表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家電転移~永久名誉店員になった俺は家電の能力(チカラ)で異世界を救う~  作者: 宮地拓海


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/114

6話 前線で戦う戦士たち ―4―

「では、我々の姿もそこへ保存し、遠く離れた場所にいる相手に見せることが可能なのか?」

「あぁ。こいつを持って行けばな」

「是非にお願いしたいことがあるっ!」


 凄まじい勢いで、兵士たちが詰め寄ってきた。

 な、なんだよ!?


「我らはヴァンガード村の者だ」

「ヴァンガード……村?」


 怪しいにおいがぷんぷんする。

 ……この世界の女神には、どうにも悪癖があるようだな。特に名付けに関して。

 意地でも触れてやるものか。


「へー、そんな村があるんだー」

「アキタカさん、なんでそんな棒読みなんですか!? なんでわたしと視線を合わせてくれないんですか!? 言ってくれて構いませんよ? 『お前それ、アレのパクリだろう』って! 『それ、もろに【ヴィレッジバンガー……】』」

「へー、そんな村があるんだー」

「アキタカさんがこっちを見てくれません!?」


 ここは泣く泣く筋肉を凝視だ。

 あいつと目を合わせると、俺まで同類だと思われる。怖い怖い。


「ヴァンガード村は、ここより北へ十日、馬車で四日ほど行った場所にある村だ」


 結構遠いな。

 馬車で四日……死ぬかもしれない。あの酷い揺れにさらされ続けると。


「ヴァンガード村には、神獣様がおいでになるのだ」

「神獣?」

「うむ。白きたてがみの、雄々しき獅子神様だ」


 神獣というのは、女神の使いと言われていて、神獣への信仰はアミューへの信仰とカウントされる。

 そんな話を以前聞いたな。


「ところが、その神獣様がここ最近お姿を現さないのだ」

「ここ最近ってのはどれくらいだ?」

「一年くらいか……」

「神獣様がお姿をお見せにならなくなってから、魔獣の活動が活発になったと言われているのだ」


 つまり、俺たちがそのヴァンガード村へ行き、神獣の姿を撮影することが出来れば……


「神獣様のお姿を目の当たりにすれば、ここらの魔獣など怖気づいてみんな逃げていくに決まっているのだ!」

「いや、でも3インチだぞ?」


 魔獣が大人しくハンディカメラの液晶なんか見てくれるかね?


「遠近法だと言えばいい」

「魔獣にか!?」

「話せば分かる!」

「だったらとっくに和解出来てるだろうが!」


 話しても分かり合えないんだよ、魔獣とは!


「しかし、神獣様のことも心配だし……我々も、不安から本来の力の半分も出せておらんのだ」

「上半身裸な上に仰向けであんなに強いのにか!? あれでまだ半分か!? お前らこそが魔獣なんじゃねぇの!?」

「はっはっはっ。国王様は我らの百倍お強いぞ」

「……あれはもう、人間の規格超え過ぎだから」


 筋肉の世界の非常識さを改めて目の当たりにし、俺は激しいめまいに襲われる。……いや、これ突っ込み過ぎでHPがなくなりかけてるんだな。

 やばい。俺、ここにいると死ぬかもしれない。


「分かった。とにかく、そのヴァンガード村ってのに行ってみよう」


 もし、神獣の撮影に成功すれば、それを見せて回るだけでも信仰が集められるかもしれない。

 ……なんか、信仰の集め方が強引で、胡散臭い宗教みたいになっちまってるが、まぁ、気にしない。信仰は大事だ。

 それに、神獣が現れるとそこいらの魔獣がいなくなるってんなら、国民の負担も減るだろう。

 神獣によって国に平和が戻れば、きっと国民総出で女神を奉ってくれるに違いない。

 うん、それはいい。


「じゃあ、アミュー。出かけるぞ」


 俺のHPが尽きる前に!


「待ってくれ!」


 立ち去ろうとした俺たちを、数人の兵士が呼び止めた。

 真剣な表情の中に、どこか落ち着かないような雰囲気をにじませて、俺たちの前に並ぶ兵士たち。

 お互いをヒジで小突き合い、「お前が言えよ」「いや、お前が」などとやり合っている。……なんだ?


