さけび
「ひかり、ひかりちゃん!ダメだ!」
「いやー!ひかり!目を開けて!お願い!」
女の人の甲高い叫び声がずっと耳に残ったまま、ひかりはお昼寝から目を覚ました。
いつも、女の人の声を思い出すと懐かしいようなうれしいような温かい気持ちになるのに、今日はすごく怖くて体が凍ってしまうような冷たい感じだった。
「起きたか。」
たまたまおっちゃんがひかりの側にいて、ひかりが体を起こすのを見ていた。
「おっちゃん…うえーん…」
ひかりはおっちゃんに抱きついて泣き出した。
「よしよし。」
おっちゃんはひかりの背中を優しくポンポン叩いた。
「怖い夢でも見たのか?」
ひかりは嗚咽をこらえながら、
「いやーって…言ってたの…いつもね…優しいのに…怖かった…」
とたどたどしく言った。
「そうか…」
おっちゃんは内容は理解出来なかったが、相づちを打ってあげていた。
『やっぱり、少しずつ記憶が甦ってきてるんだな。ただ、バラバラに甦ってきてるからひかり自身が混乱してきているな。』
おっちゃんはひかりを抱っこして立ち上がった。
「大丈夫だ。俺がついているから。怖いものなんて何にもないんだぞ。」
そう言ってひかりの背中をさすった。
ひかりは黙っておっちゃんにもたれかかった。
しばらくすると安心したかのようにまた眠ってしまった。
「ふぅ。」
おっちゃんはひかりをそろっと床に寝かした。
「ひかり…今度は怖い夢を見なければいいが…」
そう呟いて、おっさんはそうたのゆりかごの方へ歩いていった。
「おっちゃーん!」
さくらがおっちゃんが来るのを見て手を振った。さくらはそうたの遊び相手をしていた。そうたもキャッキャッとはしゃいでいた。
「さくら。そうたと遊んでいてくれていたのか。」
おっちゃんがさくらの頭をなでた。さくらはニコッと笑った。
「おっちゃん、さくらとそうたはまだ生まれ変われないの?」
さくらがおっちゃんに聞いた。おっちゃんは難しい顔つきになった。
「ゴメンな。そうたが赤ちゃんなんでな。俺だけじゃ決めれないんだ。もう少し待ってくれ。」
「うん。」
さくらが頷いたが、よく分かっていなかった。
ひかりはまた夢を見ていた。夢の中のひかりは目をつぶっていたが、女の人の声を聞いていた。
「ひかりちゃん、ベビードレス買ったよ。靴下も。ヒラヒラしてるよ。退院するときに思いっきりおしゃれしようね。女の子だもんね。ママ、ひかりちゃんが着るの楽しみにしてるね。」
温かい優しい声だった。
「ママ…」
ひかりが寝言でそう呟いた。




