復讐に王は無く故にこそ復讐は
生き残りは復讐を誓い、集落を滅ぼした騎士団に入る。
騎士団で副団長となる頃にはもう殆どの復讐は済ませており、残るは団長のみとなった。
生き残りは時に集落で教わった術で情報を集め、時に怒りに任せ力をふるい、時に騎士として粛清し、時に戦士として戦い、復讐を果たしていった。
そんな生き残りが最後の相手とした団長は国一番との呼び声高い双剣の使い手。
生き残りは夜に紛れ隙を窺い、ある時とうとうその時がやって来た!
団長の寝室に忍び込み剣を突き立てる!
その時男は生き残りの刃に触れる前に言った、、、
「待っていたよ」と
生き残りの手が止まる。
「死神の足音がしたんだ」
男が静かに独白する。
「あまりにも多くの命を奪ってきた。
それ以来、死神の跫音が私の耳を打つ様になった。
今日は酷く足音が良く聞こえて、君がやって来た。
とうとう私もあの日の報いを受ける日が来たのだと悟ったよ」
生き残りは目を見開く。
男はあの日の事を後悔していたのだ。
自分の集落を滅ぼしたあの日の事を。
許される行いでは無い。
揺らいだ心に声が響く。
男か自分か、どちらの言葉かも分からない声がして、生き残りは手に力を込める。
だが自身の刃が男の首を刎ねることはなかった。
男が先に自刃していたからだ。
思わず生き残りは声を上げる。
「何故」
男は微笑んで言う。
「これ以上我が子の様に愛した子に罪を背負わせはしないよ」と
男は生き残りの頬を撫で、自分の様になるな、と言い残し息を引き取る。
そうして生き残りの胸には、また自分だけが生き残った事への虚無感が溢れる。
その日以来、生き残りは姿を消した。
これは人々が忘れ去りし、最古の復讐の記憶。
忘れ去られたが故に復讐の王は無く、最古の復讐は鬼を産んだのだ。




