほうなのであまり衣服の買い物をしないせいもあるが…。
私用のスーツ一着ぐらい買っておくか。
ビビアナはこういうお店が初めてでそわそわしていたから、前にパティがデートの時に着ていた服に似ているものを見立ててみるか。
「すごく可愛い…… 綺麗…… これは本当にあてしなの?」
試着して姿見を見て驚くビビアナ。
私から見ても可愛らしいが、未だに猫耳コスプレ娘に見える。
本物の猫耳なんだよなあ。
「そうだね。良く似合ってるよ」
白いブラウスに、薄いピンクのスカート。
それからブラウス入れてもう一組、薄い緑のスカートも買った。
尻尾を通す穴が無いのでお店に頼んで仕立ててもらっている間に、自分用のスーツを試着して買ってみた。
うむ、スーツを着るなんて元の世界で仕事をしていた時以来だよ。
「おおー、マヤさんすごく格好良いニャ!」
「フフッ そうかな」
女の子に褒められると嬉しいものだ。くぅぅぅっ
せっかくなのでビビアナにはブラウスとスカートの格好で帰宅した。
ちょうどパティが帰ってきていたところだったので、新しい服について一緒に褒めてくれた。
「マヤさん、ちょっとこっちへ来るニャ」
パティと分かれた後に、ビビアナが誰にも見られないよう通路の物陰へ私を連れて行く。
「これはあてしの気持ちニャ」
ビビアナは私の唇をペロペロしてきた。
耳族式のキスなのか、唇がちょっとくすぐったい。
私もペロペロしてみた。
舌先同士がごっつんこしまくるだけで、キスというにはほど遠い。
私も猫になった気分……
両手を絡ませてみた。恋人繋ぎだ。
ビビアナはギュッと手を握り、ポーッとトロけそうな表情になる。
こんなのでいいの?
「こんなキス初めてニャ。今日はありがとうニャ」
「うん」
やっぱりあれもキスなんだね。
彼女はもう一度軽く口づけし、私と分かれた。
その直後、私はきゅううっと胸が締め付けられる。
これ―― 私もビビアナのことが好きになったのかな。




