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第九十八話 神崎家 その6


 

 皇翔介は馬鹿だが、召喚獣は紛れもなく一流。


 皇家での騒動の後、一度手合わせをしたことがあった。

 あいつの召喚獣の結界は、アリスの全ての攻撃魔法を防ぎきった。

 そして、あいつの召喚樹の能力を知った。


 あいつの召喚獣の結界は、文字通り全ての攻撃を防ぐことができる。氷が溶けたら水になるように、この世界の原理として、全ての攻撃手段から防げるように設定されている。それが、あいつの召喚獣の能力。


 アリスの魔法は桁違いだ。だけど、世界の原理には逆らえない。


(馬鹿のくせになんでそんなチートみたいな性能の召喚獣使役してるんだよ、あの馬鹿は!)


「君じゃ私には勝てないよ、賢い斎藤冬至君には分かってるんじゃないかい?」

『ミドリガメ〜』

「なんなんだよその鳴き声! 気が抜けるんだよ、ちょっと黙ってろ今お前を倒す方法考えているんだから!」





 冬至と皇さんの戦闘を眺めながら、僕は思考を巡らせていた。

 このままだと、どちらかの魔力が尽きるまで決着はつかないだろう


 冬至の召喚獣の攻撃は大きいし、威力も大変なことだけど、皇さんの召喚獣の結界も大きいし、攻撃を全部防ぎ切っている。


 皇家で戦った時のように、に搦手を使わないと、皇さんを倒すのは難しいだろう。


「…………そうか!」


 前みたいに戦えばいいんだ、前戦った時のように、神崎さんを連れてくれば……!


「その必要はないぞ」


 突然後ろから、不穏な声が聞こえた。


「………!」


 瞬時にしゃがみ、地を蹴って距離をとる。


 僕が立っていた場所には、神崎さんのお父さんが立っていた。


 たしか名前は……。


「神崎どうまん?」

「カタコトなのは気になるが、まぁ良しとしよう。目上の人の名前はちゃんと覚えておいた方がいいぞ。」

 

 そしてまた、すぐ背後から気配を感じる。


「これからは俺の足として動いてもらうんだからな」


 振り向くと、僕に覆い被さるようにカタツムリのような召喚獣が構えていた。


 くそっ、避けられない……⁉︎


 ポケットにしまっておいたヒヨコを取り出し、召喚獣に近づける。


『ピヨォォ!!!』

ヒヨコはびっくりしたのか、大声で泣き叫んだ。 


『…………』

そして、召喚獣が一瞬怯んだ隙に、側面から転がるように逃れる。


「ふぅ、助かった」

「君の召喚獣は助かってないのだが……」

 

『ピ、ピヨォ』

カタツムリみたいな召喚獣に覆い被せられ、ベトベトになっている。


「それ、返してもらいますね」


 瞬間転移術を使い、僕の手のひらにヒヨコを移動させる。

 

 ……思ったより粘液でベトベトしてるな。


「……君、本当にその召喚獣の召喚士なのか?」

『………』


 道満さんとその召喚獣が哀れみの目を向けてくる。


 だって仕方ないじゃないか、ベトベトを拭くものがないんだから、地面に押し付けて砂ぶっかけてゴロゴロこね回すしかなかったんだ。


「さて、神崎さんの洗脳を解いてもらいましょうか」


「解くわけがないだろう。このままいけば、アリスの魔力は底をつく。そうなれば、俺とロイだけでどうとでもなる」


「交渉決裂ですね、そういうことだったら……」


 砂まみれのヒヨコを再度掴み、道満さんに向け投げる。


「逃げます!」

 そして、館に向かって走る!


「はっ……って逃すか! っていうか人の心はないのか君は!」


 一瞬唖然としたあと、すぐに追いかけてくる道満さん、見かけによらず足が速い。


 だけど……


「眩しい! なんだこの光は!」

 

 投げたヒヨコを発光させ、視界を遮る。 


 館の中で彼女を見つける、美味しい所はあの馬鹿に譲ることになるから、ちょっと癪だけれど。今回は譲ってやろう。

 


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