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穴掘りと耐火試験


バラバラと石が降ってくる。

アロッホとエトルアは、言葉もなくそれを見ていた。


「これ、思ったより時間がかかりそうね……」


エトルアは近くに転がっている一メートルぐらいある岩に腰かけて、足をぶらぶらさせながら言う。


チキンカリー駅の出入り口の階段は、岩で埋まってしまっている。

そこの岩をどけなければならない。


小型のツルハシは調達できたので、ドブリンゾンビに作業させているのだが、これが遅々として進まない。


階段はあまり広くないので、同時にツルハシを振るえるドブリンゾンビは二体か三体が限度。

エトルアは少し不満気だ。


「せっかくツルハシを沢山用意したのに……」

「まあ、壊れた時の予備と思えばいいさ……それより問題は、あれだろ」


岩をツルハシで砕けば、小さな岩や小石が発生する。

それはどかさなければならない。


だが、階段の上に有る岩の撤去をドブリンゾンビに命じるとどうなるか。

やつらは、何も考えずに突き落とすのだ。

結果として階段の下は、常に岩が落ちてくる危険地帯となる。


階段の下で岩を回収するドブリンゾンビの損耗率が高い。

かと言って、放置しておくと、階段の下が埋まってしまう。


今は、上で掘るのと、岩をどけるのを、一日ごとに交互に作業しているが、それでも事故は毎日のように発生する。


「ドブリンゾンビはあまり複雑な指示を受け取ってくれないのが困りものね」


どうせゾンビだ。

動かなくなっても、墓場に埋めれば直ぐに復活することもあって、多少の被害は無視して作業を進めてしまう、という事になった。


「いっそ、アップキープしたら、岩は消えたりしないのか?」

「消えるけど、それだと何日待たされるかわからないわね」


エトルアはため息をつくと立ち上がる。


「まあ、ここについてはしばらく忘れましょう。次に思い出したころには終わっているわ」


二人は駅長室まで戻る。

駅長室では、カルナが布を縫っていた。


「全部、指示されたとおりに出来たと思いますけど……」

「一応、テストした方がいいな。まあ、そもそも俺がこの布を予定通りに作れているか、って所から試すんだけど」


アロッホは、カルナが完成させた布の袋を受け取りって、チェックする。

見た感じでは問題がないが……こういう物は、実際に使ってみないとわからない部分も多い。

エトルアは袋をじろじろ見つめながら言う。


「思ったんだけど、これ失敗だったらどうなるのかしら?」


失敗だった場合、計画が白紙に戻る。

だが、仮に成功だとしても、布の量はあまり多くない。一人分の耐火服を作れるかどうかという所だ。


耐火布をもう一度作るためには、アロッホがベルナス市に行くしかない。

だが、今、アロッホはいろいろな勢力からマークされている。

ダンジョンの外に出るのは危険だ。


「耐火布は諦めるって言うのも、一つの答えかもな」

「え? ちょっと待って、いつか耐冷服を用意してくれるって話はどうなったのよ……」


エトルアが不満げに言う。

そういえば、カルナを仲間に引き入れるのはそういう条件だったような覚えがある。


「それは……やっぱり調合機材をどこかから手に入れて、ダンジョンで調合するようにしないと……」


アロッホは話を逸らす。

調合機材の不足は、ダンジョンの戦力にかかわる問題だ。

エトルアはうんざりしたようにため息をつく。


「またそれ? ……もう、どこかから盗んでくるしかないわね」

「どこかって、どこから?」

「もちろん、王都で手に入れるしかないわ。アロッホがそう言ったんじゃないの」

「言ったけどさ、俺は王都に戻ったら生きて帰れないだろ……」


指名手配中だ。

ベルナス市は、まだのほほんとした所もあるようだが、王都で同じにはならない。

少なくとも、ウィノーラ毒殺未遂の犯人は、見逃してくれないだろう。


エトルアは楽しそうに言う。


「この地下鉄は、少しずつ王都に近づいているそうじゃない? いつか王都の近くに出入り口を作れるはずよ。そしたら闇夜に乗じて……」

「やめてくれ! そんな事になったら負けるのはこっちだ」


そこまで近づいてしまうと、さすがに国もダンジョンの存在に気づく。

王都の騎士団が本気を出せば、こんなダンジョン、あっという間に潰されてしまう。

この前の山賊よりも強くて優秀な人間が、千人単位で計画的に攻めてきたら、どうやっても生き残れない。


「まあいいわ。今は耐火布よ。それで、実験って何をするの?」



三人は、駅長室から一番近い溶岩部屋まで来ていた。

用意したのは二つのスイカだ。


エトルアは、右手に、カルナが作った袋にスイカを入れた物を持ち、左手にはそのままのスイカを持った。

服は脱いでいる。そうでないと燃えてしまうからだ。

胸と腰の辺りが鱗に覆われているだけで、他は一糸まとわぬ格好だ。


「じゃ、開けるぞ」


アロッホは、扉を開ける。

手は耐火布で作ったミトンのような手袋で守られている。

この前は一瞬触っただけで火傷したハンドルだが、全く熱さを感じない。

これだけでも、作った甲斐がある。


扉が開くと隙間から熱気が漏れてくる。


「じゃあ、行ってくるわね」


エトルアは両手にスイカを乗せたまま、熱気の中へと入っていった。

そして、何かの爆発音と悲鳴が聞こえた


エトルアは、二十秒も経たないうちに、泣きそうな顔で出てきた。

左手に乗っていたスイカが消えていた。

そしてエトルアの体の左側だけに、何かゴミのような物がこびりついていた。

スイカの種だ。


「あの……左のスイカ、入ってから十秒ぐらいで破裂したんだけど……」

「えっ? そんなに早く? いや、ちょっと待って?」


エトルアが右手に持ったままの袋を受け取って、中を確かめる。

スイカに異常はなかった。

袋をきっちり閉じてから


「念のため、あと一分ぐらい、中の空気にさらしてみてくれないか?」

「また? こっちも破裂したりしないでしょうね?」

「俺とカルナが作ったんだ。信用してくれよ」

「わかったわ……」


エトルアは渋々、部屋の中に戻っていく。

カルナが小声で言う。


「あの、もう結果は出てますよね?」

「どうかな? 少し時間差があるだけで、一分経ったら破裂したとかだと、やっぱり人間用には使えないからな」


アロッホは当たり前のことを言っただけのつもりだったのだが、カルナは嫌そうな顔になる。


「それだと、両方とも破裂するのが前提みたいに聞こえるんですけど……」

「むしろ、破裂するまでやった方がいいんだ。限界がわからないと、いざという時に困る」

「そういうのは、先に説明しておいた方が良かったと思うんですけど?」

「それもそうか……」


今度からそうしよう、とアロッホは思った。


この後、滅茶苦茶なじられた

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