「じ、実は頼みたいことがあるのだが」


 兵士の中の一人が代表して、一歩前へと進み出る。

 微かに頬が赤く染まっている。


「我々はヴァンガード村出身の者たちなのだが……その……長く会えていない家族に、我らの姿を見せてやってはくれないだろうか」


 代表者の男の後ろで、兵士たちが頷いている。

 前線に家族を送り出し、残された者たちはさぞ不安な日々を送っていることだろう。

 もし、動画であっても家族の元気な姿が見られれば、きっと安心するだろう。

 だが……


「お前たちだけが特別扱いで、軋轢は生まれないのか? 初めに言っておくが、国中を回ることは出来ないからな」


 ここでOKを出して、「俺も俺も」となられては困る。

 ここには、国中から兵士が集められているのだ。

 そいつら全員の家族に会うには、王国中を旅しなければいけない。それは無理だ。


「大丈夫だ」


 そう言ったのは、ヴァンガード村出身ではない男で。


「その者達が幸運だっただけのこと。我らが不幸なわけではない」

「その通りだ。また機会があれば、我らも便乗させてもらいたい。その程度のことしか思わんよ」


 意外とさっぱりとした性格をしているようだ。

 誰かが幸運を手にしても、自分が不幸になるわけではない。

 そんな考え方が出来るのは、素直にすごいと思えた。人間というのは、誰かを妬んでしまう弱さを持っているからな。


「そういうことなら、ね、アキタカさん」


 アミューも兵士たちの願いを聞き入れるつもりのようだ。

 お前がそう言うなら、俺が文句を言う理由はねぇな。


「それじゃあ、村の家族に元気な姿を見せてやれ」

「ありがたい!」

「恩に着る!」


 嬉しそうに笑う兵士たちの顔を見て、こういうのもきっと救いになるのだろうななんて、そんなことを思ってしまった。

 俺もすっかり、女神の使者が板についてきたってことかもしれない。


「あ、そうだ」


 こいつらの映像を消さずに済むように、俺は『女神の装具』で256GBのSDカードを作ることにした。

 またがっそりとMPが奪われてしまったが、これでフルHDの高画質で50時間、画質を落とせば最大で600時間近くの動画が残せる

 そう、思い出は残すものなのだ。


「はぁ……はぁ……そ、それじゃあ、準備はいいか」


 MPの消費により、少しふらつくが、カメラを構えて兵士たちをファインダーに収める。

 幾分緊張した面持ちの兵士たちだったが、俺がキューを出すとよく通る声で話し始めた。


「村のみんな、見えているか? 俺たちは前線で元気にやっている。仲間もみんな無事だ」


 代表者の言葉に、周りの兵士が少しおどけて見せる。

 どこの世界も、カメラを向けられると似たような反応を示すヤツがいるんだな。ピースしてるヤツがいる。


「これから、俺たちの日々の鍛錬の成果を見てもらいたいと思う。みんな!」

「「「「おう!」」」」



 代表者の号令に、兵士たちが鎧に手をかける。

 そして――


「これが、俺たちの新しい陣形だっ!」


 ――言うや否や、上半身裸になり、仰向けでヒザを立てて、カサカサカサカサ、カサカサカサカサ、カサカサカサカサカサカサカサカサと気持ち悪いくらいの速度で縦横無尽に動き始めた。


「それはやめいっちゅうに!」


 俺、渾身のツッコミが映像に記録された。

 よかった。ワイプ機能が付く前の機種で。

 今の顔は、きっと他人には見せられなかっただろう。


 というか……


「すまん、アミュー……MPが減ってふらついているところに全力のツッコミをして……もう、ムリだ……あとは、頼…………む」

「えっ!? ちょっと、アキタカさん!? わたしが撮るんですか!? む、むむむ、無理ですよ!? わたし、直視出来ませんもん、あんな……あぁぁぁああああぁぁああっ!? なんかより一層カサカサしてますっ! 物凄くカサカサカサカサしてますよぉ、アキタカさん! ねぇ、アキタカさぁぁぁああん!」


 そんな、アミューの悲鳴を子守唄に、俺は再び眠りについた。


 HPって、0にならなくても、一気に減ると、しんどいんだな……



 そんな新発見をしたところで、俺は意識を手放した。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