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帝国軍の押し付け戦術2


巨大カマキリ、マンティコア・マンティス。

それはバリアス平原の悪夢と呼ばれる魔物だ。


一発で、剣士百人分の斬撃に相当すると言われる攻撃力。

千本の槍で突かれても剣が突き刺さっても動きを止めぬ耐久力。

そして、巨体ながら、矢の雨が降りそそごうとも、全てを回避して回るという敏捷性。


全てを兼ね備えた無敵の破壊者。

バリアス平原をうろつくゾンビを食らいながら放浪し、気まぐれに軍隊を壊滅させる、戦場の厄介物だ。


「あれは無理だ! 撤退する!」


ゲルヒニスの決断は早かった。

巨大カマキリのいるあたりに雷撃を連射して動きを封じた、つもりだった。


だが巨大カマキリは雷撃を余裕で回避し、ドブリンを蹴散らしながら走る。

その移動速度は、ゲルヒニス達の数倍。


入って来た方の入口に先回りされた。


「マズいですよ、あんなの絶対出られません!」

「クソっ……、他のルートから出られるかもしれない、向こうに行くぞ」


ゲルヒニス達は、巨大カマキリがやって来た方、つまりダンジョンの奥へと逃げ込んでいく。


進んだ先は、毒池だった。

百メートル四方はあるかと思われる広大な部屋の床は全て水面だった。

まがまがしい色の液体が満たされて、毒々しい色彩の花があちこちにさいている。


そんな部屋の真ん中を貫くように伸びる、木でできた桟橋。


「わ、罠では?」


クラトスが怯えたように言う。

ゲルヒニスもそう思った。

だが、他に道がない。


「ディテクト・ノイズ」


アイストが感知の魔術で周囲を探査する。


「橋自体に稼働するような仕掛けはありません。だが水中で何かが動いてますぜ!」

「駆け抜けるぞ」


ゲルヒニス達は桟橋の上を走る。

桟橋の中ほどまで来た時に、横手の水面にさざ波が立った。


「サンダー・ヴォルト」


水面から頭を出した何かに雷撃を叩きこんで撃退。


「足がっ!」


アイストが叫んだ。

見れば、足に何か蔓のような物が巻き付いている。

水面に生えた変な花は飾りではない、植物系のモンスターだ。


「このっ!」


クラトスがナイフで蔓を切断する。


「すまねぇ」

「頑張れ! あと少しだ!」


どうにか桟橋を渡り切った。


次の部屋は何の変哲もない大部屋だった。

トラップらしき物は見えず、魔物やドブリンの姿も見えない。


「なんだ? どうなっている?」


ゾンビが十数体、うろついていた。


「この部屋にもドブリンの姿がない。ここまで到達できたドブリンはいないのか……」

「そんなバカな。五万匹のドブリンですよ?」


だが、実際いない物はいないのだから仕方ない。

もちろんまだダンジョンの外や、ゲルヒニス達の後方にいるドブリンも多いだろうが、桟橋を通り抜けられたドブリンはいなかったようだ。

水中を攻撃する手段も、蔦を切る手段も持たない素手のドブリン達では、通り抜けられないのも仕方ないが……

期待していた動く盾を得られなかったのは、つらい。


「奥に逃げたのは失敗だったか? だがあの状況で戦うのは危険すぎる……」


ゲルヒニスは一度来た道を振り返るが、戻ったところでどうにもならない。

何とかして別の道を探し出すと心に決める。


クラトスが言う。


「アレの出番はなさそうですね……」

「なくて幸運さ。あんなものを使うほど追い詰めらる状況なんて想像したくもないね」


アイストは


「クラトス、魔力ブースターはいくつある?」

「四つです、使いますか?」

「いや、まだいいだろう……。何があるかわからない、温存しなければ」



「あのカマキリ、あんなに強かったっけ?」


エトルアは、戦闘風景を眺めながら呆れたようにつぶやく。

巨大カマキリは、八面六臂の大活躍で、ドブリンの群れを蹴散らしていく。


しかも、ただのパワー系ではない。

人間の魔術師を見れば直接対決は避けて、ダンジョンの奥に迷い込むように誘導している。


ゾンビをつまみ食いする癖さえなければ、完璧な警備員と呼べただろう。


一方、ウィノーラは首を傾げていた。


「いいの? 逃がさないようにしてくれてはいるけど、侵入者、だんだんこっちに近づいて来てるよ?」

「まあ奥に入ってきてはいるけど、もう無理でしょ。だって、あれがあるもの」


エトルアは自信ありげに言う。


「確かに、このまま進むと、あの部屋に行きそうだな……」


アロッホもそれは同意する。

帝国軍人に察知されてから、この数日で対人戦闘に備えていたのだ。

あれを突破されるようなら対策をやり直す必要がある。

それぐらい、防衛力には自信があった。


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