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漂流軍艦  作者: 青葉 加古
19/19

出撃

新規投稿です。宜しくお願い致します。

(何故、何故に私が!)


 教皇庁からの指令電文のメモをグシャグシャにして、床へ叩きつけたファビアン軍医少佐の両肩は興奮で激しく上下していた。


 ファビアンはモロシカ島の古城から病院船『ゲオルギーネ』に戻るや、すぐさまベルフォルトの任務失敗を教皇宛てに報告していた。


 もちろん、全ての責任をベルフォルトに押しつけた内容でだ。そしてチャッカリと、今後の指揮を任せて欲しいとも願い出ていた。


 希望は必ず叶う。そんな自信がファビアンには十分にあった。これまでの経験上、彼に対する教皇からの信頼は厚い。そのこともあって、ファビアンはなんの憂いを感じることもなく返事を待っていたものだ。


 ところがだ。教皇庁からの返事は、モロシカ島からの部隊撤収。つまりファビアンはベルフォルト同様、召還命令をくらったのである。


 十中八九、『古代人の女』捜索の指揮を任されると思っていたファビアンは、かなり動揺していた。教皇の寵愛のお陰で、これまでは我が世の春を謳歌していたのだから当然だろう。初めて味わう焦燥感に、ファビアンは身体を震わせた。


「わかったぞ。あやつらめ、私がいない間に教皇様に色々と吹き込んだか……」


 ファビアンの顔が歪んだ。あやつらとは、教皇の取り巻き達のことだ。思い当たる側近達の顔を、あいつめ、きっとこいつもだな、と思い出して歯ぎしりするファビアンだったが、もう後の祭りだった。


「もう少し強めの滋養剤を教皇様に出すべきでしたね……」


 滋養剤はファビアンが自ら処方した薬であった。滋養剤だから、もちろん体によさそうなものだが、教皇庁内の一部の人からは催眠剤だと噂になっていた代物でもあった。


(ここで終るわけにはいかないのですが……)


 ファビアンは帝都に戻った後の自身への処遇を想像したとたん、吐き気を模様した。


(ただで済むはずがない。吊し上げにあったあげく、矯正収容所送りなんてまっぴらだ!)


 恐怖で青ざめるファビアンだったが、次には苦痛で顔をしかめていた。白衣の上からも分かるほど、両腕の筋肉が盛り上がって波打っている。痛みの原因はそれであった。


 慌ててファビアンは胸ポケットに忍ばせていた錠剤を手にすると、それを口内へ放り込んだ。そして時間がないとばかりにデスクにあった水差しを乱暴に掴むと、そのまま一気に水をガブガブと飲み干した。


「想像してた以上ですねこの痛みは!」


 両腕を自らの手で押さえ、激痛に耐えるファビアンだ。


「やはり錠剤は効きめが遅いですね。次はシロップタイプにしましょう!」


 目が飛び出るのではないかと思うほどの痛みで、思わず叫ぶファビアンだった。すると両腕の激痛が急に緩和された。薬が効いたのであろう。波打っていた筋肉の動きも止まって、床に片ひざをつくファビアンだ。


