【152話】交代日当日
*****人間界(交代日当日)*****
「ミカちゃぁぁぁぁーーーん!」
普段は誰も近寄ることもない天地邸の門の前で背の低い女の子が叫んでいる。これは夏休みに入る前なら毎日見られた光景であり、夏休みに突入した現在では今日が2回目だろう。
大きな門が開き、体格の大きな恐ろしい顔をした中年の男性が笑顔で出てくる。その後方には数人の黒い服を着た男達がいる。
「マキさんおはようございます。」
「ミカちゃんのパパーおはようございます。」
社長(組長)である天地巌自身が先頭になりマキを出迎える、自分の娘の友達が遊びにきただけなのにこの出迎えなのである。
以前、巌のことを『ミカちゃんのおとうさん』と呼んでいたのだが、何度も遊びにきているうちに、ついつい『ミカちゃんのパパ』と呼んでしまい、その呼ばれ方の方がいいと巌に言われその後は『ミカちゃんのパパ』と呼ぶようになってしまったのだ。
「ミサキお嬢さんとミカと一緒に旅行ですね、うらやましい。」
「あはは、そうだよ、社員旅行冬休みになったんですよね、マキも連れて行ってくださいね。」
「も、もちろんです!豪華な料理を腹いっぱい食える所へ行きますからね。」
「わーい、すっごい楽しみだーわーい。」
マキの喜ぶ笑顔を見た巌は、普段では絶対見せない笑顔でマキを見てとても嬉しそうだ。周りにいた黒服も、このときばかりは巌から少し引いてしまう。
門から玄関まで歩きながら、カニがいいとかフグもいいとか、真夏なのに鍋の話で盛り上がり、ようやく玄関まで辿り着いた。
「おとうさん!いいかげんにしてください!私のマキちゃんを取らないでください!まったくもう。」
玄関で仁王立ちし、怒った表情のミカ。この天地邸で唯一巌に説教できる存在でもある。
「す、すまんミカ。マキさんと冬に行く旅行先の打ち合わせをしていて。」
「はい?今真夏ですよ。何考えてるんですか。」
「まあまあミカちゃん、そんなに怒らないで、ミカちゃんのパパは私達に合わせて旅行も延ばしちゃっただから。」
「もう、マキちゃんはおとうさんに甘いんだから。」
しょうがないわね、といった表情で苦笑いするミカ、巌はほっとした表情だった。
「そろそろお姉様が迎えに来られるはずです、マキちゃんいきましょ。」
「だね、じゃあミカちゃんのパパーいってきます。」
「マキさんいってらっしゃい。ミカも。」
「ちょっと!なんで娘の私は付け足したみたいに言うのよ。ほんとあきれるくらいマキちゃん一筋なんだから。」
門まで見送ろうとした巌にここでいいとミカは告げ、マキと共に門へ向かった。玄関先にいる巌を見ると見送りにいけないことでがっかりしていた。
門を出ると、ちょうど白いベンツが停まっていた。窓からミサキがサングラスをかけてこちらを見ている。
(うわぁミサキねえさんかっこいい。すっかりおとなになってしまってる。)
「お姉様、おはようございます。」
「ミサキねえさんおはようございます。」
「おはようマキ、ミカ迎えに来たわよ。」
2人は車に乗り込み、ミカは先程の出来事をミサキに話し、車は学生寮に向かって走り出した。
「そういえばユキとメアリーまだ帰ってきてないのよ。」
「ええっそうなんですか!ユキは天然だから時間の感覚がないとしても、しっかりしたメアリーが一緒にいるはずなのに。」
「そうよねー、ユキちゃんは仕方ないけど、メアリーちゃんまで。なにかあったのかしら。」
「私も海外から少し前にこっちへ帰ってきたばかりで知らなかったのよ。学生寮に寄ったら誰もいなくて、守衛の人に聞いても、見かけてないって言われてね。」
「じゃあ、私達が魔界へ行ったときに帰るように伝えときますね。」
(魔界でなんかあったのかな、でもあの2人に今の魔界で対抗できるような存在はいないはずだし、魔物にしても闇竜でも出てこない限り危険な魔物もいないはずだし。)
ミサキの運転するベンツは学生寮に到着した。
「お姉様ありがとうございます。ユキさんとメアリーさんには戻るように伝えますね。」
「ミサキねえさんは魔界にいかないの?」
「うん、私はこれから用事があるから、ミカ、マキ頼んだわよ。後日私も魔界に行くからそのとき合流しましょうね。」
「はい、では先に行ってまいります。」
「ミサキねえさん、またあとでねー。」
ミサキは車を走らせ学生寮を後にした。ミカとマキの2人は魔法陣のある学生寮地下3Fへエレベーターで降りて行く。
この学生寮の地下は地下1Fがメアリーの居住になっており、地下2Fが大広間や会議室で地下3Fが魔界へ行く為の魔法陣のある部屋である。
学生寮建設に携わった人間の記憶はテミスにより記憶操作が施され、この学生寮地下室の存在は転生者以外誰も知らない。
「じゃあミカちゃんいこっか。」
「うん、マキちゃん。」
2人は魔法陣に入り魔界へと転移した。




