婚約破棄
「スカーレットすまない。彼女が妊娠してしまったんだ。婚約を解消してもらいたい。」
「は?ハンス様彼女ですか?私は何ですか?」
「君は婚約者だよ。彼女のレニとは3年になるかな。まさか妊娠するなんてね。父親として責任とないと。ん?どうかした?」
「貴方は婚約者がいるのに彼女がいたの?」
「そうだけど。」
「は?」
「え?」
頭が痛い。前からハンスの頭が緩いとは思っていたけれど、まさかこんなに話が通じないなんて。
「ご両親は知っているのですか?」
「これから言うんだ。君へ先に伝えるのが誠実だと思って。今までありがとう。」
え?まさかこれで終われると思っている?!お互いの利益のために結ばれた婚約だよ?こいつの頭にはクリームが詰まっているのか?婚姻する前で良かったのかも知れないな。
「あとは両家で話し合ってもらいましょう。貴方はご両親に話をしといてください。今までありがとうございました。」
「ありがとう!スカーレットはわかってくれると思っていたよ。」
「彼女さんとお幸せに。では。」
ハンス様はありがとう!と満面の笑みで見送ってくれた。完全にヤバい人だったわ。あんな人が夫になっていたかと思うと、面倒を見きれない所だった。彼女さん寝取ってくれてありがとう。
「お父様!婚約破棄されました!ハンス様は解消と言っておりましたが、彼女が妊娠したそうです。あとは宜しくお願いします。」
「は?彼女?婚約者がいるのに?」
「はい。3年のお付き合いだそうです。ハンス様は悪びれてもおりませんでした。居て何がダメなの状態です。」
「頭が痛いな…そんな婿はいらん。ハンスは婚約が無くなってどうするつもりなんだ?平民になるのか?」
「さぁ?婿入り予定を忘れているのでは?ふわっふわな脳をお持ちのようなので。」
はぁぁと深いため息をお父様がついている。まぁ婿入り前で良かったかと同じ意見を呟き、任せておけと言って下さる。
「婿どうしようか。」
「誰か居ますか?どこかに打診お願いします。彼女が居ない方なら誰でもいいので。」
お互い乾いた笑いを交わし部屋を出る。今さら誰か婿入りしてくれる方居るかしら。ハンス様があんな方だとわかっていたら違う人にしたのに。無駄な時間だったわ。
「スカーレット様!婚約破棄されたって本当ですか?」
「本当よ。ターニャお茶淹れてちょうだい。わざわざ呼ばれたから何かと思ったら、彼女が妊娠したって言われたのよ。意味が分からなかったわ。」
「は?スカーレット様がいるのにですか?」
「そう。やっぱりそう思うわよね。ハンス様は婚約者と彼女はどちらも居て当たり前だそうよ。顔で選んだのが良くなかったのかしらね。同じ手を組むなら他家にしたら良かったわ。」
「ハンス様は顔だけは良かったですものね。」
ふわっふわな脳をお持ちのハンス様は本当顔が良かった。優しそうな甘いお顔立ちをしていて、貴族社会に全く擦れていない所が良かった。まさか人間社会にも適していなかったなんて。
「彼女が居たなんて全く気づかなかったわ。」
「スカーレット様ともマメにお出かけされてましたよね?」
「週2回は会っていたわ。彼女にもマメだったようね。ハンス様毎日暇そうだったもの。」
私が継ぐのでハンス様は特に学ぶことも無く、我が家に来ては庭をウロウロしたり楽しそうに過ごしていた。近い内に住むのだからと気にしていなかったのが良くなかった?婚約して4年。その期間ほぼ彼女が居たことになる。恐ろしいわ。
「新しい婚約者様は居そうですか?」
「わからないわ。結構ギリギリだもの。良い方は大半相手が決まっているもの。」
「そうですよね。4年前ならまだ選り取り見取りでしたのにね。」
本当最悪よって話をしながらお茶をいただく。お父様に期待する他無い。
「キース様が居てくださったら良かったですのにね。誰か良い方を紹介して頂けたかも。」
「隣国に行ったきりですもの。帰ってくる気は無いんじゃないかな。」
キース様はお隣公爵家の長男で学生時代に隣国へと留学し未だに帰ってこない。幼なじみであり私はキース様が初恋だった。お互い跡取り同士なので叶うことはないと諦める事しか出来なかった。もう何年も会っていない。同い年である妹のサリーとはたまに会うけど、キース様からはたまに連絡がある程度と聞いている。
