表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そだ☆シス  作者: Mie
学童編(春)
357/744

329 たのしいおけいこ

挿絵(By みてみん)





 少し気温の低い今日は風の日、勉強会の日である。

 朝から準備を終わらせた俺と妹様の部屋に、いつもの幼馴染みーズにメイドちゃんズも加わって文字通りの勉強会が始まる。 このメンバーに限っては、お喋りやゲームなどに興じて実はまったく勉強してないじゃん! なーんて心配は皆無だ。


「――ということだね」


 他の科目が全部暗記系統なので、俺がやる授業は算数のみに限られる。 しかもこの世界、というか国特有の知識なので俺自身も教科書で学んだ身。 もちろん俺の分かる範囲で聞かれれば答えるけど、みんなには直接教科書を読んでもらった方が早いだろう。

 それに、いつまでも受身ではダメだ。 勉強に限らず自分から学ぼうとする姿勢を身につけてほしいので、勉強会の後半は自習してもらうにした。


「わぅ……輪作?」


 絨毯にぺたんと座って大きなしっぽを振りながら、くりむちゃんが首を傾けている。 すると、俺の代わりにチューターを買って出てくれたセーレたんが自分からわん子ちゃんの背後に近づいた。


「どうしたの~?」


「これ、どうしてこんなことするのかなって」


「えっとね~」


 俺は自分の勉強をしながら、二人の会話に耳を傾ける。 どうやら、農業の輪作についての話をしているようだ。

 王都内でも農業はしているが、今は巨大な人口を支えるために壁の外――正確には衛星都市に囲まれた「内地」で軍が行う農業が主流らしい。 衛星都市にも食糧を供給するために、近代的な輪作によって地力を守りつつ大規模に作物を生産しているというのにも感心したけど、もっと驚いたやり方もあった。

 輪作の中で敢えて野生動物のためのエサになるものを作って、それを食べる動物のフンから肥料を得て地力を回復させ、同時に狩りも行って周辺の生態系を調節しつつ戦闘訓練もしちゃうとか……。 さすがは軍だよ。 バトル前提とか、民間にはとてもマネできません。

