【153話】地下迷宮1
*****魔界(魔王城)*****
魔王城に作られた魔法陣のある部屋に辿り着いた魔王代理のミカと補佐のマキ。
部屋を出ると総司令官7名が跪き出迎えていた。
「魔王閣下!お迎えに上がりました。」
総司令官を代表してカオスが話す。ミカは魔王代理であるが、魔王不在の場合は魔王として扱う為、魔王閣下と呼ばれる。魔界四天王と違い、王である以上それなりの扱いを受けるのは仕方がないのである。
「皆様お迎えありがとうございます。お元気そうでなによりです。気難しいあいさつは抜きにして今まで通り接していただいて構いせん。」
姿は女子高生だが、天界のただならぬ能力を身にまとっている為、言葉にも重みがありまるで魔王と会話しているような感じであった。
(いつも一緒にいるから気が付かなかったけど、ミカちゃんて恐ろしいくらいの威圧感があるなぁ。)
「はっ!魔王閣下、さっそくでございますが、ご報告がございます。」
カオスの表情がいつもと違い険しい。これはただごとではないと感じたマキとミカ。
「そういえばディオ様の姿が見えませんが、カオス様それとなにか御関係が?」
「はい、おっしゃる通りでございます。魔界四天王ユウキ様とメアリー様、それに総司令官ディオの3名が現在消息不明となってございます。」
「消息不明って、どうゆうこと??」
「はい、ディオがユウキ様メアリー様と共にどこかへ出かけると告げ、そのまま帰ってこなくなりまして。魔力も察知できずありとあらゆる手段を用いましたが見かけた魔族も皆無でした。」
万策尽きたような表情のカオス、よほど探し回ったのだろう。それにミリアやリリィ、ガイやリードの表情はやつれ、心配を通り越して絶望にも満ちていた。
「ディオさんの持つ魔力は相当なのに、それが察知できないなんてただごとじゃないね。」
「マキさん一体あの2人はどちらへ向かわれたのでしょうか?なにかご存じないですか?」
「うーん。ユキもメアリーも特になにも言ってなかったしなー。」
マキのスーパー頭脳がフル回転する。
(ユキやメアリーの能力の察知は難しいとしても…ディオさんの持つ膨大な魔力を察知できないってことは、魔法陣を抜け異世界へ行ったと考えるのが普通だけど、それなら誰かが見ているはず。じゃないとすれば…。)
レインボーの髪で短パンと半袖姿のマキ。どうみても魔界四天王には見えないその姿で必死に考え何かを思いつく。
「この魔界で魔力を遮断してしまうような場所はありますか?」
マキの質問でミカやミーナ、それにアイリもなにかを思い出した。
「マキ様!この魔界には魔力を遮断してしまう砂がございます。」
ミーナはすぐに答えた。それと同時にミカもアイリも思いだした。
「ミーナさん、砂って?」
「はい、ミリア領に存在する砂漠でございます。その場所では瞬間移動はできませんし、魔力は使用できますが、砂に吸収されてしまい誰も近づきません。」
「そうなんだ、じゃあミリアさん詳しく説明していただけますか?」
ミリアも当然砂漠の事は知っていた。だが、マキに対する恐怖の為、それどころではなかったらしく、ミーナが言いだすまで砂の事を思い出せなかった。
「は、はい。私のお預かりしております領土内の砂漠には魔力を吸収する砂漠が存在します。以前修業の為、メアリー様とご一緒にその砂漠の地下迷宮に参りましたので、もしかすればそこにいらっしゃる可能性がありますかと。」
「へーそんなの迷宮があったんだー。」
「ではそこにいるかもしれませんね。」
「魔王閣下、私が様子を見てまいります。」
ミリアは即座に瞬間移動し、砂漠へ向かった。とりあえずその場にいた全員でミリアの帰還を待つ。
数分後、ミリアが戻ってきた。
「おかえりーミリアさん。どうでしたか?」
「はっ、マキ様それが…。」
ミリアは砂漠へ瞬間移動し、唯一地下迷宮へ移動できる建物へ辿り着いたのだが、その建物はユキの能力により凍らされ入る事ができなくなっていたらしい。ミリアが氷を砕こうと魔力を屈指したがビクともせず戻ってきたのだ。だがマキの言った通り3人は間違いなくそこへ行っていた。
「ミリア、ユキ様はその迷宮にいるってことなんだな?」
ガイがミリアに慌てて話しかける、よほどユキの安否が心配なのだろう。
「ガイ、おそらく迷宮に入られたと思われるが、あの氷は我らではどうにもならない。」
「だろうな、あの氷はダイヤモンドより硬いからな、だがユキ様がそこにいらっしゃると解っただけでも安心だ。」
「貴様らいいかげんにしろ!魔王閣下の前だぞ。」
カオスに怒鳴られ、顔面蒼白になり慌てて跪くガイとミリア。
「も、申し訳ございません。魔王閣下。」
「カオス様、怒らないでください。ミリア様もガイ様もユキやメアリーの居場所が解り、ほっとしているのですから。」