「キース様お元気かしら。またサリーに会いに行ってみようかな?手紙を書いてみましょ。」
ターニャはいいですねと相槌をうってくれる。手紙を託しお願いをする。サリーからはその日のうちに返事があり、明後日会いに行くことが決まった。
「早速明後日会うことになったわ。」
「ハンス様の事は忘れて楽しんできてください。」
「あら、もうすっかり忘れていたわ。そんな人も居たわね。」
ターニャと笑い合いダイニングへと向かう。お腹空いたな。
「スカーレット!あちらから詫び状が届いたよ。こちらの言い分で慰謝料をくれるそうだ。息子の愚行に頭を悩ませているようだ。」
「ご両親お二人とも良い方なだけに残念ですわ。ハンス様のお兄様もまともな方ですのにね。」
「あの素直さが良いと思っていたのだが…我々見る目が無かったな!」
ハンス様の愚かな行為によって、あちらの家はこれから社交界で大変だろうな。婿入りする立場で彼女が居たなんて失態過ぎる。しばらく私達も注目の的になるだろう。3年も気づけなかったのだから仕方無い。
「とりあえず様々な家には打診しといたから。また返事が来たら伝えるよ。」
「はい。わかりました。あ、明後日サリーの家に遊びに行ってきます。」
「そうか。気晴らしに行っておいで。気をつけて行ってくるんだよ。」
ありがとうございますと食事も終わり退室をする。ハンス様の事は気にしてないけど、実際少し傷ついてはいる。3年間優しくはあった。愛情は無かったけど共に生きていく人だとは思っていた。あれが嘘だったなら私はこれから何を信じればいいのだろう。伴侶となる人を信じられるか…ただの子供を持つための人と割り切るのか。意外と心にダメージを受けていたようだわ。サリーに色々聞いてもらおう。
「スカーレット様!ハンス様が来られてます!」
「は?」
あれからゆっくり寝た私は朝目覚めると同時に来客をしらされる。ハンス様が?何の用かしら。
「お会いになりますか?今はご当主が対応してくれてます。」
「お父様が?会うわ。何か気になるし。」
慌てて支度をしてハンス様の元へ急ぐ。昨日の今日で何があったのかしら。朝から来る位だから大事な用かも。
「スカーレット!皆酷いんだ!私は何も悪くないのに…。」
「お父様ありがとうございます。ハンス様どうされました?」
「父上が平民になれって言うんだ。レニはこれから赤ちゃんが産まれるし、どうやって生活したらいいのかわからない!スカーレットからも父上に言って欲しい。」
「は?何故ですか?」
「え?婚約者だったし私が平民になるなんて心配でしょ?」
本当に頭痛い。こんな変な人だったなんて。お父様をチラッと見ると手で頭を押さえている。わかる。意味不明よね。
「ハンス様が平民なろうと路頭に迷おうが興味ありません。」
「どうして?!スカーレットはあんなに優しかったじゃないか?聡明だし何か考えてよ!」
「私達もう他人ですよね?理解してます?」
「解消はしたけど他人なんて酷いよ。」
「貴方は一方的に婚約破棄しました。契約不履行でご両親はこれから大変なんですよ。原因である貴方を捨てるしかないのです。」
「彼女が妊娠しただけだよ?」
「この婚約には利益が絡んでますし婿入り先が無くなった貴方は、いずれ平民になる以外道は無いのですよ。」
「そんな…ではレニには諦めてもらって、スカーレットと婚姻するよ!それで元通りだよね?スカーレットも寂しくないし良い案だ。」
本当頭の中を見てみたいものだわ。どういった思考をしていればそんな考えに至るのだろうか。
「お父様…コレどうしましょうか?」
「義父上これからもよろしくお願いします!」
「「は?」」
ヤバい奴が居る。1度落ち着いて欲しい。ご両親に引き取ってもらう?とりあえず客室に閉じ込めあちらに連絡をしましょうとなる。
「急いで来るそうだよ。あちらに任せよう。」
あんな化け物相手に出来ない。レニさんとやらはあれの何処が良かったのだろうか。私と一緒で見た目かな?これからどうするのだろう。子供の将来を考えると憂鬱になってしまう。ハンス様には現実を見てもらおう。




