第一話 「暖簾の先」
ここでの江戸時代はちょっと違う。
徳川ではなく、大川家が幕府を開いた。
それ以外はほぼ変わらない。
そして1663年。
江戸に二輪の花が咲いた。
そして1678年。
二輪が出会った。
四月、もう暖かくなった頃。
呉服屋「渡海屋」の娘、八千代は父に買い物に行くように言われた。
「あれ…?どこでしたっけ…」
白髪に白い肌。
雪が人になったようだが、一つ欠点が。
ド天然。言うなれば、可愛らしい馬鹿。
道は覚えず、名前も覚えず。
今は父の頼みで茶碗を買いに向かっていた。
父の趣味。しかし今は忙しく、八千代に頼んだ。
「あれ…どこ…」
オロオロと迷っていた。
「おい…見ろよあの娘…!」
「上物じゃねぇか…!」
八千代の元へ向かう。
「よう嬢ちゃん…!」
「へ?」
「今暇?」
「今お茶碗買いに行ってて〜…」
「後でいいじゃん〜」
「後はお団子食べます!」
「いや…そうじゃなくて…」
「ふぇ?」
ぐだぐだしていた。
その時だった。
「二対一で何をしている…」
間に入った青年。
紫縮緬には狐と桜が描かれていた。
「なんだコイツ!」
「どきやがれ!」
振り下ろされた拳を避けて、刀の峰で首を打つ。
「ぐぇ…!」
「えぇい!」
もう一人の大ぶりな拳もひらりと躱し、もう一発。
「ぐぅ…」
伸びた二人を見下ろして、青年は去ろうとする。
「あの…!名前…!」
「ん…?」
「名前!教えてください!」
「いや…」
「お願いします!」
「…」
「お願い!お願い!」
グイグイ行く。
青年は顔を隠した。
「……」
早歩きで去る。
「名前〜!」
八千代は追いかけようとしたが、茶碗を買うことを思い出して諦めた。
その頃、住宅街で。
「変なヤツだったな…」
長屋に入った後、地面の戸を開ける。
階段を降りたところに、赤い服を着た集団が。
「頭領、遅いですよ…!」
「すまない…」
第一話 「暖簾の先」 完




