4.豚くさいにゃ
猫耳さんたちの名前が決まらないけど、後でいいや。
思いついたらちゃんと名前を入れます。
街のゲートの前で集合したオレ達4人は、昨日通った道を森へ向かって歩きだした。森まで行くのはオレ1人で、3人は暇つぶしで途中まで付いてくるだけだ。
今日の装備は、
ロンセルが、大剣と槍とナイフ
ザックは、弓と短剣
アドルは、弓と短剣と杖
オレ、杖と鉈とナイフ
やっぱり、朝は同じような時間に出かける人が多いんだな。
50mくらい前を冒険者5人組が同じ方角へ向かっている。さらに先には荷馬車も見える。
後ろにも3人組の冒険者がいる。魔法使い、斧使い、弓使いか。3人とも猫耳だ。オレもあっちに入りたい。
ロンセルが妙なところで残念がる。
「エド、斧を売ってしまってよかったのか?せっかく世にも珍しい、魔法使いの斧使いだったのに」
「問題ない。まだ鉈がある。それに、『魔法使い斧使い』になろうと思ってたわけじゃないぞ。よさそうな武器なら何でも使うさ」
猫耳3人組は足が速いな。もうすぐ追い抜かれそうだ。
マップ上で3人を示す点を見ていると、その中の一人がオレの後ろにすすす~っと接近してきた。振り向くと弓使い猫だった。そいつはオレの間近で鼻をスンスンすると、長い尻尾を軽く一振りしてから、面と向かって言い放った。
「豚くさいにゃ」
「うえ?ヒドイ」
女の子に臭いなんて言われたらダメージがでかい。しかも豚ってひどすぎる。
アドル、ザック、ロンセルの3人も、はあっ?って顔してその猫を見ている。
そしてザックが、
「突然何言ってんだ?失礼な猫だな。このお方はな、オレの命の恩人なんだぞ」
猫は構わずに続けて言った。
「兄さん、雌豚くさいにゃ。ゴブリンもオークも逃げ出すヤバい臭いだにゃ。もしかしてブラックボアと戦ったかにゃ?」
あ~、昨日の夜、猪を調べたせいか。猫耳さんの鼻なら分かるんだな。みんなオレを見ているぞ。さて困った、どう答えたものか。
「なんというか、やむを得ずだな..。逃げられなくて..」
「そうだったんにゃ。ザックなんかのために命を張るなんて、命の無駄遣いだにゃ」
「いや、そうじゃなくて..」
「なんだと?クソ猫。お前なんて猫くさいじゃねーか」
「うぷぷ。うち、知ってるにゃ。ザックは昨日、ウサギにもざっくりやられたにゃ。おまけにアマンダが怖くて逃げ出したにゃ」
「なっ、アマンダめ、しゃべりやがったか」
「ウサギにザック、ザック、ざっくりやられるような雑魚なんて助けるだけ無駄だにゃ」
杖持ちの魔法使い猫も、ぷぷっと笑って一言。
「ざっくりザック」
大斧を背負った猫も笑い出した。豪胆そうな姐さんだ。猫と言うより、ライオンや豹のイメージが合ってる。
大きくない街だから冒険者同士、顔見知りなんだな。
ぐだぐだになったおかけで、ブラックボアの話はいったんうやむやになった。
ザックは今後、酒場やギルドで他の冒険者達からいじられることが確定しているので、げんなりしている。気の毒だが、「ざっくりザック」は言いやすいだけに定着しかねない。
早くこの杖で試し撃ちをしたい。アドルも杖を持ってはいるが、初めて買ってからずっと使い続けている安物らしい。彼も興味ありありの目でオレの杖を見ていたので、試し撃ちではちょっと貸してあげることになっている。
街を出て10分くらいで、オレの脳内マップ上に青い点が増えた。道から外れているので動物だろう。
ザックは両手に弓と矢を持って、いつでも引ける体勢だ。
斜め後ろにいた青い点が赤に変わった。振り向くと、ちょうど草むらから茶色いウサギが出てきた。そいつはオレと目が合うとすぐに引っ込んでしまった。
なるほど、聞いた通りだ。それにでかい。小学校で飼ってたウサギの3倍は体重がありそうだ。
引っ込んだウサギを示す光点は青になった。道から離れてしまって戻ってくる様子はない。慎重なやつらしい。
さらに街から離れるにつれて動物と思われる青い点がぽつぽつ増えてきた。これ全部ウサギだろうか?
