「ジャパは今日も晴天なのです!」
ここは風の国“ジャパ”。
四方を神獣に守られた、最果ての島国。
天候にも恵まれ、人々は不自由のない日々を過ごしていた。
——その日、国の守護を預かる男爵家の令嬢、近衛暁月は城へと呼び出されていた。
「大八洲守護役、近衛暁月。今日限りで、守護の任を罷免とする」
「え~っと、つまり……お城で働かなくて良いですの?」
身なりの良い初老の男が、暁月の前に立ち答える。
「近衛暁月よ、そなた今年で13歳になったのだったな……気立ては良く、性格も朗らか……ではあるのだがな~。少々、公務には向いてなかったようだな」
くるりと周りを見渡してから、満面の笑みを浮かべ答える暁月。
「分かりました、叔父上。これで暁月は自由の身と言う訳なのです♪」
*****
役職を解任され無職となった暁月。いくばくかの退職金を手渡され、城を後にする。
「むむむ、父上になんて言ったら良いものか……。いっそのこと、黙って国を離れて……」
門前で行ったり来たりとウロウロしていると、女中のトメさんに見つかってしまう。
「はれ、お嬢様。こんなお時間に、城のお勤めは如何されましたか」
「あぁ~、えぇ~、それはですね~。ちょっと野暮用が出来てしまいまして……旅に出ようかな~なんて思ったり、思わなかったりで……」
「あれあれ、旅に出るちゅうと。お父上様にはご報告なすったんでしょうか?」
急な話に驚くトメさん。そそくさと屋敷に戻っていく。
「あつ、トメさん!父上にはまだ……あ~、行ってしまわれたか……」
仕方なく屋敷に入る暁月。
玄関を入ると父が待ち構えていた。
「暁月、守護の任はどうしたのだ?それとトメさんから、お前が旅に出ると聞いたんだが……どう言う事か説明してもらおうか」
今にも怒り出しそうな父の顔をチラッと見て、観念した暁月が顛末を告白する。
「……そうかそうか、それで父に言うのが嫌で旅にでると……はぁ~」
深くため息をつき、肩を落とす父。暁月を顔をまじまじと見て、ゆっくりと告げる。
「もう良い暁月よ、お前の好きにせい。今日限りでお前を勘当とする。旅にでも、どこへでも好きに行くが良い……」
父のその言葉を聞き、満面の笑みで答える暁月。
「では父上、暁月はジャパ漫遊の旅に行ってまいります♪」
こうしてジャパ漫遊の旅に出る事となった暁月。
「トメさん、トメさんは居るか~」
「——旦那様、何用でございましょう?」
「ウ、ウォホンッ……あ~、あれだ。これを暁月にだな……渡しといてくれんか」
それはお金がパンパンに入った財布と、一振りの剣であった。
「はいはい、旦那様。して……これは旦那様からと言って手渡して宜しいのですか?」
「そ、それは言わんで良い……母を亡くして10年、これと言って何もしてやれんかったからな。せめてもの旅の足しだ……」
——次の日の朝早く、父の顔を見ずに暁月は家を出る。
「父上、行ってきますのです」
門をくぐるとトメさんが待ち構えていた。
「暁月お嬢様、こちらをお持ちになって下さいませ」
「剣と、財布ですか。これは……」
「はい、口止めされておりましたが……旦那様からでございます。ですから、たまには旦那様にお顔を見せに戻っていらして下さいませ」
その言葉を聞き、暁月の眼に涙が滲む。
「心得ました、トメさん。旅先で手紙を出すと、父上に伝えて下さいなのです」
こうして暁月のジャパ漫遊の旅が始まった。
近衛暁月の行く末は、果ては東か、沈みの西か。
その実、知るは風のみぞ……。
「ジャパは今日も晴天なのです!」
ーto the Next Windー