「軍医少佐、どうされました!?」


 ファビアンの叫び声を聞きつけて、教皇庁武装警護隊員の伍長が慌てて軍医室へ入ってきた。


「大丈夫でありますか?」


 すっかり憔悴し、青白い顔に脂汗を浮かべているファビアンを心配した武装警護隊員が声を掛けると、ファビアンはいつもの笑みを力なく浮かべて見せた。


「これしきの事、なんでもありません」


 気丈に振る舞ってはいるが、なんとも弱々しい声である。無理をしているのは明らかだった。


「で、ですが……」


「伍長、それより肩をかしてくれませんか?」


「はっ、はい。了解であります」


 伍長の肩をかりて、フラフラと立ち上がったファビアンが気力を振り絞って言った。


「それから、すぐにシュトルヒの発艦準備を。モロシカ島へ向かわねばならない急用があるのでね」




     *




『あっ、二人を乗せた二台の車が出てきました! これから艦隊司令部へ向かうものと思われます。これでプラージュ市民を恐怖に落とし入れた立て籠り事件は……』


「もういい。消してくれ」


 ベルフォルトの指示でフェイがラジオの電源を切った。


 コリーヌと瓜二つのレスティスを、『古代人の女』だと思い込んでしまったベルフォルト。


 そのお陰で彼は超常の力の復活を仕損じて、石碑のある古城から第69独立任務部隊の駐屯地へ引き上げていた。そこで、リスティッヒ参謀とフェイを交え今後の善後策を練っていたものだ。


 その最中に飛び込んできたのが、通信班からもたらされたプラージュの立て籠り事件である。


 こんなときに余計な報告であると、通信兵を叱責したリスティッヒだったが、ベルフォルトがそれを制した。


「言ったはずだ、その件は私の野次馬根性だとね。さあ、ついでに一息つこう」


 こうして、ベルフォルトの計らいでこの場は収まった。そして、ほんの休憩のつもりでラジオをつけたのがベルフォルトに幸いしたのである。


 ジャコブのダミ声だった。看板娘をコリーヌ・メディウムと話しているではないか。もう善後策どころではなくなった。それからベルフォルト達が、熱心に事件の顛末までを聴き遂げたことはいうまでもない。


「聴いてのとおりだ。これでコリーヌ・メディウムの居場所は突き止めた。足の長いウンゲテュームを使って、プラージュのリブル海軍第4艦隊司令部、ここを襲う」


「ですが中佐、彼女は本当にコリーヌ・メディウムなんでしょうか?」


 レスティスの件がある。不安げな表情のフェイに、ベルフォルトが笑みを向けた。


「それは正直わからん」


「判らないのに敵の拠点へ出撃されるおつもりなんですか? 危険を犯してまであんな遠い所へ?」


「そうだ。いいかよく聞いてくれ二人とも」


 厳しい顔つきになったベルフォルトに、フェイとリスティッヒの表情も引き締まる。


「今の我々は、藁にもすがりたい状況にあることぐらい十分に知っているな。だから危険は承知の上、私はこの情報に懸けてみようと思う」


 これでベルフォルトが並々ならぬ決意であることは、リスティッヒ、フェイともに十分理解できた。それは、ファビアンの非情な行為にあった。召還を前に、ベルフォルトは行動を起こそうとしている。それも起死回生の。二人はそう悟ったものだ。


 すぐに反応したのはリスティッヒだった。


「中佐の決断に賛成であります。ただ、困ったことがありまして」


「なんだ、言ってみろ」


 丸メガネをずりあげたリスティッヒの顔つきは、真剣そのものだった。


「ファビアンの援助が期待できない事です」


「キメラ兵のことか?」


 そうだと深く頷くリスティッヒである。


 『綾瀬』襲撃の際、予想外の反撃に思わぬ被害を被って、ベルフォルトが保有するキメラ兵の多くは傷が治癒するのを待っている状態であった。なので、ファビアンの病院船『ゲオルギーネ』に居るキメラ兵を使いたいところなのだが、現状からしてそうはいかない。


「ならば通常兵力で対応するまでだ」



「ですが、今あるウンゲテューム2機で運べる兵員は、重火器や戦闘車両なしで合わせて最大二百。仮にも敵の根拠地へ乗り込むのであれば兵力の上でかなり不利かと」


「では、選りすぐった精鋭を選抜してくれ。それに我らにはバルドゥールがいる。彼が居れば兵力差も何とかなると思うが」


「そうかもしれません。しかし、万が一失敗すれば我々にはもう後がありませんぞ」


「……」


 リスティッヒの言葉に、ベルフォルトが押し黙る。確かにヤケクソで、敵地に乗り込むわけではない。ここは、微かな希望の光を求めて何がなんでもコリーヌを確保しなければならないのだ。それも迅速に、絶対にである。慎重になるのは今は当然だった。失敗はベルフォルトの完全な挫折を意味するから、リスティッヒの言葉は重かった。