「エドっち、さっきから遠い目をしてどうしたにゃ?」
同じ方角なので猫耳3人組も一緒に歩いている。彼女ら全員、主武器以外にお揃いの短剣を装備している。形は剣じゃなく大型ナイフと言うべきか。ちなみに、魔法使い猫は帽子はかぶっていない。耳を隠したくないのかな。
「ウサギみたいな臭いを感じた気がした(ウソ)。この草原には角ウサギが多いんだよな?」
「う~ん、この辺はまだそれほど多くないにゃ。でも草原でウサギの臭いがするのは当たり前だにゃ」
「なるほど。でも襲われることはあるよな」
「心配いらんにゃ。後ろからでも音で分かるにゃ。分からないのはザックだけにゃ」
まだ煽るか。ザックもいちいち反応している。煽られ耐性が無いやつだな。
もうそろそろ中間地点だ。やはり街から扉まで4時間ちょっとだな。
この辺まで来るとそれなりに大きい木が50m間隔、あるいは100m間隔とまばらながらも、それなりの本数生えている。岩が露出した丘があったり、背の高い草が生えて、草原と言うより藪になっている割合も多い。
道幅も馬車同士がすれ違うにはちょっと足りないくらいに狭い。片方が横の草むらに突っ込めばいいのだろうが。
アドルが、右に見える丘を指さして言った。
「エドよ、あの登りの途中に生えているでかい木は、オレが通りがけに試し撃ちの的にしている木だ。燃えにくい木だからファイヤーボールを撃っても大丈夫だぞ」
銀杏かな?黒い焦げ跡が何個かついている。しかし、オレのファイヤーボールを撃っても大丈夫だろうか?テルミットのような発熱具合からして、生木でもかなり抉れると思う。
「それじゃアドルが先にこの杖で撃ってみるか。普段との比較ができてちょうどいいだろ」
「よし。では先にやらせてもらおう」
アドルは右手、右足を前に杖を構えた。様になっていてカッコイイ。そのまま一呼吸分集中すると、たったの一言で魔法が発動した。
「ファイヤーボール!」
20メートルくらい離れた木まで火の玉が飛んで、命中するとバシュウッと激しく発光して熱を出す。炎が上がったがすぐに消えてしまった。確かに燃えにくい木のようだ。ソフトボール大の穴の中には炭火が残って煙が出ている。
「早いな。そんな一瞬で発動するのか」
素直に感想を口にすると、オレの反応にアドルはニヤリとした。
「期待通りこの杖は強力だな。あきらかに威力が高かった。エド、いい買い物をしたと思うぞ。さあ、おまえの番だ」
オレのファイヤボールだと木に大ダメージが入る可能性が高い。ここはストーンがいいな。意味があるかは分からないが、アドルの真似をして杖を構える。脳内メニューで魔法を選択して、ターゲットを見ながら声には出さずに「発射」。口が勝手に動き、自分でも何言ってるのか分からない呪文を詠唱開始。
「’&%##&()(’&&$”{‘@」
約4秒間後にストーンバレットが発動した。
右手で構えた杖の前から、数個の握りこぶし大の石が飛んだ。石の集団は木の幹に命中すると、ダカ、ダカ、ダカッ!と打撃音を響かせて跳ねかえる。木の皮が激しく飛び散り、白い部分が露出してけっこう抉れてしまった。
「おお~~~っ!」
「「「すげ~....(にゃ)」」」
皆が驚いた顔でしばらく命中点を凝視していた。
「おまっ、すげーんだな」
「やるな~」
アドルと、魔法使い猫は呪文が違うところに突っ込んできた。
「「今の呪文はなんだ(なに)!!?」」
ああ、どう説明しよう。自分でも分からんのに。こっちこそ、どうやったらアドルみたいに魔法が一言で発動するのか教えてもらいたい。
背後に赤い点が3つ出た。近い。試し撃ちしてる間に接近されたか。さっきまで青ばかりだったから気にしてなかった。
