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脇役な主人公補正者 ~影から世界を操る男~  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第6話 領主主催の武闘会でまたも誤解が拡大


 翌朝。

 領主の屋敷の食堂で、俺は豪華すぎる朝食を前にして硬直していた。


 テーブルの上には、肉、魚、パン、果物……村では祭りの日にすら見られないようなご馳走が山盛りになっている。

 だがそんなものを味わう余裕はまったくなかった。


「――本日、武闘会を催す」


 領主ガルド卿のその一言で、俺の平穏な胃袋は完全に死んだ。


「ぶ、武闘会……?」

「うむ。村を救ったそなたの腕前を、皆が見たいのだ」


 いやいやいやいや!

 俺は戦いたくなんかない! ただの観察者でいたいだけなんだ!


 隣でリサが目を輝かせ、セレナは心配そうに俺を見、ミリアは「……どうせまた騒動になる」とため息をついた。


 もう嫌な予感しかしない。


 屋敷の裏庭――いや、庭園の広さを超えてほぼ競技場と化している空間に、観客がぎっしり詰めかけていた。

 領主の呼びかけに応じた騎士や冒険者、さらには街の人々まで押し寄せ、まるでお祭り騒ぎだ。


「見ろ、あれが英雄だ!」

「聖剣の担い手だ!」

「娘様の婚約者候補だぞ!」


 やめろぉぉ! 勝手に肩書きを増やすなぁぁ!


 俺は震える手で木剣を握っていた。

 本当は棄権したかったが、領主直々に「気軽な模擬戦だから安心せよ」と言われ、逃げるわけにもいかなくなったのだ。


 一回戦――奇跡的な勝利?


 対戦相手は屈強な騎士。

 鎧に身を包み、俺を睨むその姿はまさに歴戦の戦士だった。


「お手柔らかに……」


 俺が弱々しく頭を下げたその瞬間。


 ――ズルッ。


 騎士が足を滑らせ、思い切り前のめりに倒れ込んだ。

 そこへ偶然、俺の木剣がちょんと当たり――。


「勝者、悠真!」


 会場が大歓声に包まれる。


「おおお! 一撃だ!」

「やはり只者ではない!」


 違うぅぅ! 偶然だぁぁぁ!


 二回戦――またも勘違い


 次の相手は魔法使いの青年だった。

 詠唱を始めるが、なぜか突然くしゃみをして呪文が暴発。


 ――ドカーン!


 爆煙の中から、煤まみれで転がり出る青年。

 俺はただ木剣を握ったまま棒立ちしていただけだ。


「勝者、悠真!」


 歓声がさらに大きくなる。


「まるで運命が彼を勝たせている!」

「神に選ばれし者だ!」


 ちがうんだってぇぇ!


 準決勝――お嬢様の乱入


 次の対戦相手が現れる直前、観客席からクリスティア嬢が駆け寄ってきた。


「待って! 彼を傷つけないで!」


 両手を広げて俺の前に立つその姿は、どう見ても「命をかけて愛を守る乙女」だった。


 会場は一瞬静まり返り――そして爆発した。


「おおおお! 婚約は本当だったのか!」

「娘様があれほどまでに!」


 やめろおおおお! 火に油を注ぐなぁぁ!


 決勝戦――伝説の再現


 そして決勝戦。

 対戦相手は領主直属の最強騎士。

 観客は最高潮に盛り上がり、俺はもう逃げ場を失っていた。


「せめて、転んでくれ……」


 心の中で祈る俺。

 だが奇跡はまた起きた。


 ――ガキィィィン!


 最強騎士の剣が俺の木剣に触れた瞬間、観客席から放たれた歓声や拍手の振動で、競技場の柱がわずかに揺れた。

 そして、上から落ちてきた布幕が騎士の顔に覆いかぶさり――。


「うわっ!」


 慌てた騎士は足を取られ、地面に転倒。

 偶然その上に俺が倒れ込み、騎士は完全に動けなくなった。


「勝者――悠真!」


 会場は割れんばかりの声援で包まれる。


「伝説の再現だ!」

「神意だ! 英雄の再臨だ!」


 俺は泣きそうだった。



 武闘会は俺の優勝で幕を閉じた。

 領主は大喜びで俺の肩を叩き、クリスティア嬢は涙目で「素晴らしかったですわ」と言い、リサとセレナとミリアは複雑な表情で俺を見ていた。


「……ほんとに、なんで俺ばっかり……」


 月明かりの下、俺は天を仰いだ。

 ――脇役でいたいのに。

 なぜか主人公補正は止まらない。


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