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ドッペルゲンガー5

5.

 沙織が部室について十五分程たった頃だろうか、弘と悟が部室に入ってきた。それから先ほどの状況を悟が詳しく聞き出している。

 「要約すると、僕と弘がコンビニにいる間に弘に似た人を沙織は見てその人は消えてしまったってことで間違いはないんだね。」

 そう聞き返す悟の目は真剣そのものだった。沙織の剣幕を見てのことだろう。青ざめた顔をした沙織は椅子に座ったまま悟の質問に頷く。

 昨日届いたメールに今回のドッペルゲンガーどちらか単体だとしたならば、大したことないと笑えるのだろうがこうも重なると真剣に考えざるを得ない。

 沙織の青ざめた顔を見た弘も冗談でも、見間違えでもないと確信しているようだ。いつものおちゃらけた感じが消え真剣に沙織の話を聞いていた。なかなかこんなに真面目な顔を見せることのない端正な彼の顔を見てドキドキする余裕など今の沙織にはなかった。

 「弘くん、死んじゃうのかな? 」

 不安を押し殺しながらも漏れてしまう言葉が沙織の口から零れ落ちる。

 「実は、瞳も弘くんのドッペルゲンガーを見たかもって言ってたの。」

 これだけの人が見ていると悟も否定できなくなってしまう。

 顎に指をあて考えるいつもの仕草がどこか頼りなさげである。それでも、必死で考える悟の姿を二人は見守っていた。

 「少し、考えさせてほしい。」

 自信なさげな悟の発言を聞いた二人は彼にもわからないことがあるのだと思い知らされたのだった。それから悟は一人部室後にした。部室を出る悟の背中には何か重いものがおぶさっているように二人には見えたが彼を引き留めることはできなかった。

 「ねえ、弘くん。」

 部室に残った沙織は弘へ些細な提案を口にした。それは、これからしばらくの間は外に出る間は沙織が横にいさせてほしいというものだった。弘を心配してのことだった。弘との時間を共にできる提案なのだが、この時ばかりは彼女の気持ちは心配であることのみに尽きた。そして、その提案を弘は飲むのであった。

 その日の帰り道、夕陽がとてもきれいだった。夕陽の逆行で弘の姿がどこかぼやけて見えて彼が消えてしまうのではないかと沙織の目じりには一筋の涙がこぼれたことに気づけるほど彼には余裕がなかった。


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