 だが、ベルフォルトに焦りの色は未だなかった。彼は窓辺に歩を進めた。外はすっかり夜のとばりが降りている。夜風にあたろうと思ったか、ベルフォルトが窓を開けた。


 するとどうだ、幾つかの探照灯のビームが夜空に向かって照射され何かを探し始めた。程なくして、遠くから飛行機とは違う独特の機械音が聞こえてきた。異変を察知して、ベルフォルトの左右にリスティッヒとフェイが並んだときだった。


 すうっと、上空から四枚のローターを回した機体が眼下を掠めて舞い降りてきた。


「H7シュトルヒだわ!」 


 フェイの声にリスティッヒがすぐに反応した。 

「さてはファビアンかっ、あやつ!」


 ベルフォルトは何も言わず、冷たい視線で着陸したH7シュトルヒを眺めていたが、何ごとかを決意してリスティッヒとフェイに秘め事を小声で言い含めた。


「本当に宜しいので?」

 リスティッヒの声色からして、当惑しているのは明らかだったがフェイは違った。それは腹の座った声だったからだ。


「私は賛成です。参謀、貴方も男なら腹をくくりましょう。収容所送りになりたくなければ」


「収容所……」


 リスティッヒは石碑の前でファビアンに啖呵を切ったことを思い出していた。そして覚悟を決めてメガネをずりあげベルフォルトに向かって宣言した。


「わかりました、やりましょう。このリスティッヒ、何処までも中佐に付き従います」




     *  




 双子の月、双月からの淡い光が、プラージュ湾を静かに進む特務実験艦『綾瀬』を優しく照らしていた。


「減速! 湾内は輸送船だらけだぞ。操舵手、慎重に進めよ間違っても当てるな!」


 暗い『綾瀬』艦橋内に山下重蔵艦長の檄が飛ぶ。


 『綾瀬』は道案内の為にブノアが差し向けた、リブル海軍駆逐艦『ヴァーグ』を先頭に湾内へと進入。軍港地区へと舳先を向けていた。『綾瀬』の舷側では、甲板に出ることを許された『エルシー』の乗員が、鈴なりになって歓喜の声をあげている。


「やれやれ、ようやく着いたな。見てくれは暗くてよくわからんが、大して我々の世界となんら変わらないようじゃないか。なあ副長?」


 双眼鏡でプラージュの夜景を遠望して、山下が感想を言うと傍らの伊東が相づちをうつ。


「そのようですなぁ。しかし、やはり根拠地だけあって規模は結構大きいようですね」


 伊東は軍港地区に双眼鏡を向けていた。林立するクレーンは艦船の建造や修理を行うドックだろうか。蒲鉾型の兵舎らしき建物や、アンテナ塔を備えた箱形の庁舎が拓けた土地に点在している。そしてその背後にある波うつ小高い丘の黒いシルエット。恐らくここには要塞砲に高角砲、機銃群があるはずだ。


「規模は確かにデカイが、二号機からの報告通り一隻も大型艦らしきフネはなさそうだな。なんとも寂しい限りではあるが、我々には好都合だ」


 プラージュの夜景から、伊東と同じく軍港地区へ双眼鏡を向けた山下が安堵した声で言った


 交戦した相手の根拠地に、『綾瀬』は今単艦で乗り込んでいる。交渉が成功したとはいえ、山下の心中は心穏やかではなかったからだ。



 ゆっくりとした速力だったが、ようやく軍港地区にさしかかったのであろうか。幾つもの探照灯から放たれている眩い光の帯が、『ヴァーグ』を追う『綾瀬』の白い艦体を捉えはじめた。


