第八話 sideラヴィリオ
ティアリアに再会できたことが嬉しくて、不甲斐ない自分を隠すようにいつものように……、いや、いつも以上に軽い言葉が次から次へと溢れ出てしまった。
だけど、瞳の色を言った途端彼女は体を硬くさせていた。
怯えた様に、小さな声で呟くティアリアを守りたいという一心で、俺は無意識のうちに彼女の細い体を抱きしめていた。
折れそうなほど細くて、力を込めれば泡のように消えてしまいそうだった。
弱々しい力で胸を押された俺は、彼女を抱きしめられる喜びと、心も体も弱っている彼女をこんなになるまで放っておいてしまった罪悪感で胸が苦しかった。
そして、ようやく俺の名前を彼女に知ってもらえることが嬉しくて、引き寄せられるように勝手に彼女のベール越しの頬にキスをしてしまった。
きっと彼女は菫色の瞳を驚きに丸くしていることだろう。
彼女が黒いベールで顔を隠していることが残念でならなかったが、それを無理に剝ぐことなど俺は絶対にしたくない。
彼女から俺に顔を見せてくれるまで我慢だ。
そんなことを思っていると、温かな風か吹いていた。
悪戯な風は彼女の顔を覆っていた黒いベールをふわりと揺らしていた。
一瞬だったが、彼女の素顔が白日の下にさらされた。
白すぎる肌、小さな唇。形のいい鼻。
そして……、ボロボロの薄汚れた布が無造作に巻かれた顔……。
胸が痛かった。
どう見ても布の巻かれたその両目は……窪んで見えた。
それはつまり、彼女の美しい菫色の瞳は、もうそこにはないということだった。
どうして、どうして!!
今思うと、あの時すでに左目もそうだったのかもしれない。
ああ、この子を絶対に大切にしよう。
俺の妻になってよかったと思ってもらえるように、彼女に幸せだと思ってもらえるように、俺は彼女を大切にしよう。
そう思った俺は、無意識に謝罪の言葉が口から出ていた。
「どうして……。どうしてこうなってしまったんだ……。ごめん、ティアリア……」
腕の中の小さな体は本当に儚くて、少しでも強く抱きしめれば泡となって消えてしまいそうだった。
だけど、彼女は凛とした声で言うのだ。
「同情は不要です。ですが、貴方様に不快な思いをさせないように、出来るだけ息を殺します。もし、それでもわたしのことがお嫌でしたら、殺してください。出来るだけ苦しくない方法でお願いします」
不快なはずがない。どんな君でも、俺は愛しいのだと今この瞬間に俺は思い知らされたんだから。
だから、少しでも彼女の負担が無いように、言ったつもりが、長年の癖が出てしまった。俺の口から飛び出した軽すぎるセリフに頭痛がした。
「ごめん。でも、これは同情なんかじゃない。愛情だよ? だから、君が死を選ぶなら、俺も同じ道を歩もう。ふふ、ごめんね。さあ、俺の可愛い花嫁殿。二人の甘~い、愛の巣に案内するよ」
だけど、少しだけティアリアの体から感じる緊張が緩んだようで、俺は安堵した。
その後、馬車の中ではティアリアの傍に居られる嬉しさが最高潮に達した俺は、馬鹿みたいに軽口が止まらなかった。
だけど、返事はなかったけど、俺の話に合わせて小さく頭を傾げたりする様子が可愛くて可愛くて可愛すぎで、俺はどうにかなってしまいそうだった。




