プロローグ★勇者の宴
魔王を討伐したバンヘルトは国から勇者として功績を称えられるが……。
「フッ……他愛もない。これが聖騎士の力か? アルク・カイン。このオレを馬鹿にした罪は重いぞ」
そう言い紫に微かに銀が混ざった長髪の男性は血を全身に浴びたのか真っ赤である。
この男性はバンヘルト・ティム、二十八歳だ。
バンヘルトは血の滴り落ちる魔剣を頭上に振り上げている。
「ま、待て……分かっておるのか? この先に居る国王ハイム様を亡き者にすれば本当に悪とみなされるのだぞ」
「そんなこと百も承知だ。そもそも既にオレは魔王と云われてるしな。まあ勇者の力を得た魔王ってことになるが」
そうバンヘルトは、あの日この国の王により勇者から魔王にされたのだ。
――時は遡り……運命の日へと――
ここはセルギオットと云う世界。世界の中心から南東に大きな大陸がある。その大陸の名はアメツーメンだ。
この大陸の全域を大帝国アルベガが支配していた。大陸の中心から遥か北にアルベガの城下町。ここにはザマルフェと云う名の城がある。
この城では現在、国王ハイム・A・ザマルフェが勇者であるバンヘルトに魔王ガイモン・R・アークステイを倒した功績を称え勲章を与えていた。
「これで世界は救われた。これも勇者バンヘルトのおかげじゃ……よくやってくれた」
「勿体なきお言葉――……――ありがとうございます」
そう言いバンヘルトは膝をつき一礼をする。その後、立ち上がりハイムを見据えた。
バンヘルトはパレード用の馬車に乗りこんだ。バンヘルトをのせた馬車は、ゆっくりと町中を走らせる。
町の者たちはバンヘルトを称え喜びの歓声をあげていた。
(良かった……十八から二十八までの十年間……幾重の苦難を乗り越えて勇者の証を手に入れた。そして苦戦しながらっだったが魔王を討伐。
これで挫折していたら、この素晴らしい光景をみれなかったんだからな)
そう思いバンヘルトは涙ぐんでいる。
「バンヘルト様は騎士になる夢を諦めて勇者になる道を選ばれた。その強さ故の決断が実りよきことでございます」
「そうだな……アルク。まあ、お前も聖騎士長になれてよかったじゃないか」
それを聞きアルクは微かに笑みを浮かべた。だが本当に笑っているようにはみえない。
城の門前までくる。すると門が――ガガガガー……――っと徐々に開いていった。
完全に開いたことを確認するとバンヘルトをのせた馬車は門をくぐり城の中へと入る。
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城内ではバンヘルトを称え大広間でパーティーが開かれた。そこには各国から皇族たちがバンヘルトをみたさに集まっている。
各国の皇族たちは次々とバンヘルトに挨拶をした。
そんなバンヘルトは丁寧に挨拶を返している。
時間になりパーティーが終わりを迎えバンヘルトは用意された部屋へと向かった。
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ここはバンヘルトのために用意された部屋。
疲れたのかバンヘルトはベッドに腰掛けるなり横たわる。
(慣れない……パーティーのような場所は精神的に疲れる。そういえばパーティーのメンバーは今頃どうしてるんだ?
