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第九十九話 脅威


 私…… 神崎道満はヒヨコを肩に乗せ廊下を走る少年の背中を追いかける。


「………」


 皇翔介の召喚獣と妖精女王アリスの能力の相性は最悪だ。

 おそらく、このまま戦い続ければ共倒れになる。そうすればアリスの召喚士である斉藤冬至を洗脳し、駒として動かすのは容易い。


 皇翔介と斉藤冬至がこの屋敷に来た時点で、私の勝利は確定してたのだ。この屋敷に誘き寄せるために、あの無能な娘を使わし、利用した。


 すべて私の計画通りだ。何も問題はない…… はずだった。


 私の前を走る少年に、不安を覚える。


 私はこの生涯で一度も、召喚獣の攻防で負けたことがない。

 召喚士としては、間違いなく3本の指には入っているだろう。


 私は負けることはありえない。これまでも、これからも。


 それは、情報があるからだ。


 親父、祖父、祖先が召喚獣の情報を本にして残している。


 それには召喚獣の姿、大きさ、鳴き声、特性などの個性が記載されており、容易あいまみえる召喚獣の対策が取れる、相手の特性を殺し、弱点を狙う策が。


 ただでさえ最上位クラスの戦力を誇る私が、対策を練って戦う。


 だから、私に負けはない。万が一にもだ。


 ……だが、例外もある。


 それは立ち回りだけではどうしても越えられない個性がある召喚獣だ。


その例外こそが、斉藤冬至とアリスだ。


 だからこそ策を練った。何年という長い期間の計画をたて、実行し、実際無力化に成功している。


 あとは、倒れた斉藤冬至を洗脳し、アリスを手中に収めるだけだ。

 

 ……だが、目の前を走る少年。名は…… 高橋勇気。

 斉藤冬至の1番近くにいる人物。碧に調べさせたところ、戦闘に一度も勝てたことのない、学校始まって以来の問題児だと分かった。

 気に留める必要すらないゴミ、そう思っていた。


(……なぜあいつは、催眠にかかっていないだ?) 


 私の召喚獣に近づけば近づくほど、より強い催眠にかかる。

 ただでさえ数十キロ単位の効果範囲を誇るんだ、今の俺とガキの距離はたかが数十メートル、相当強い催眠魔法が常に侵食しようとしてくるはずだ。


 それこそ、斉藤冬至や皇翔介のような、高い魔法能力を持った人物でなければ、抵抗なぞできないはずだ。


 それなのにだ。


「くらえ、ヒヨコ爆弾!」

『ピヨ!』


 平然と抵抗し、反撃してきている。

 

「あ、キャッチされた」

『……ピ』


 そして、このヒヨコのようなふざけた召喚獣、なにも情報がない。

 情報がないと言うことは、対策が打てないということ。


「……1番の脅威はお前だ」

『ピヨ!』

「死ね」

『ピヨォォ!』


 握り潰そうとした瞬間、姿が消える。

 前を走る少年にに目を向けると、手にヒヨコを握っている。

 瞬間転移術、難易度が高く、消費魔力が大きい技。

それを、すでに何度も使っている。


 やることすべてが想定外。

 早いうちに潰しておかねば、間違いなく後に取り返しがつかないことになる。


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