「警戒は怠るな! 各砲座、いつでも咄嗟砲戦の体制でいろ!」


 山下の命令で艦内に緊張がはしる。『綾瀬』に いよいよ接岸の時が近づいていた。




     *




 ベルフォルトの居室へ入室してきたのは、リスティッヒの言ったとおりファビアンであった。この招かざる客の来訪に、異様な空気が部屋を包んでいた。


「ファビアン軍医、貴様何しにここへ? ははあーん、さては正式に召還命令を伝えにきたか! 願ったり叶ったりで何よりなことだなあ」


 超常の力復活の任務に失敗するや、責任を負わされたくないが為にベルフォルトの元を去っていたファビアンだ。今朝がたの出来事もあって、リスティッヒの口調はかなり厳しい。


「流石は参謀。察しの通り。ベルフォルト中佐、貴官に対し教皇庁から帰還命令が下されましたよ」


 淡々と告げたファビアンに、ベルフォルトが不適な笑みを浮かべた。


「それは悲報だな……。やむを得ん」


 ベルフォルトの目配せを合図に、リスティッヒとフェイが銃を抜き、銃口をファビアンに向けた。


「これはこれは……。中佐、何の真似事で?」


 この状況下、下手をすれば命を落とすやもしれないのに、ファビアンはいつもの笑顔を保っていた。これには少しだけ、ベルフォルトも感心した。


「大人しく帝都には戻る積もりはないってことさ。君には大人しくしてもらう。その前に、『ゲオルギーネ』へ連絡してくれ。このベルフォルトにキメラ兵をよこせとね」


「キメラ兵を?」


「そうだ! ぐずぐずしないでもらうぞ。早く出発しないとならないんだからな、こっちは!」


 リスティッヒの怒鳴り声に、ファビアンが首をかしげた。


「さっぱり解りませんね。キメラ兵と逃亡のおつもりで?」


「違う。ただ、少し当てがあってな。キメラ兵はそれに使うつもりだ」


「当てが?」


 ベルフォルトの言葉に、ファビアンの目の色が変わった。


「もしや『古代人の女』が?」


「その通りだ。プラージュのリブル共和国海軍部隊が確保したようでね。移送されたらやっかいだ。なので急いでいる」


「なんと素晴らしい。奇跡が起きましたね中佐。それならば銃をしまうよう、この二人に言って下さい。そうすれば喜んで協力しようではないですか!」


 満面に喜色を浮かべるファビアンに、リスティッヒが毒を吐いた。


「なにぃ? 協力しようではないですかだと? よくもぬけぬけとその様なセリフを言えたものだな!」


 丸メガネをずりあげ、ファビアンを睨み付けるリスティッヒだ。保身のことしか頭にないはずのファビアンである。こうして臆面もなく、何事もなかったかのように振る舞おうとする姿に怒りを覚えて、今にも引き金を引きそうな雰囲気だ。



「中佐、この方をなんとかしてもらいたいものです。今後もキメラ兵を使いたいのであればですがね」


 ファビアンの動じない語りかけに、ベルフォルトが鼻で笑った。


「今朝の件もあるから仕方がないないさ。それよりいいのかファビアン? 教皇庁の命令は絶対なのだぞ。我々に協力すると言ったが本心かな?」


 核心をつかれて、ファビアンの表情がここで初めて曇った。


「ええ、本心ですとも。実は私にも召還命令が下ってましてね。本来ならば、このままおめおめと帝都に戻るわけはいかないのですよ」


「ほぉう意外だな、君にも召還命令が?」


 大げさに驚いて見せたベルフォルトだった。そしてこう告げた。


「しかしそれは朗報じゃないか。教皇庁にも、まだましな人物がいたと見える」


 ベルフォルトの厭味にフェイがくすりと笑った。


「本当にね。石碑で中佐が予言した通りになってよかったわ」


 そのとおりだとリスティッヒが同調する。


「悪が栄えた例しなしだ。自業自得だな軍医少佐」


 フェイにリスティッヒからも憎まれ口をたたかれて、屈辱に耐えているのであろう。ファビアンが何とも言いがたい表情で唇を噛みしめ震えている。いかにも身の置き所がない、といった様子だ。


