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その2 魔法の特訓

「ところで、さっきの話じゃ。お前の頭の中にタローと言うものがおると?」

「はい。」

「儂は、そ奴と話せんのか?」

「話がしたいですか。」

「そうじゃの。その兄貴分と、話がしてみたい。」

俺は頭の中のタローと相談して、探査ボットを一機使う事にした。


「では、これからタローの代理になるボットを、ここに飛ばします。」

しばらくすると、搭載艇から射出された探査ボットが一機、戸口に到着する音がした。

俺は扉を開けて、ボットを小屋の中に招き入れた。


銀色をした縦横高さがそれぞれ1mほどの立方体のボットが、ふよふよと浮かんで小屋の中に入ると、師匠と向き合って座る俺の横に浮かんだ。

このタイプは、周囲を観察するだけのデータ収集小型ボットで、標準的なコミュニケーションはできるが、自衛能力などは搭載されていない。マコイ師匠に置いてきたのと同型だ。


師匠に向き合うボットの表面1m四方に、懐かしのタロー兄の顔が映った。

「私がタローです、師匠。」ボットが喋った。

師匠はさほど驚きもせず、しかし面白そうにタロー兄の顔を見て言った。


「おお、こんな事ができるのか。これの本体は、おぬしが乗っていた船に()るのじゃな。」

「はい、このボットが見た師匠は、本体にも見えています。私が見ている師匠も、頭の中のタローを通じて、本体に届いています。」

「儂は、この顔を見て話せばよいわけじゃ。これは愉快。」無邪気に喜ぶ師匠。


「なるほど、おぬしに似ておる。ああ、お前がこの兄の似せたと言ったか。」

「はい、そうです。」

「一人で退屈しておったが、こりゃあいろいろと面白いことになりそうじゃの。」

師匠はご機嫌だ。まあ歓迎してくれるのなら、ここは大いに喜んでもらおう。


師匠は、俺の今後の教育方針について、考えてくれた。

「まずは魔法じゃな。六つある属性をすべて操らねば、賢者とは言えぬ。」

「最初に、四元素属性をある程度の水準まで高めるのじゃ。」

「これが体得出来たら、次は光と闇の属性を覚える。」


「四元素は実際には単独で使う事は稀で、ほとんどがこれらの組み合わせじゃ。」

「火と水は判り易かろう。土には石や金属も含まれる。風は空気とその動きよ。」

「例えば炎は火と風の属性、そして水と風の属性で氷、という具合じゃな。」

「土と風で、石礫(いしつぶて)を飛ばすこともできるぞい。」

「なるほど。」


「対して、光と闇は生体エネルギーそのものを取り扱うので、その両方を極めるのが難しい。共に、回復魔法と浸食魔法の基礎になる属性じゃ。」

「しかして、この両方を扱えることが、四属性の更なる解釈を深めることになるから、賢者を目指す時にはキモとなる。」

「いくら優れた魔導士でも、この両方が体得できず賢者の高みに登れない者が、とても多いのじゃ。」


「光と闇、この両方を体得できるものは少ない。しかし、おぬしはキュベレが認めておるのじゃし、光が既にそこそこ使えるのじゃから、いずれはものになるのじゃろう。」

「まあ、まずは四元素属性をものにせよ。」

「明日から始めるぞ。」

「はい、師匠。」

「それとな、このタローじゃが、借りておいて良いのか?」構いませんよ、とタロー自身が答えた。

「うむ、では明日は、朝に準備ができたらここに来るのじゃ。」


搭載艇に戻りながら、「おい、師匠はどうしてる?」とタローに聞いてみた。

「私にいろいろ質問を投げて、ずっと話し込んでいる。」

「ふーん、好奇心の塊だな。」

「そうだな、面白い御仁だ。」

「まあ、付き合ってやってくれ。」

「了解。」


 ◇ ◇ ◇


こんな訳で、次の日から師匠の特訓が始まった。

岩場に立った師匠は、「まずは魔力の形を知る事じゃ。」そう言って、俺の手を取り、師匠の魔力を少しばかり俺に流してくれた。ジワリと暖かな波動が伝わってきたのを感じる。ああ、昔こうしてマコイ婆様から光属性の回復魔法を教わったのだったな。

「幸いにして、おぬしは魔素には不足はないようじゃ。キュベレの仕業かの?」


ここで言う魔素とは、火山や温泉などを通じてこの星の奥深くから地表に噴出している魔法の源の事だ。師匠によれば、陽の光の中にも、僅かに含まれているそうな。師匠は魔素の補充のために、日光浴を日課にしているのだった。


太陽の熱核反応の副産物なのかもしれないな、と俺は考えた。いずれにせよ、地上の魔素は急速に失われつつある。恐らく、惑星の進化と共に地下からの供給量が減少して、魔素は宇宙空間に放出されていくのだろう。


この魔素を、周囲の空間から体内に取り込むのが、俺がこの星の生き物の細胞内に見つけた例の小器官(オルガネラ)だ。この小器官が細胞内に多く分布していれば、沢山の魔素を汲み出せる。つまり魔法の材料をたくさん溜め置けると言う訳だ。


そして魔力とは、この魔素を操る能力の事で、これは訓練によって伸ばす事ができる。つまり集めた魔素を、鍛錬した魔力で操るのが魔法と言う事になる。


例えば炎の魔法は、空気中の酸素を風属性の魔力で集め、これに火属性の魔力を収束して炎を作る。火属性のみでは、対象物を発火させることしかできない。

例えば水の魔法は、水の分子を無から生み出すのではなく、空気中の水蒸気を凝縮させるものだ。風属性で水蒸気を集めるのは言うまでもない。


魔力で、物質を生み出すことはできない。魔法は、あくまでも古典的な質量保存則の上で成り立つ現象であって、質量とエネルギーの等価性にまでは介入できないらしい。


いや、待てよ。もしかして、できるかな? 魔素は一種のエネルギー素材だからな。まあ、そうだとしても膨大な魔素の集積がなければ、質量に介入するのは無理だろうな。

「ふふっ」と耳元で、含み笑いが聞こえたような気がした。


四元素の魔法を、俺は今まで治療目的に使うだけだった。傷を洗い、薬を溶くために小規模に水を生成したり、体内操作に土や風属性を極めて狭い範囲で扱うのみだったから、師匠に言われるままに鍛錬を繰り返すうちに、俺は疲れ果ててしまった。

魔素はあっても、まだ魔力が乏しいせいだろう。


「儂などは、長年の試行錯誤でようやく魔力操作を我が物としたのじゃ。」

「こんな短時間で習得できて、有難いと思うがよい。」恩着せがましくニタリと笑った師匠は、

「そこでじゃ。疲れたじゃろうから今日はこれまでとして。」

「お主、儂にこの大地の様子を見せてくれぬか。」唐突にお願いされてしまった。(続く)

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