プロローグ
ある神々が管理する世界。
どんな生き物も、
どんな種族も、
どんな性格も、
差別されない楽園がそこにあった。
しかし、ある一人の男はこう言った。
「神は時に俺たちに試練を与える。何故俺たちは管理されなければならない?」
その男の言葉につられ、神々に反するものが増えていった。
感染するように。
浸食されるように。
信じられないほどの速度で。
民に、王に、世界に浸透していった。
浸透してしまったのだ。
神々は言った。
今までの信仰は消え失せ、信者が一人もいないこの身に価値は無い、と。
信仰心によって成り立つ神々は、また一柱、また一柱と消えていった。
その男を邪神認定したは良いものの、心優しき神々はそれもまた運命であり、世界の進む道だとした。
男の行動に反して神々側の信者が増えていったりもした。
だが、今更信者など増えても神々を復活させるには砂漠にオアシスを作るようなものである。
だから神々は苦肉の策をとった。
『ステータス』の導入である。
これは差別も起こる上、神々の目指した世界ではなくなってしまったのかもしれない。
神々は自分らの命の危機におかしくなってしまったのかもしれない。
世界は破滅へと繋がっているのかもしれない。
そんなあやふやで不安定な世界。
あやふやでも命は生まれ、死んでゆく。
この話はいつ生まれ、誰に育てられたかも判らぬある一人に男の物語である。