誘ったのに、そんなガラじゃないと……断られた。オレだけが称えられても意味なんかない。
確かにオレが魔王を倒した。だけど……それは、みんなの協力があったからだ)
そうバンヘルトは虹色キメラと云うSS級パーティーにいた。
そのパーティーの仲間と十年間の月日を共に過ごし魔王を討伐したのだ。
しかし勲章をもらい称えられるのは勇者の証を持ち実際に魔王を倒したバンヘルトだけでいいとパーティーの仲間たちに言われる。
それでもバンヘルトはパーティーの仲間たちと一緒に国王から勲章をもらい国民のみんなに紹介したかったのだ。
色々と考えていると扉のノックされる音がしバンヘルトはベッドから起き上がる。
「いったい誰だ?」
立ち上がり扉の方へと歩き出した。
扉までくるとバンヘルトは覗き穴から外をみる。
扉の向こう側にはアルクが立っていた。
「アルクか?」
「ああ……旅の話とか聞きたいと思ってな」
「もう夜だぞ……今じゃないと駄目か?」
なんでこんな時間にアルクが来たのかと不信に思い警戒する。
「そう言うなよ……昔馴染みじゃないか。それに明日だと忙しい。酒と、つまみをもってきたんだ。一緒に飲みながら話をしないか」
「ハァー……仕方ないか。それに、こうやってお前と飲むのって初めてだしな」
そう言いバンヘルトは扉を開けてアルクを部屋の中に入れる。
部屋の中に入ってきたアルクと一緒にバンヘルトはテーブルのある場所まできた。
テーブルに酒と、つまみを置くとアルクは椅子に腰かける。
それを確認したあとバンヘルトはアルクと向い合せに座った。
その後二人は酒を飲みバンヘルトの冒険話をアルクが質問を交え喜び聞いている。
暫くしてバンヘルトは飲み過ぎたのか眠くなってきていた。
「変だ……酔ったかもしれない。まだ三杯しか飲んでないぞ」
「これだけ飲めば誰だって酔ってしまうと思うんだが」
「いや……オレは酒と薬に……強い……は……ず…………」
そう言いバンヘルトは、バタンと床に倒れる。
「ふぅ~……やっと寝たか。それにしても薬入りの酒を飲んでも中々効かないとはな。化け物じみている」
中腰になりアルクはバンヘルトの着ている物を起こさないように警戒しながら脱がせた。
(フンッ……ザマアないな。国になど帰ってこなければよかったものを……。国王ハイム様は、お前の勇者としての力を恐れている。その力により抹殺されるのではとな)
そう国王ハイムはバンヘルトに勇者としての試練を与える。それはバンヘルトが騎士になることをよしとしなかったからだ。
そう男爵家の出から聖騎士を出したくなかったのである。まあ王の身勝手な行為なのだがな。
だが、バンヘルトは本当に勇者の試練を乗り越えたうえ魔王までも倒してしまった。そんなバンヘルトが自分を殺しにくるのではと恐れたのである。自業自得なのだが。
「さてと……手分けして運び出すか」
扉の方へ行くと通路を覗き込みアルクは、ピーと口笛を吹いた。
それに反応し待機していた三人の男たちが姿を現しアルクの方へ向かい歩いてくる。
男たちがそばまでくるとアルクはバンヘルトの方へ向かった。そのあとを三人の男たちがついてくる。
アルクは念のためにバンヘルトに眠りの魔法をかけた。
「これで起きたら本物の化け物だ」
それはないだろうと思いアルクは苦笑する。
三人の男たちにバンヘルトを魔獣や魔物がいるカラッカゼ大草原へ運べと指示した。
それを聞き三人の男たちはバンヘルトを布で覆い包んで部屋から運び出してカラッカゼ大草原へと向かう。
「これでいい……魔獣や魔物の餌になっていなくなってくれて清々するよ。昔から嫌いだったからな」
そう言い放ちアルクは部屋を出て次のことをするため、とある場所へ向かった。
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……――翌朝になり、ここはカラッカゼ大草原。草むらには、バンヘルトが眠っている。
遥か遠くには多種多様な魔獣や魔物が居て怯えながら円を描くようにバンヘルトから離れていっていた。
「んー……ん?」
朝日が目に入り眩しさのあまりバンヘルトは目覚める。
「ここは何処だ?」
なんでここに居るのか分からず困惑した。
「なんでオレ……パンツだけなんだ?」
酒と薬、眠りの魔法の影響もあり頭がちゃんと目覚めていないようだ。
「確かオレは城に居たはずだ。それなのに……なんでこんな所で寝てる?」
少しずつ頭は回復して来ているが思うようにスッキリしないみたいだ。
その後も自分に何があったのかと思い出そうとしていた。
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