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ショートえっち  作者: 友野久遠
第1話  広瀬 廉の発病
9/22

9、慢性化

 気の早い夏の朝日が、部屋の温度を上げ始めている。

 早起きのセミが鳴き出した。

 

 「廉、起きて。 遅れるよ。

  今日は中央体育館で県予選でしょう?」

 ひんやりした手のひらが、廉の顔を触った。

 「わ。 ‥‥まずい!」

 ベッドの上に起き上がり、廉は頭をブルブル振った。

 

 「ミサオさん、シャワー借りる! ごめん、タオル出しといて」

 「そこに置いてあるわよ。

  それから袴、裾のとこ繕って置いたからね」

 「ありがと!」

 浴室に駆け込む廉を、ミサオは愛しげに見ていた。

 

 廉がここに初めて来てから、2年が経っていた。

 高校に入ってからは、家には週に一度しか戻ってなかった。

 夏休みに入ってからはさらに悪化し、入り浸りだ。


 それというのも、高校生になったるうが、他にカレシを作ったからだ。

 「私はもう廉を卒業するって決めたから。

  ママ達は勝手にやってていいわよ」

 

 それまでは、二股かけてこそこそしてたのに、いつの間にかばれていた。

 なんだか拍子抜けしてしまった。

 馬鹿馬鹿しくなったので、大っぴらに部屋に泊まるようになったのだった。


 「今日は麻衣ちゃん、応援に来るの?」

 制服を着てリビングに出て来た廉に、ミサオが聞いた。

 「来るよ。 今電話したら、弁当作ってて忙しいって叱られた」

 「朝から電話がマメな子だわねえ、あんたも。

  いいけどその携帯、かけ放題じゃないんだからね。

  こまめに切りなさいよ、こないだみたいに長電話しながら寝ちゃったってのは無しよ」

 「申し訳ござらん」

 おどけて頭を下げてから、廉は食卓についた。


 まるで家族のような関係。

 寝る前の一時間ほどでやってることが、普通の親子と違うだけ。

 廉の望んだものは、この家にほとんど揃っている。

 こういう形の幸せがあってもいいと思う。


 

 玄関を出る前に、廉はミサオに軽くキスした。

 「団体は、かなをさんがいるから、勝てるよ」

 「頑張ってね。

  でも、6時にバイトでちゃんと間にあうの?」

 「ギリギリかな」


 ドアを開けて出て行きかけて、廉は足を止めた。

 「あら、なあに?」

 「ミサオさんごめんね。

  店を始めたばかりで忙しいのに、僕の面倒まで見させて」

 「あらあ、なんだっての? 改まっちゃって、おかしい」

 ミサオは笑ったが、廉は真顔だった。


 「体、壊さないでよ?

  それでなくても、去年胃をやってからガリガリなんだからさ」

 「余計な心配しないで。

  なんかさあ、年寄りみたいでやじゃない」

 ミサオは言ってから、すぐにコホンと咳をして、

 「そんなことより『廉くん』、ルール違反よ。

  玄関を一歩でも出たら、切り替える約束でしょ?

  あたしのことは、店長と呼びなさい」


 廉は自分の足を見た。

 玄関から片足が半分だけ、出ている。

 思わずくすりと笑いが漏れた。


 「行って来ます、店長」

 ずいぶん、ビョーキが板についた。


 広瀬 廉、高1の夏休みの風景である。



 (“広瀬 廉の発病”終わり)  



「広瀬 廉の発病」いかがでしたでしょうか。

 次回はキンギョちゃんと緑川部長の後日談として、部長の部活引退後のお話を。

 とってもマメ男くんな部長は、引退後もラブアタックの手を休めていませんよ!

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