54 涼しい春の日のゆううつ
開けた窓から、爽やかな風が入ってくる。
カーテンが揺れて、降り注ぐ陽光が絨毯の上で踊り踊る。
外を見ると、風と一緒に色取り取りの草花が右に揺れたり左に揺れたり。
「ぃやあ~~~っ♪」
「あうあーーーー!」
そして白い部屋の中では、黄色いボールを使って無邪気に遊んでいる女の子が二人。
とても気持ちの良い、身も心も洗われるような朝である。
「……あー、いやしゃれるぅー」
ゆっくりと深呼吸して、自然を満喫する俺。
都会であるはずの王都で、なんという贅沢だろう。 生前ではあり得ないな。
そ、それなのに――。
「あー、きもちいーぅぃぅぃぅぃぅぇ~……。
って、やめれーーーっ!?」
「ああーーっ、癒されるわぁ~~~~っ♪
この感触……特に、このぷにぷにーー」
「だ、だひゃら、えるねひゃやぁやぁやぁ」
せっかく俺が休みと自然を堪能しているのに、逆にそんな俺を堪能しているリトルレディ。
しかも俺を膝に乗せて。
「はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」
「あへあへあへあへあへ」
だからもう、ほっぺぷにぷに止めなさいって!
……いやまあ、俺もセーレたんに時々やってるけどさー。
「ああもう……あたし、このために生きてるわぁ~~~~」
「いやいやいやいや」
何言ってるのこの娘はっ!?
なんかエルネちゃん、最近微妙にマールちゃん化してきてないか?
そんなマールちゃんも若干心配なんだが……。
「ひゃあ~~~~ん!」
「しゅおーーーい!」
おおっと、白熱したキャッチボールのさなか、妹様が俺直伝のダイビングキャッチを見せましたよー!
つーかエミーちゃん、喋れるじゃん。
「にゃあああああ~♪」
「つおいーーーーー!」
ボールを掲げて可愛らしい声を上げているセーレたんに抱き付くエミーちゃん。
……いや、「強い」はちょっと違うと思うが。
「せーれー!」
「ひゃうん!?」
なんて思いながら見ていると、いきなりエミーちゃんが妹様を押し倒した!?
そして、ころんころん状態に。
「うー! やー! たーー!」
「きゃああん! やう~っ!」
ちょっとバイオレンスなエミーたんの攻めを、うまくかわしてマウントポジションに持って行くセーレたん。 ね、寝技強いね!?
まあ、俺としょっちゅうやってるしなぁ。
「にゃははは~ん♪」
「あうっ! うーーーっ!?」
なんか妹様、横四方固めに入ってるんですけど。
一体どこでそんな技を……うん、間違いなく俺だな。 袈裟固めもやったわ。
「あはははっ! セーレちゃん、強ーーい」
「やわ○ちゃん……」
「ん? 誰?」
「なんでもないー」
「うああああああーーーー」
「ひゃあああん!?」
そんな会話をしていると、なんと力尽くでセーレたんをはね除けたエミーちゃん!!
あの、俺でもそんなパワーファイトは無理なんですけどー。
俺はくすぐって脱出するし。
「何だか楽しそー♪」
「うえっ?」
あ、あのー。 なんで、俺の腰を両手で掴むんですか?
「それーーーーっ!!」
「うわあああぁぁぁっ!?」
横に倒されたーーっ!
「ほれほれほれほれーーーー♪」
「うひゃっ!? ひゃひゃ! やめ! ひゃひゃひゃあーーー!!?」
やめてえーーっ!
マジ、俺、そこ、弱っ、アッーーーーーーーーー!!
「あはははははっ♪ さすがに、体力じゃ負けないねーっ」
「ぜーはー、ぜーはー、ぜーはー」
あ、当たり前でしょうが! 何歳差だと思ってるんだよ君……。
「おにぃ~? だいじょぶ~?」
「ぅー……」
せ、セーレたん……遊びの時の体力、凄いね。
一回り身体の大きいエミーちゃんが、ぐったりしてるんですけど。
「おにぃ~? しぬの~?」
「し、しなないから、ね……がくっ」
「ぷっ!? お、面白すぎるわ、あんた達……っ♪」
「くー……」
お昼の鐘が鳴って、リビングでおやつを食べた俺達。
妹ちゃんズは、毛布を掛けてお昼寝中だ。
窓から入る、すっかり暖まった風が最高である。
「――そういえばジャス君、エミーと同じ幼児園に行ってるんだよね。
あーあ……あたしも学校じゃなかったら行くのにぃ」
「しかたないよー」
まあ、この娘だったら絶対そう思うだろうなー。
実をいうと、アナさん達の家はあの幼児園の向かいの一般区――って、言っていいのかな? そこのやや奥に入った所にあるそうで。
エルネちゃんもエミーちゃんも、最近はずっとアナさんの出勤に合わせて一緒に遊びに来てる。 〈水の日〉、〈土の日〉、そして精霊の日の週三日だ。
そのため、二人が幼児園や学校に行く日とアナさんの休日は、同じにした方が都合がいい。 どれも週二日だし。
だから曜日を合わせるために、エルネちゃんは学校へ行く日を変えたらしい。 ……けっこう自由な学校だな。
そしてアナさんが出勤してくれると、ウチもメイドちゃんズのどちらかに休みをあげられて大助かりなので、俺達が幼児園へ行く日も、姉妹と同じくアナさんの休日となる。
という事で、実は俺達とエミーちゃんは幼児園で会う可能性が本当は高いんだけど、今は家事とかの都合で時間が合っていないだけだったりする。
「あーあ。 行く時間が決まってたら、あたしも学校行く時間を合わせるんだけど……ゴメンね」
「うん、しかたないよー」
そりゃ、休みの日はさぞ家事が貯まってるだろうし。 アナさんに時間合わせて、っていうのは酷でしょう。
「もうっ! 『仕方ない』以外に、何か言ってよぉー」
「……定めじゃ?」
「『さだめ』って、なに?」
「うんめいー」
「あ、なるほどー……。
……あぁぁぁぁぁぁ」
「……ん?」
「うぅ……」
「……?」
「さ、三歳の子に言葉を教わってるあたしって、一体……」
「ぅあ、しまっ!? あ、あーーー、げ、げんき……だしてー?」
「う、うん。 あたし、もっといっぱい勉強するわ……」
「がんがれー」
「うん、ガンバる!」
「きあいだー」
「気合だー!」
「おいっ、おいっ、おいーっ!」
「おいっ、おいっ、おいーーっ♪」
――うん。 この娘、ノリがいいから好き。
今日、学んだ事。
七歳の娘に黒のセクシー下着は、まだ早い。