 まあ、妖精や魔獣が生まれやすい地域もあって、それを抑える意味もあるらしいんだけど。


「魔導具みたいにね~? ムギとかも、大きくなるのに使う『えいよう』が違っていて~――」


「うん」


 ずっと前に俺がした説明を思い出しながら、セーレたんが一生懸命に答えている。 うんうん。 教わる方も教える方も、どちらもがいい勉強になるよな。

 その横では、ニコがるー君とエミーちゃんに挟まれて教えてもらっていた。


「だから、こーして……あれ?」


「ニコ君、ここ違うよ?」


「えっ? どこ?」


「もうっ。 だから、こっちが三だから――」


 端から見ていると、可愛い女の子達に挟まれてモテモテみたいになっているけど、それはいろんな意味で違っていた。

 るー君は教えるのはまだあんまり得意ではないようで、指摘はするけどその先の説明や解説に乏しい。 そしてエミーちゃんは、説明はうまいんだけど……。


「――というわけ」


「ぷはあーっ! お、終わったー」


「はい、じゃあ次はこれ」


「ええーっ!?」


 ……けっこうスパルタだった。

 ニコ、頑張れよー。



《オリ、オール……っと。 できたあーっ♪》


 巨大書き初めのように、足の下にあるノートにペンを両手で抱えるように持ち、自分のフルネームを書く練習をしているニアちゃん。

 ニアちゃんからすれば、ノートの大きさは畳一枚分に相当するかな、という感じだ。 ダイナミックに書かれた文字はかなり大きい。

 ペンを両手で頭の上にかかげ、愛娘はくるくると回って喜んでいる。


《ねーねー! ママ、できたよー》


《うん、上手に書けてるね。 ……でも、ミドルネームは伏せようか》


《ええーっ》


 スフィニア・アルヴィ・オリオール。 ミドルネームは設定する人自体が少なくて、あってもあまり名乗らないらしい。 俺も聞いたことないし。

 それに……勘のいい人なら、この子の素性が一発でバレる。

 俺はニアちゃんを掴んで持ち上げると、ページをめくって名前を隠した。


《ミドルネームって、あってもほとんどの人は言わないんだよ》


《そうなんだー》


《でも、間違いもなくよく書けていたよ。 ニアちゃんは賢いねー》


《きゃふーん♪》


 手に持ったままのニアちゃんをにぎにぎすると、くすぐったそうに身体をよじった。 踊っているみたいで可愛いや。

 獲れたての魚のようにピチピチしている我が娘の感触を楽しんでいると、俺が右側のページに描いていたものを隣のチャロちゃんが覗き込んできた。


「ジャスさま……それ、魔法陣ですか?」


「うん」


《ま、ママ……きゃう! く、くひゅぐっちゃ……きゃわっ♪》


《おおっと、ごめん》


 持っていたペンを手放していたニアちゃん。 俺も手を離すと、ノートの上にころころと転がって俺の描いた魔法陣の上で「うきゅう~」と言いながら仰向けになった。 気づいたみんながニアちゃんを見て、笑顔を浮かべている。

 ちなみに俺の描いていたのは、上に置いた飲み物を冷やすコースターの魔法陣だ。 でもペンも紙も描陣(びょうじん)用のものではないので、これに魔力を通せば発動するかというと……かなり難しい。 伝導性が悪いから相当な魔力が必要そうだし、発動する前に紙がダメになると思う。


「すごい……。 とっても正確に描かれていますねぇ」


「ありがと。 でも、そうじゃないと使えないからねー」


「えっ、本当に使われるんですかっ!?」


「いやいや、この紙とペンじゃ無理だから」


「で、ですよねー! ジャスさまだったらひょっとして、って思っちゃいましたよー」


「いやいやいやいや」


 どうして、俺だったらできると思ったんだろうね、チャロちゃんは?




 キリが良かったので少し早めに勉強会をお開きにして、みんなでおやつを食べて解散となった。

 今回はエルリアさんだけでなくわん子ちゃんママも差し入れをくれて、食べ切れなかった分はお待ち帰りしてもらった。 手作りーっという感じがとてもして、素朴な味わいがありました。


「うぅぅぅーーーん……! さて、と」


 風の涼しい庭に出て、セラさんは気持ちよさそうに伸びをした。

 お袋やハニーに比べれば短い、背中くらいまでの髪をポニーテールにして、買ってきたらしいデニムっぽいやや厚めのレギンスを穿いている。 脚は長く、その上とっても細い。

 これで外でもジョギングすれば注目の的だろうなーと思うスレンダー美人の前には、セラさんと同じポニーテールを作った茶色い髪の大人っぽい女の子と金色のツインテールの可愛らしい女の子、そして肩に妖精さんが留まっていることさえ除けばごくフツーの男の子が立っていた。 つまりは、エミーちゃんとセーレたんと俺である。


「考えてみると、こうして四人でするのは去年振りね。

 ……あ、ごめん。 五人だったわね」


「はいっ!」


《わーいっ!》


 髪に比べると、少し赤みの強い茶色の瞳を輝かせているエミーちゃん。 すごく楽しみにしていたみたいだな。 ニアちゃんは見学だけど、セラさんに数に入れてもらって喜んでいる。

「身体を動かしていないと落ち着かないのよねぇ」という、主婦らしいというか……このプロポーションを見れば納得な理由で、この前の精霊の日から時間のあるときには積極的に武術や魔術を見てくれることになった。

 残念ながら庭の広さの関係で、学校の体育館を借りられない平日はみんな一緒にというわけにはいかないけど。 ただし、お袋やメイドちゃんズの家事のジャマにならない範囲でなら、俺達が学校に行っている間などに近所の子供達にも教えてあげるそうだ。


「それじゃ、一人ずつ見てあげようかしら。 まずは……ふふふっ」


 セリフの途中で、セラさんが笑い出す。 そりゃまあ、エミーちゃんの輝く顔を見れば当然か。

 俺はセーレたんとアイコンタクトを交わし、一瞬のうちに意見を一致させた。


「セラさん、最初はエミーちゃんを見てあげてよ。 僕とセーレちゃんとで手合わせしてるから」


「いいのっ?」


「うん」


 いいも何も……という感じだが、わがままらしいわがままの言わないエミーちゃんの、珍しいおねだりだ。 否やはない。


「ということでセラさん、よろしくねー。

 ……さてセーレちゃん、向こうに行こうか」


「うんっ♪」


 こっちはこっちで、セーレたんは俺との久し振りの組み手を楽しみにしているようだ。

 セラさんに手を振ると、俺は左腕にくっついてきたセーレたんを連れ、肩には愛娘を立たせたまま庭の隅へと歩き始めた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