第三十五話 sideラヴィリオ
あの日、ティアリアがいた部屋に何者かが転移してきた証拠はすぐにそろった。
あまりにも杜撰な侵入方法に呆れもしたが、魔力のない国に生まれたのなら仕方のないことなのかもしれない。
普通であれば、侵入に気付かれないようにすること、侵入の痕跡を残さないようにすること、最低でもこの二つくらいは対策をする。
しかし、最低限の対策もなく、さらには転移の痕跡も消さずに去っていたのだ。
そのお陰で、侵入者はディスポーラ王国の人間だとはっきりとした証拠を揃えることができた。
しかし、帝位継承第二位という立場だけではディスポーラ王国に攻める理由としては弱かった。
だからこそ俺は利用できるものはなんでも利用することにした。
俺はすぐに兄である、セルジュ=ラギ・マルクトォスの元に向かっていた。
「兄上!」
そう言って、俺がノックの後返事も聞かずに部屋に侵入すると、実に無害そうな兄上ののほほんとした表情に迎えられた。
「セス? どうしたんだい?」
「兄上は常々、趣味の魔法道具作りの道に進みたいと言っていたな」
「うん。でも、お前は帝位なんて興味ないみたいだし、お兄ちゃんである私が父上の後を継がないとね」
「頼む。俺にはどうしても権力が必要なんだ。だから……」
そう言って、兄上に向かって頭を下げる。
そんな俺を見た兄上は、のんびりとした口調で言うのだ。
「そっか。うん。セスは、力が欲しいんだね。でも、それって、力を手に入れた先にある物は何かな?」
俺の真意を探るかのように兄上がそう言った。
兄上に嘘を言っても無駄だと分かっていた俺は、自分が何を持って力を欲しているのかを話していた。
「ティアリアを助けたい。そのためには、ディスポーラ王国に武力を持って侵攻する必要がある。だが、俺の立場でそれは難しい。だから、力が欲しい。次期皇帝の嫁を襲った賊を捉えるという大義名分が欲しいんだ」
俺の言葉を聞いた兄上は、少し考えた後にとんでもないことを口にしたのだ。
「なるほどね。わかった。それならセスに協力するよ。でも、それだけだと、父上は動かないよ。だから、口実を増やそう。例えば、魔鉱山とかね。ほら、ディスポーラ王国の結界が弱くなってるっと噂があることだし、今ならこれで結界が壊せるかもだしね」
そう言った兄上は、作業している台に何かの装置らしきものを置いた。
見たこともないそれに俺が困惑していると、兄上は軽い口調でとんでもないことを言い出したのだ。
「あは! ちょっとこの魔法道具の性能を試したかったんだよね。ああ、これはね、鉱山を掘削するのに使えそうだって思って作ったんだけど、理論値の桁がちょおっと間違っちゃったみたいでね。山脈ごと消し飛ばすくらいの威力になっちゃったんだよね~」
おお、兄よ……。
だが、それくらいの力があればもしかするとディスポーラ王国の結界も何とかできるのではと思えてしまう。
「よし! 善は急げだ。今から父上の元にプレゼンしに行こう! お兄ちゃん、可愛いセスのために頑張っちゃうよ~」
またしても軽い調子でそう言う兄上と共に父上を説得しに向かったが、向かった先で母上が激怒する事態となったのだ。