そいつらはダッシュして縦一列になった。斜め後ろを振り返ると草むらから飛び出してきたのは黒い角ウサギだった。たしかに、角が人差し指くらいある。それなりの怪我になるわけだ。
黒い3連のストリームがザックに突っ込む。すごい跳躍だ。
ザックはまだ気づかないどころか、オレの挙動に怪訝そうな顔をしている。今のオレにはこの一瞬で彼を助ける手段がない。
「ザック、うしろ!!!」
内心(あ~、やっぱりフラグだったよ)とあきらめたが、3匹は一瞬で撃墜された。
先頭のウサギには矢が刺さり、2匹目はナイフで首を深く切られ、3匹目は斧の柄で叩き落された。
猫耳3人組の1人、大斧の姐さんがウサギをシメながら、勝ち誇ったような上から目線で、ニヤニヤしながら言う。
「ざあっくぅーー、危なかったねえ~。あたい達がいなかったら、あんた死んでたんじゃなーい?」
血の滴るウサギを逆さにぶら下げて、ザックの顔の前に掲げる。
他の猫耳2人も同じようにニヤニヤで、逆さにしたウサギを見せつける。
ようやく状況を理解したザックは情けない顔であうあうしている。
あ~あ、ザックご愁傷さま。こりゃタカられるな。
猫耳3人組はすぐに真顔になって耳をピクピクさせ始めた。
「風下から来るにゃ」
オレのマップに赤い点は出ていない。3人の視線の先を見ても草の背が高くて見通しがきかない。
大斧姐さんもすごく警戒している。
「でかいぞ..」
3人ともウサギを草むらの中にまとめて置いた。
全員が同じ方向を見て武器を構える。
オレも杖を構えて、頭の中で行動パターンをイメージする。一発ぶちこんだら杖を収納して木割り斧を構える。虚空から出すことになるが、どう説明するかは後で考える。
大斧姐さんが指揮を取り始めた。
「あの木の傍まで移動するぞ。走るなよ。見えたら、魔法と弓を放て」
全員でさっきターゲットにした木の傍まで歩いて移動する。
脳内マップに赤い点が現れた。距離は40m弱ってところか。
藪だと森の中より索敵範囲が狭いな。何かがゆっくり接近してくる。
オレ達は木の横に陣取った。視線が目の前の草より高くなったおかげで、草を倒して進む黒い背中が見えた。
少し前を狙ってストーンバレットを撃ちこんだ。
ドコココッ!と鈍い命中音が響いた直後に巨体が飛び出した。
森で倒したやつよりでかい!
「ブゴーッ!!」
「やっぱりにゃー!!」
「なんてこったい!!」
「げっ、ブラックボアかよ」
重低音の雄叫びを上げて大猪が跳ねた。が、着地すると横にふらついた。打撃がけっこう効いているらしい。それでも大猪はこちらを向き、体勢を立て直すと突進を開始した。
アドルがファイヤーボールを放ち、続けて弓も射る。
魔法猫も一言、「ストーンバレット!」で魔法を発動させた。
ザックと弓猫が弓を射る。
数個の石が頭に命中して弾かれる。ちょっと音が軽いが、それなりにいい打撃音が響く。効果アリだ。少しふらつかせた。
アドルの火の玉が頭に命中した。激しく発光して皮と肉を焼く。
さっき見たのより弱くね?杖の性能差を考慮しても弱く見える。
矢も刺さるがあんまり効果は無さそうだ。
大斧と大剣使いの2人が盾になるように二歩前に出た。遠隔組は射線を遮られないように左右にずれる。オレは左翼、魔法猫は右翼だ。
盾役2人の背後には大木がある。
作戦を理解した(と思った)オレはもう一発、横から首を狙ってウインドカッターを撃つことにした。
接近する猪に両翼から連続で放たれる矢が突き刺さる。
右翼の魔法猫が放ったストーンバレットが側頭部を叩く。目がつぶれたかも。ふらついてあきらかに勢いが落ちた。登りになってさらに突進が遅くなる。
10数メートルまで接近されたところで気が付いた。進路を曲げてオレに向かってるぞ。
話が違う!!
