1話
俺が四歳の頃、初めて剣というものに触れた。
その時には既に親は居らず、森の魔物に育てられていた。
森の魔物は剣の王だった。
魔物の中でも遥かに高い知性を持っている極めて珍しい魔物だ。
名前は知らないが俺は勝手に父さんと呼んでいた。
剣の振り方は父さんに教えてもらった。
俺が十歳の頃。
父さんは人間に会ったらまずは疑えって言ってた。
俺は解らなかったが父さんは人間に何かされたことがあるんだと考えてた。
人間が全種族の中で一番狡賢いとのことだった。
魔物である父さんは会うたびにそれを見続けていたらしい。
そして何か一つ特化したものを身に付けろ、とも。
父さんはそれが剣だった。
俺が十四歳の頃。
父さんが他界した。
一晩中泣いた。
生きる術は全て叩き込んである、心配することなんぞどこにもないわ。
そう言って笑顔のまま死んでいった。
父さんは俺のために死んだ。
俺を残して死んだ。
父さんの遺体は解体して、形見に、剣に加工した。
父さんの身体は今まで以上に強い剣が出来上がった。
銘を【家】とした。
父さんの使っていた剣も一緒に鍛える。
俺の左腕を素材として。
銘は【族】とした。
そのお陰もあって最高傑作が出来上がった。
父さんの全てを注ぎ込んだ【家】。
父さんの剣に自分を注ぎ込んだ【族】。
どうせ俺にしか通じないし、他人では扱いきれない【剣】だ。
剣の名前は俺が知っていればそれでいい。
俺が十六歳の頃。
相変わらず、山で生活していた。
朝練は欠かさずやって、その後に修行、朝飯食って、食材探し、また修行して、晩飯、精神統一してから就寝する。
毎日のルーティンは変わらない。
父さんがいなくなってからは、周りの魔物が活性化し始めた。
父さんで抑えられていたものが解放されたからだろうか。
その対応に追われ、修行じゃなく実戦の方が多かったんじゃないかな。
珍しく人間に会ったりもした。
さて、現在ニ十歳の俺。
剣を振り続けて十六年。
遂に山を下ろうと思う。
腰には二振りの【剣】を、背面には恐ろしく堅い鉱石で作った解体用ナイフを。
水筒、毛布、食材、薬などを持っていく。
防具は動きやすいように関節部を除いて製作し着用した。
解体用ナイフにも使った鉱石で急所を狙われても傷一つつかないようなものが出来上がった。
ある鉱石を伸ばし、糸に加工し今着ている肌に吸い付くような伸縮性のある服も作成した。
【剣】でも本気で切らないと穴が開かない。
衣類にしては充分すぎる性能だろう。
「行ってきます。父さん」




