四人目
地下鉄に揺られて二時間。
ウィノーラは車内で落ち着かない様子だった。
「ずいぶん、長いのね」
「ああ、なんか長いんだ」
こんなに長くトンネルを伸ばす必要はないのではないかと、アロッホも思っていた。
たぶん、各地の魔力が強い場所を選んでダンジョンを作っているのだろうが。
「歩いたら一日か二日はかかりそう。それに、早馬なんかよりずっと速い……これ、うまく使ったらすごく便利なんじゃないかしら」
「そうかな」
むしろ、アロッホは、モリソバ駅から近いベルナス市に行くために、わざわざ遠回りしてカステラ駅から行かなければならなかったことがあったので、距離が長い事は欠点だと思っていた。
だが、攻略する人間からしてみれば、果て知れぬ長さがある地下トンネルは脅威だろう。
「それにエトルアは、こんな遠くから私と会話してたの? 同じ物を再現出来るようになったら、時代が変わる気がする」
「確かにな……」
今は、遠距離で情報をやり取りするには手紙を届けるしかない。
かなりの遠くからリアルタイムで情報をやり取りできるようになれば……
「やっぱりダンジョンコアを調べさせてもらえないかな」
「ダメなの?」
「停止させるとダンジョンが崩れるって脅されたから、調べてない」
「崩れても私がいれば脱出できるけど……」
「いや、それはやめてくれ」
さすがにダンジョンがなくなるのは困る。
そんなこんなで、ようやくチキンカリー駅に帰って来た。
駅長室までウィノーラを連れて行く。
エトルアは大きな台座の上に、椅子を置いて座っていた。
ドブリンゾンビに作らせた、丸太を組み合わせただけの物だが、エトルアは気に入っているようだった。
「かって、丸太が最強の武器だった時代があったのよ」というのが理由らしい。
でも、威圧を与えたいなら、ドラゴンの姿で待っていた方がよかったのではないか。
カルナは、いつものメイド服で、エトルアの隣に立っていた。
「やっぱり、二人とも女の子だ……」
そして、エトルアとカルナの姿を見たウィノーラは気落ちしたように言う。
アロッホの知らない所でどんなやり取りがあったのか知らないが、エトルアが人間形態で待っていた事には、意味があったらしい。
エトルアはアロッホの前に立った。
「アロッホ。よく戻ったわね。お疲れさまと言っておきましょう」
「いや、ホント疲れたよ……」
「なんだかんだ言って、強いもの。本当にいつも世話になっているわ」
「それほどでもないさ」
そしてエトルアはウィノーラを見る。
「それで? こいつをどうしようと言うのかしら?」
「それなんだが、帰らせてやってくれないか?」
アロッホは言う。
もちろんエトルアは拒否する。
「ダメに決まってるでしょう。ダンジョンの位置を探り当てて、一人で壊滅させかけたのよ。情報を持ち帰らせたら、次は人間の大軍が押し寄せてくるわ」
「宮廷魔術師の審問が近いはずなんだ。それには挑戦させてあげたい」
「たぶん、それはもう始まってると思う」
ウィノーラが言う。
「え? おまえ、こんなところにいていいのか?」
「また毒殺されるのは嫌だし」
「あ、ああ……まだ犯人解ってなかったのか……」
「犯人はディスオルト。もちろん捕まってないし、今頃は宮廷魔術師になってると思う」
「え? なんで?」
王都がどういう状況なのか理解できず、アロッホは混乱した。
とりあえず、ウィノーラがもう宮廷魔術師になる気がないというのだけは理解できたが。
「あの、この人も仲間に引き込んでしまえばいいのでは?」
カルナが提案する。
「仲間?」
エトルアは嫌そうな頷になった。
アロッホは説得を試みる。
「いや、ウィノーラが強いのは見ただろ? これなら大体の侵入者は撃退できるって……」
「そうだけれど、裏切ったら一番厄介な相手でもあるわ。本当に信用して大丈夫なのかしら」
「裏切ったら危険なのは、俺もカルナも同じだろ」
「あの時は、それなりのメリットがあったから受け入れたのよ? 」
メリットがあっても危険が減るわけではないと思うが……。
流れを察したらしいウィノーラが口を挟む。
「アロッホが王都で使っていた荷物を回収してきた。錬金術の機材も全部ある」
「なっ……」
「え? 本当に持ってきたの?」
エトルアは絶句。
アロッホも驚いた。
錬金術の機材に関しては、ほぼ諦めていたのだ。
いっそ、簡単な調合ができる道具を、マキアートに調達させるかと考えている所だった。
それが、フルセットで入手できるのならば、いろいろな物事がはかどるようになる。
「ほら、前に言ってたドラゴン用の耐寒装備、今度こそ作れるぞ」
「くっ……」
「今はベルナス市に置いてある。運び出すためには私が行く必要があるけれど、信用できないというなら、あなたがついてくればいい」
「なんですって?」
エトルアは驚いて身を引く。
ダンジョンドラゴンが一時的とはいえダンジョンを離れるのも問題だし、そもそもエトルアは、外で見つかれば一番危険な立場だ。
だが、他にいい案があるとも思えない。
「こいつ、生意気だわ。次のアップキープが来たら、拷問室を作った方がよさそうね」
「誰か拷問したい人でもいるの?」
エトルアとウィノーラはバチバチと目から火花を飛ばし合う。
「そろそろ、個室とかあってもいいと思うんですよね」
カルナは穏やかな顔で言った。
「そうだな機材を置くなら調合用の部屋も欲しいよな」
「あとは台所と……野菜畑とかって、作れるんでしょうか?」
「薬草園もいいな。たぶん、普通に畑が作れないような草でも、ダンジョンの力で生やせると思うんだ」
「もし畑が作れるなら、牧場とかもやってみたいですね。私の村では、家畜を飼うのがお金持ちの証だったんですよ」
「金属も欲しいけど鉱山とかはどうなのかな……さすがに無理か?」
二人で現実逃避していると、エトルアも混ざってくる。
「今回は、かなり時間がかかるわよ。誰かさんが派手にやってくれたせいでね」
「あの時は、できるものならやってみろと、言われた気がする」
「ぐぬぬ……」
この様子なら、ウィノーラは大丈夫そうだな、とアロッホは思った。
逆にエトルアの方が大丈夫ではないかもしれない。
ドラゴンはちょろい




