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家電転移~永久名誉店員になった俺は家電の能力(チカラ)で異世界を救う~  作者: 宮地拓海


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6話 前線で戦う戦士たち ―3―

 砦の中から外からわらわらカサカサ半裸マッチョリアンの群れが現れた。

 全員仰向けでヒザを立て、「お前それ、背中どうなってんだよ? 車輪でも付いてんの!?」なんて疑問も挟ませないくらいの勢いで、なんなら「え、俺らもともとこーゆー生き物ですけど?」とでも言わんばかりの自然体で、非常識なオッサンどもが群がってきやがった。


「アァア、アアア、ア、アキ、アキタカさんっ! にげ、逃げましょう! きっとあれ、噛まれると感染してわたしたちもあぁなっちゃうヤツです!」

「B級ホラーより怖ぇな、それ」


 群がってくるマッチョリアン。いや、まぁ、騎士団なんだけど……


「騎士団長殿はご無事なのか!?」

「意識が戻られたのか!?」

「伝言とはなんなのだ!」

「お聞かせ願おう!」

「いざ!」

「「「「いざっ!」」」」


 ……うぜぇ。

 そしてちょっと怖ぇ。

 アミューなんか、完全に怯えている。


「ア、アキタカさんっ、は、早く、早く動画の再生を! 仰向け生物カサカッサーンの群れが押し寄せてきてますからっ!」

「いや、カサカッサーンって!?」

「いざっ!」

「いざっ!」

「「「いざいざいざいざっ!」」」

「にゃぁぁあああっ! アキタカさぁぁああん! いざぁぁあ!」

「落ち着けアミュー! 伝染うつってる! 口調伝染ってるから!」


 迫りくる半裸マッチョ・カサカッサーン。

 後ろからぐいぐい背中を押してくるアミュー。

 完全に逃げ場のない俺! ……アミュー、覚えてろ。


「今から騎士団長からの伝言を聞かせるから、静かにしろ!」

「貴様の言うことなど聞けぬ!」

「そうだそうだ!」

「騎士団長気取りか!」

「何様だ!」

「何目線だ!」

「何から目線だ!」


「何から目線」に関しては「上から目線」以外に該当する言葉がないと思うんだが!?

 えぇい、くそ!

 こんな暑苦しいオッサンどもに構っていては、俺のHPが尽きてしまう。

 心労とツッコミのせいでな!


「くっ、もういい……再生だ!」


 ギャーギャーと騒ぎ始めたオッサンどもの前で、動画を再生する。

 病室で撮影した、騎士団長ベシーロの映像だ。



『皆の者よ、静まれ』



 シーン……


 すげぇ従順!?

 さっきまでの騒がしさが嘘のように、オッサンどもが静かになった。

 騎士団長の声、効果絶大だな!?



『私は、騎士……………………………………ベシーロだ』



 ……うん。この『間』は俺が入れさせたものだ。

 まぁ、気にするな。撮影を円滑に進めるための苦肉の策と言える。



『まず、皆の者よ。普通にせよ』



 瞬間、騎士たちが立ち上がり、駆け足で砦の中へと戻り、鎧を纏い武器を携帯して、物の十秒ほどで戻ってきた。

 出来るんじゃん! 普通の格好!

 最初からこの格好だったら「あ、騎士団だ」って素直に思えたのに!


 それから、ベシーロは『各々、自分が最良だと思える方法で砦を守ること』『他の者と連携して行動すること』『決して無理はしないこと』など、ごく当たり前のことを事細かに指示していった。

 そして――



『私はすぐにでも戦線に復帰する。それまで、誰も死なぬこと』



 そんな、部下思いな一面も覗かせた。


「いや、そんなこと言われてもなぁ……」

「死ぬ時は死ぬし」

「魔獣との戦闘って、そんな甘いものじゃないしなぁ」

「そこは素直に『はい!』でいいだろう、お前ら!?」


 そんなに従順でもなかった!

 なんで妙に冷めてんだよ。

 ベシーロだって分かってるよ、それくらい。でも、こういう時ってそう言うもんじゃん!

 感動しろよ! 病床からのビデオレターに!