「はっ。申し訳ございません魔王閣下。ですがディオは出かける前に2日程で戻ると言っておりました、すでに3日が経過しておりますので、もしかしたらなにか予期せぬ事態が起こった可能性もあります。」
「確かに可能性は否定できませんね、マキさん一緒に探しにいきましょう。」
「いいよミカちゃん、私とカオスさんで行ってくるよ。」
「あ、あのマキ様。私もご同行願いたいのですが、よろしいでしょうか?」
ミリアが恐る恐るマキに話しかける。
「ミリアさんが来てくれた方が助かるよ、初めて行く場所だし、カオスさん一人じゃ不安だからね。」
「マキ様。。相変わらず酷いですな。」
とりあえずマキ、ミリア、カオスの3人で消息不明の捜索隊が結成された。
「じゃあ早速いってきまーす。」
ミリアの瞬間移動によりその場から消えた3人。ミカは魔界での魔王としての仕事をミサの代わりに行う為、魔王の部屋へ移動した。ミーナとアイリはミカの後ろをとても嬉しそうな表情で付いて行った。
他の総司令官はそれぞれの責務を果たすため、各領土へ分散した。
*****砂漠(ミリア領土)*****
本来砂漠に瞬間移動することはできないはずなのだが、砂漠には何箇所か平らな岩があり、その岩の上になら移動することができる。現在3人は地下迷宮へ行く建物の近くにある岩の上に移動してきた。ここからは徒歩で建物へ移動しなければならない。
「魔界にこんなところがあったんだね。」
どこまでも砂しかない光景に驚くマキ。
「はっ、この砂漠は数千キロに渡り全て砂に覆われてございます。この地には魔物すら存在いたしません。」
ミリアは即座に失礼のないようにマキに説明をする。
「魔力が使えないって本当なの?カオスさんなんかやってみて。」
マキに言われ、カオスが魔力を最大限に引き出し砂に向かって解き放つ。だが魔力は砂に全て吸収されてしまった。
「ご覧の通りですマキさん。ここじゃ魔力は使い物にならないのですよ。」
「この砂は魔族にとって最大の敵ってことだね。」
「量にもよると思うのですが、これだけ莫大な砂で覆われるとどうにもなりませんなあ。」
「じゃあ私もなにかやってみよっと。」
マキは地下迷宮がこの砂漠の下にあると聞いていたので、穴を掘って直接迷宮へ行こうと、砂を持ちあげとんでもない大穴を砂漠のど真ん中に開けてしまった。
(こ、こんなことが…。)
もともとマキに対して恐怖心を抱いていたミリアはその光景を目の当たりにし、マキの本当の恐怖を感じ取った。
「マキさん、無茶苦茶ですな。だれか落ちたら困りますから元に戻してください。」
カオスはすっかりマキの化物じみた能力に慣れてしまっている為、多少の事では驚かない、それどころか元に戻すように促していた。
(カオスはもはや、私など比べ物にならないくらいの存在になってしまっている。)
「はーい、じゃあ砂よ、元にもどれぇぇぇぇ!」
配下に戻すように言われ素直に戻すマキ。ミリアには考えられない事態であるが、そこは深く考えるのをやめることにした。
元に戻した砂漠を歩き建物の前に辿り着いた3人。だが建物はダイヤモンド並みの硬度を誇る氷で覆われていた。氷を砕かない限り中には入れないのだ。
「マキ様、このように氷に阻まれ中に入れません。」
ミリアは再度、魔力を屈指し氷を砕こうとするが、傷一つつかない。マキは氷の硬度を確かめる。
「この氷、あと2日くらいで溶けるように作られてるね。永久的に凍らせたものじゃないから、カオスさんなら砕けるかも。」
カオスもこの氷の硬さはしっている。以前ミカエルの城に張られていた氷と同じだったからだ。
「わしでも無理だとおもうのですが。」
「じゃあ、砕けなかったらこの砂漠に生き埋めにするからね。」
「さすがにここでは脱出不可能ですよマキさん。」
「何万度もあるマグマを泳がした人が言うセリフですか?」
「だってあれは罰ゲームだったからしょうがないでしょうが。」
(生き埋め?数万度のマグマを泳ぐ?この2人何を言ってるの?)
2人の会話を聞いていたミリアの頭はパニックになった。
生き埋めにされるのは嫌だったので、カオスは氷に覆われた建物の前に進み、ありったけの魔力を引き出し、氷にぶつける。
『ドッカーーーーーーン!』
カオスは自分が思っている以上にかなりの魔力の持ち主である為、氷どころか建物まで吹き飛ばしてしまった。建物がった場所には石でできた床だけが残っていた。
「氷を砕くだけっていったのに、建物まで破壊するなんて。これは罰ゲーム決定だね。」
「そ、そんなああああ。いやだああああ。」
ミリアは茫然としていた。自分がいくら魔力をぶつけようが傷ひとつ付けることすらできなかった氷を砕くどころか破壊してしまうカオスの魔力に言葉を失っていた。
「ミリア、口をあけてたら砂が入るぞ。」
「え?ええ。ごめんなさい。」
カオスに声をかけられやっと我に返るミリア。そして3人は吹き飛んだ建物の合った場所に進み、そこから地下200メートルにある地下通路へ瞬間移動した。