 白眼視に晒されて、しばらく放置されていたファビアンだったが、これでガス抜きの頃合いよしと踏んだベルフォルトが、ようやく口を開いた。


「教皇庁の命令を無視したとしても、超常の力を復活さえすれば、それは不問になるはずだ。軍医、さっき君は協力すると言ったが、あえてもう一度訊く。我々に間違いなく協力してくれるんだな?」


 ベルフォルトの鋭い視線がファビアンを貫いた。その真剣な眼差しは殺気を帯びている。ファビアンは静かに重い声で答えた。


「貴方と私は一蓮托生。ええ、もちろんですとも。全力で協力しましょう。そのかわり、必ずや任務全うしてください」


「ああ、任せてくれたまえ。必ずやコリーヌ嬢を連れて戻ってくるさ」


 ベルフォルト達の憂いが消えた瞬間だった。これで全力で出撃が出来るというものだ。それから小一時間後、ベルフォルトは機上の人になっていた。


「しかし、解せませんなあ?」


「何がだ、リスティッヒ?」


 巨大飛行艇ウンゲテュームの暗い機内で首をかしげるリスティッヒに、ベルフォルトが尋ねた。


「リブルは、我々の極秘任務の対象者を知っているはず。それを管制も敷かず放送を垂れ流しますかね?」


「なんだそんなことか。もう賽は投げられたんだ。つまらん詮索はしないほうがいい。だがな……、知ってて放送したのであれば、相当なお馬鹿さんだ」


 ベルフォルトの呆れた声に、リスティッヒがニンマリと笑って丸メガネをずり上げた。


「まったくですな。これで本物の『古代人の女』だったならば、エーデルセンで勲章を授与致しましょう。そのお馬鹿さんに」


「ハハハ、確かにこれは勲章ものだな。しかも飛びきり金ぴかの」


「ハハハじゃないよ中佐殿、ハハハじゃ」


 不機嫌そうな声の主は、空軍少佐でウンゲテューム機長のラックマンだった。


「ご機嫌斜めだなラックマン。どうだね、陽が昇る前に着けそうかね?」


 ベルフォルトの質問に、操縦輪を握るラックマンが肩をすくめた。


「それだよ、それ。まったく人使いの荒い中佐殿だ。ここからプラージュまで相当な距離ですぜ」

「無理とは言わせん。なにせ、皇帝陛下の空軍なんだからな」


「なに!?」


 目を丸くするラックマンの背後から、畳み掛けるようにしてベルフォルトが言った。


「君なら出来るさ。いいかね、燃料を節約しつつ、速力を上げ、最もな最短距離でプラージュへ急いでくれ。これは命令だラックマン」


 ふざけてるのではない。ベルフォルトの声色で真剣に命令してると悟ったラックマンだ。


「……ったく、ようし、やってやろうじゃないか。これで間に合ったら、俺らにも勲章ぐらい授与してもらいたいねぇ」


「ああ、大事な作戦なんでね。成功した曉には、空軍に勲章の推薦ぐらいはしてやろう。それもラックマン、君だけじゃない。君を含めたクルー達にもな」


「本当か!? ようし、約束だぞ」


 俄然やる気満々になったラックマンだ。それからすぐに航法士や機関士へ、人が変わったかようにして矢継ぎ早に指示を飛ばし始めた。


「よろしいんですか、安請け合いなんかされて?」


 ラックマンの様子に不安を覚えたリスティッヒが、身を乗りだしベルフォルトに小声で尋ねた。


「『古代人の女』が手に入るのならば構わんさ。やる気が出て結構じゃないか。リスティッヒ、この突入必ず成功するぞ」


 ベルフォルトの落ち着き払った静かな声である。

 

 成功するぞの言葉に同調してリスティッヒが深く頷くと、航法士が最短距離を割り出したのであろう、ウンゲテュームが進路を変えたようだ。


 これに習って点滅する飛行灯を頼りに、後続のウンゲテュームも、ラックマン機に続く。


 こうして、本物の『古代人の女』を求めて、二機の空飛ぶ怪物は満天の星空の下、一路プラージュへと急ぐのであった。



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