えい、くそ!ウインドカッター詠唱開始。
オレは下がりながら詠唱する。
盾役2人はすぐ位置を変えてカバーしてくれた。
すでに敵の頭は血だらけで陥没もある。目もよく見えていないだろう。盾役2人は、ぬるい突進をかわして左右から同時に、猪の頭に大斧と大剣を叩き込んだ。骨が割れたか。鈍いながらも硬いものを叩く音が聞こえた。
縦向きで放ったウインドカッターが、至近距離で顔の真ん中に命中した。バシューッ!っと音をたてて、豚鼻の先っちょから頭の上半分を切り裂いていく。派手に血しぶきが吹き上がる。オレは2歩、3歩と下がって尻もちをつき、ヘタり込んでしまった。
鼻の頭がオレを押し倒してずんっと乗り、牙がオレの顔をこすった。
オレ死んだ。
数秒ほど切り裂かれた鼻の頭を呆然と見ていた。あれ、こいつ、動かないぞ。上を見ると頭がぱっくり割れて血が流れていた。
沈黙の後、誰かが歓声を上げる。
「やったのか..」とつぶやいている奴もいる。
「オスだにゃ。きっと、雌豚のいいにおいがするエドっちに一目ぼれだったにゃ。最後はエドっちを押し倒して、思いを果たせたにゃ」
があ~、そういうことかよ。なんて言うんだ、こういうの?
自業自得、はちょっと違うな。
ロンセルがご丁寧に解説してくれる。
「ブラックボアは行動範囲が広くてな、特に雄は雌を探して徘徊するんだ。道沿いなら遭遇しないだろうとは言ったが、大丈夫だとは言ってない」
さいですか。街の外に安全地帯は無いってことね。
斧姐さんが嬉しそうに言いながら、大好物の餌を目の前にした猫のような顔になっている。今倒した猪は、森の中で倒したやつより一回りでかい。
「こんな大物は初めてだよ。こいつは美味いぞ。普通ならあたしらが勝てる相手じゃない。エドが一番槍を入れて、トドメも刺した。餌役もエドだ。一番うまいところを食う権利がある」
よだれをじゅるっとかして、あんたが一番食いたそうな顔してるよ。
「...わかったから、早く助けてくれ。こいつ重い。中身が出る。生ぬるい血が気持ち悪い」
斧姐さんとロンセルが左右から牙をつかんで頭を持ち上げてくれた。ザックとアドルがオレを後ろへ引きずり出してくれる。勝ててうれしいが、まさかオレに付いた臭いが引きよせたとは。もし1人だったら今度こそ死んでたな..。だが、今の戦闘で勝ち筋も見えた。もし次があれば多少はましに戦えるかもしれない。
「みんなありがとう。結局のところオレが皆に助けられたわけだよな。みんなを巻き込んでしまって悪いと思ってる」
「なに辛気臭いこと言ってんだ。こんな大物を仕留めたんだから喜べ」
みんな口々に似たようなことを言う。単純に、大物を仕留めたことが嬉しいようだ。ここで日本人的感覚で悪びれても浮きそうだ。
気を取り直したオレにはやることがある。
手の震えがまだ収まらないが、オレは忘れずに自分が放った魔法のダメージを確認する。他の6人が興味津々の見物人と化しているので、オレは見たままを声に出す。
「ストーンバレットが命中して頭蓋骨が陥没したり、ヒビが入っていたんだな。飛び跳ねてからふらつくわけだ」
「その後のストーンバレット2発も、すでにヒビ割れた頭には相当痛かっただろうな」
「ファイヤーボールは、丸く皮と肉を焼いて骨まで届いているが、そこで止まったか」
矢はほぼ効果なしか。この巨体には針みたいなもんだ。
「左右から叩き込まれた大斧と大剣が目の下の骨に深い切れ込みを作ってるな。これがなかったらオレは牙で突き上げられていたかもしれん」
「最後に縦向きで命中したウインドカッターがトドメを刺したか。脳天を前から後ろへ半分以上切り裂いている。高い方の杖を買ってきてよかったぜ」
