「旅の仲間が出来たのです!」
ここはジャパの西に位置するサイカイ地方。
住み慣れた国であるジャパを後にした近衛暁月。
父から貰った刀を背負い、意気揚々と進んでいた足がピタリと止まる。
「そう言えば……何処へ行って何をするのです?」
暁月は首を傾げその場でぐるぐると回りだす。
「……まぁ、歩けば何かあるのです♪」
と言って再び歩き出した。
歩き続け日が登りきった正午過ぎ、休憩できそうな茶屋を発見。
「丁度お腹も空いてきたとこなのです♪」
一目散にお店に駆け込む暁月。
「こんにちは~、何か食べ物と飲み物を頂きたいのです」
「いらっしゃいませ、お嬢さん。コチラがメニューとなっております」
——腹ごしらえを済まし一休みしていると、他の客の話し声が耳に入ってくる。
「……そんで、それは本当なのかい?」
「あぁ、間違いね~らしいんだ。あのお山には四神獣様の内の一柱が住んでらっしゃるんだとよ~」
「こりゃたまげた!本当に居たんだな、四神獣様ってよぉ~」
その話が耳に入り、興味津々の暁月。
「横から失礼いたします。その話って、何処のお山の事なのです?」
「あぁ、神獣様はあの山のてっぺんに居るって話だよ……ってオイ、お嬢さん!」
もはや居ても立っても居られず、店を飛び出した暁月。
目指すは四神獣様が居ると噂のお山。
それは遠くからでも一際目立つ、雲をも突き抜けんとそびえ立つ単独峰。
「あれが四神獣様のお山ですか。いや~、立派なお山なのです♪」
お山の麓までやってきた暁月は、その辺で拾った枝を杖代わりに山道を登っていく。
「むっかし~、むっかし~、あっかつっきは~♪ふんっふ、ふんっふ、ふんっふ~♪……」
鼻歌交じりで、手に持つ枝をブンブンと振り回しながらどんどん山道を進んでいく。
——やがて、頂上が見えてくる。
そこには見上げるほど巨大な、卵のような岩が鎮座していた。
「おぉ~、これは立派な石の卵。あの上に登ってみたいのです♪」
周囲を見渡し、付近に大きな木を見つけた暁月は、その巨木を登っていく。
「うんしょ、うんしょ……よっ、ほっ、よいしょ!」
巨木のてっぺんが見えてきたと思った、その時。
ズルリッ!
枝を掴みそこねてしまい、真っ逆さまに落ちていく暁月。
「わっ!わっ!わっ!落ち……ない?」
その瞬間、何かに襟元を掴まれ、落下を免れる暁月。
トスッ……
「まったく……眼の前で死なれたら寝覚めが悪り~だろ~が!娘、何用だ!」
そこに現れたのは、暁月をすっぽりと影で覆い隠すほど巨大な白銀の虎。
四神獣が一柱——西要の“妖虎“であった。
「おっ、おっ、おっ、おっきいのです!白い虎さんなのです!」
言うが早いか、妖虎に飛びつきしがみつく暁月。
「おいっ、聞いてんのか、娘っ!おいっ!……まったく、何なんだコイツは……」
そう言って暁月の首根っこを口でくわえ、眼の前に座らせた妖虎。
金色に輝くその瞳で暁月をジロリと睨みつけた次の瞬間。
妖虎が何かに気づく。
「んなっ!娘、お主……いや……。娘、名は?」
「わたしは近衛暁月と申します。虎さん何というお名前なのです?」
一呼吸置いて答える妖虎。
「我は四神獣が一柱、西要の妖虎だ。そこの要石の守護をしている」
「はぁ~、ヨーコさんは守護役でしたか!暁月も大八州守護役なのです!……でも解雇されちゃいましたので、今は旅をしているのです」
「守護の任……と言うことは爵位持ち……近衛……あぁ、そう言うことか」
なにやら1人で納得している様子の妖虎。
「娘、いや暁月。旅をしていると申したな。次は何処へゆくのだ?」
「何も決めてないのです!」
下を向き、何かを考えている様子の妖虎。
パッと顔を上げた次の瞬間、妖虎がクルリと一回転し、大柄な女性に変化。
白銀の髪、太い二の腕、隠しきれていない尻尾、そして金色の瞳。
「よし、では我が他の四神獣の元へ案内してやる。良いな?」
その言葉を聞き、飛び上がって喜ぶ暁月。
「ヨーコさんと一緒に旅が出来るのです!暁月は嬉しいのです!」
こうして暁月と妖虎の四神獣を巡る旅が始まった。
近衛暁月の行く末は、果ては東か、沈みの西か。
その実、知るは風のみぞ……。
「なんでヨーコさんは暁月を他の四神獣様の所に連れて行ってくれるのです?」
「あ~、うん、まぁ、なんだ。旅は道連れって言うじゃね~か♪」
—to the Next Wind—