 それから、騎士たちは真剣に、黙って、身を寄せ合うようにして、3インチのワイド映像画面を食い入るように見つめていた。

 負傷して戦線を離脱した騎士団長の映像を目に焼きつけるように。



『皆仲良くするように。食事の奪い合いをしないように。寝る前には歯を磨くように。あとそれから――』



 撮影中は「こいつは何をバカなことを言っているんだ」と、思っていたのだが……騎士団長はさすがだったというわけだ。必要だわ、この指示。

 映像を見ながら「よし、今日から磨くか」とか呟いていた兵士もいたしな。


 ベシーロに説明してもらったところによるとこの騎士団は、騎士団長のベシーロを筆頭に、数十人の騎士と、国中から集められた力自慢の兵士によって構成されているらしい。

 全部が全部騎士ってわけではないようで、騎士と呼ばれているのは、王国内の領土を任されている貴族たちだけのようだ。

 なので、兵士たちは自身の住む領土を治めている騎士の下に就いているという感じらしい。


 まぁ、騎士も兵士もこぞってバカばっかりなのだが。



『最後になるが、女神の遺跡より発見された女神の遺産は、この「はんでぃかめら」を持ってきた女神の使者と従者の者に渡すように』



 そんな一言とともに、砦の防衛の合間に、女神の遺産を探せという任務が言い渡された。

 アミュー曰く、女神の遺産は困っている人々を救うためにこの世界へ転送されているため、困った人が多い場所に女神の遺跡が誕生しているはず、ということらしい。

 ……荷物になるのが嫌でぽいぽい放り込んでただけだったくせに。

 しかし、この世界の神であるアミューがそう言うのであれば、きっとそうなのだろう。

 そして、困っている人ってのは戦場にたくさんいる。

 なので、この付近には複数の女神の遺跡が誕生しているはずなのだ。


 ……『遺跡』が誕生という、この謎ワードの違和感たるや……考えたら負けなのは分かっているのだが…………『遺産』ってのがほぼすべて家電なわけだし。


 だから、ここの連中に付近を捜索してもらえるのはありがたい。

 また、マーサが「だったら、国王様にお願いして伝令を出してもらえばいいんじゃない?」という意見をくれた。

 前線を騎士団が捜索し、国王の伝令によって王国各地の人間に女神の遺跡を探索してもらえれば、多くの女神の遺産が集まってくる。

 そうすれば、この国は一気に住みやすくなるだろう。


 その使いどころを決定する俺としては、相当なプレッシャーなのだが……


 そんなわけで、国王に手紙を書き、マーサに託しておいた。

 定期的にやって来る国王の使いに渡しておいてくれるらしい。



『では、皆の者よ。また会おう』



 締めの言葉を言って、動画は終了する。

 病院のベッドに座っていたベシーロの映像が消え、真っ黒な画面が映し出される。――と、同時に。


「騎士団長殿!?」

「騎士団長殿が消えた!?」

「貴様っ! 騎士団長殿に何をした!」

「皆の者! この男を捕らえよ! 打ち首にしてくれる!」

「「「「ぅぉおおおお!」」」」

「ちょっ!? 待て待て待て待てっ!」


 慌てて動画を再生する。



『皆の者よ、静まれ』



 しーん……


 だから、指示には忠実だな、お前ら!?

 しかし、ビビった。

 マジで殺されるかと思った。


 いや、おかしいと思ったんだ。

「なんだそれは?」とか「こんな小さな箱の中に騎士団長殿が!?」とか、そういう意外そうな反応がゼロだったから。

 一瞬「あれ、こいつらハンディカメラ知ってんのかな?」って錯覚するくらいに普通に動画を見てたからさ。

 それがまさか……本人がそこにいると信じて疑っていなかったとは……しかも全員。


「このサイズで、本人のわけないだろうが……」

「ふっ。知らんのか、若いの。遠くにいる者は小さく見えるものなのだ」

「遠近法にしても限度があるだろうが!」


 空間ねじ曲がり過ぎだろう、だったとしたら。

 このハンディカメラを持ってる俺がそこまで小さくなってないのに。

 ……あぁ、そうだな。お前らには難しいよな。同じ距離にいて片方だけがすげぇ小さく見えるなんてことは普通に考えてあり得ないんだ――ってことを理解するなんてのはな!


「これが、女神の遺産と呼ばれるもので、こいつは人物や風景を記録し、こうやって見せることが出来る道具なんだ」

「なんと……そんな物が……」

「では、騎士団長殿は?」

「今は病院で、怪我の治療を受けている最中だ」

「「「「なるほどぉ~」」」」


 ……こいつら分かってんのかね?

 どうにも、こう素直に納得されると、理解してねぇだろって思ってしまうんだが。

 まぁ、これも『永久名誉店員』の力なのかもしれないけどな。



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