斧姐さんが言った。
「だから凶化しなかったんだな。最初に思いっきり頭をぶん殴られてフラフラだったうえに、追加で2発だからな。正直、何人かは死ぬと思っていた」
凶化ってバーサクか。そりゃ、ちまちま削るやり方じゃ死人が出る。
ここにいるのはオレ以外の全員がDランクで、ブラックボアは本来、Cランク上位のパーティでも死人を出しながら倒せるかどうかといったところらしい。
ダメージは頭に集中していて、胴体にはほぼ損傷がない。毛皮と肉がきれいなので高く売れると皆喜んでいる。
斧姐さんに褒められた。
「エド、見た目に寄らず根性あるな。目前に迫られても集中を乱さずに詠唱できるなんて、信じられない胆力だ。普通なら運よく発動させたとしても、相当威力が落ちてるはずだ」
ごめん、そこはチートです。自動詠唱してる、とは教えないけど。
アドルはやはりオレの呪文が気になるらしい。
「エドの魔法はすごい威力だな。そのよく分からん呪文は、まさか古代魔法か?」
魔法猫もやはり気になるらしい。
「わたしもそんな呪文は知らない。魔法使い同士、あなたと、わたしは友達になるべき」
言ってることが飛躍したぞ。嬉しいけど。
「しかし、この馬鹿でかいのをどうするかね?こんなの運べないぞ」
「これなあ、ここで解体するか?痛む前に全部運ぶのは無理だぞ。すぐ獣が寄ってくるし」
こりゃもう仕方ないか。オレは観念した。こいつらは戦友だ。オレはこいつら全員を気に入ったから、アイテムボックス持ちであることや、昨日も森の中で猪を倒したことを教えることにした。
こういうのも、つり橋効果と言うのだろうか。戦闘直後に重要な判断はしない方がいいのかもな。まあいいか。
秘密を明かして、さらに皆を驚かせた後、一息ついてどうするか決まった。まだ午前中で時間には余裕がある。オレ達7人はギルドへ戻って猪を換金することにした。オレが倒した雌が金貨60枚、今倒した雄は80枚くらいだろうと皆が予想している。
オレが運ぶので、ギルド職員にもオレが大容量アイテムボックス持ちであることを見せることになる。
こういった秘密にしておきたい能力や戦闘手段がギルド職員から漏れる心配はしなくてもいいらしい。昔はその辺がザルで、情報が漏れて損害を被った冒険者が、その特殊能力を使って報復に出たこともあるとか。それに懲りて今ではギルドメンバーの秘密保持が徹底されている。
ブラックボアが入るほどのアイテムボックスは確かに珍しいが、マジックバッグも存在しているので、アイテムボックス持ちというだけで珍獣扱いされるほどではないそうだ。
思わぬ大金が入るので、猫耳3人組は仕事を1日延期。
こっちの男たち3人組は、もともと今日は休みにしている。
オレは予定通り今日中に出かけるので、その前にみんなで飲み食いしようということになった。
また森へ向かう前に、「豚の臭いは落とした方がいいにゃ」と言われた。オレは宿の井戸を借りて石鹸とシャンプーで念入りに体を洗った。
「エドっち、いいにおいがするにゃ。なんでにゃ?」
「うん、いいにおい。エド、まだ何か隠し持ってる。わたしと、あなたの間で隠し事はよくない」
「この頭のにおいはいいな。あたしにも分けてくれよ」
石鹸とシャンプーのことも教えて、分けてあげた。オレの秘密が芋づる式だ。いずれは出すつもりだったが、もっと慎重にやりたかった。後で追加してやる代わりに、プラスチック容器は回収する。
「エド、気が向いたらあたしらのパーティにも参加してくれよ」
こうしてオレは猫耳天国を手に入れ、オレの楽しい冒険者生活が始まった。
オレの冒険はこれからだ!!
ウソです。ちゃんと続きます。
次回は、懐かしい日本への帰還。