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ただあなたに認められたくて③

一通り暴れ尽くし動きを止めた大蛇を見下ろしながら、アイリスは今の状況を整理する。



通らない斬撃、弾かれる魔法、ステータスは底上げされ近づくことすら危うい。




あまりにも詰み要素が多すぎる。

普通の冒険者なら命を優先し、この場から立ち去るだろう。



しかしアイリスは違った。

この危機的状況でも笑っているのだ。




(懐かしいなぁこの感じ...前にも一回あったけ?あれは確か魔王討伐で王国軍が攻めてきた時だったなぁ?)




思い出されるのは遥か昔、まだ魔王として君臨したばかりの頃、王国軍が魔王討伐の為の切り札として反魔の鎧を開発して攻め込んできた。



この鎧は現存する全ての魔法に対し、アンチマジックスキルと呼ばれる反魔の効果があった。



その効果は絶大で、ゼノン並びに魔王軍の精鋭が放った魔法を全て無効化した。



ならどうやって退けたのか?



答えは非常にシンプルで、現存しない魔法を使い撃退したのだった。



魔王ゼノンは魔法という分野に対して天才であった。

反魔の鎧の特性を理解した瞬間、オリジナル魔法を即席で作り王国軍に撃ち込んだ。



結果は言うまでもなく、魔王軍の圧倒的な勝利という幕切れだった。





(オリジナル魔法か...)




アイリスは右手に炎の球体を、左手に風の球体を浮かばせると、そのまま混ぜ合わせた。



すると球体同士は混ざりあった瞬間、その場で小規模な爆発を引き起こした。



これは魔法の合成と呼ばれる技法で、魔法と魔法を組み合わせて新しい魔法に変換する、魔王ゼノンにしかできない芸当だった。




「ふーん。意外と簡単に出来ちゃうんだ。」




希望の光が見えたことでアイリスの口元には笑みがこぼれる。




その後、いくつかのパターンを試したアイリスは、オリジナル魔法による大蛇討伐のプランを構築させていく。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「何やってんだおチビちゃん?」




遠くから弟子の勇姿を眺めていたナタリアだが、突如動かなくなったアイリスに対して疑問の声が出た。




「よく見えねぇな...」




ナタリアは自身の両目に部分強化の魔法を施すと、アイリスの行動を確認する。



「あいつ一体何を.....っ!?おいおいマジかよ.....」



両手にそれぞれ違う属性の球体を浮かび上がらせると、アイリスはそのまま混ぜ合わせ小規模の爆発を引き起こした。




「魔法を混ぜ合わせて新しい魔法を作った?そんなこと私にも出来んぞ。」




この世界にも魔法と魔法を合わせるという技法は存在する。



しかしそれは

風の刃に炎を纏わせる

氷の塊に風魔法をぶつけて無数の礫で攻撃するなど

既存の魔法同士を足し算するくらいだ。



だが今のアイリスの魔法は全くの別物だった。



言うなれば掛け算のようなもの。

掛け合わせることで全く新しい魔法を作り出した。




「ったく、おチビちゃんは想像の遥か斜め上を行っちまうから面白いな。」



弟子の新たな魔法に対して心が踊ってしまうのは、魔法使いの性というものだろう。




弟子を見るその瞳は、新しいおもちゃを与えられた子供のようにキラキラと輝いていた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



アイリスが試しに作った魔法は全部で三種類。



風属性の初級魔法【ウィンドカッター】に、水魔法を混ぜた【ウォーターブレード】。



火属性の中級魔法【フレア】に、風魔法を混ぜた【バーストフレア】。



水属性の中級魔法【ウォーターフィールド】に、土魔法を混ぜた【泥沼】。



全て前世で使っていた魔法で、大蛇相手にも有効打になる確信があった。



後は仕掛けるタイミングだ。

このプランを遂行するためには、ある程度開けた場所で仕掛けるのが好ましかった。



焦って仕掛けないよう、アイリスは自身の気持ちを落ち着かせながら機会を伺う。



(まだ...焦るな.....最高のタイミングで一気に攻める。)



大蛇が森の中をスルスルと移動する。



少しすると大蛇の向かう先に、広場のような開けた空間があることをアイリスは視認した。




(あそこだ!)




気配遮断の魔法をかけた状態で木を渡りながら、大蛇の上をとることに成功する。



そして大蛇が広場に出た瞬間アイリスが仕掛けた。



一気に下降して地面に降り立つと、すかさず地面に手を置き魔法を発動する。




「【泥沼】!」



大蛇の周囲3m程の地面が一瞬で泥に変わると、その重さによって沈んでいく。



一瞬の出来事だった。

大蛇は慌てて抜け出そうと暴れるが、動けば動くほどその体はどんどん泥沼に沈んでいく。



完全に身動きを封じたアイリスはすかさず次の魔法を大蛇に撃ち込む。



「【ウォーターブレード】!」



水を纏った風の刃は高周波ブレードの如く触れたもの全てを切り裂いていく。



それは大蛇の硬い鱗も例外ではなく、鱗と肉を一瞬で切り裂いた。



「ギャァァァァァォオ!!?!」



予想だにしなかった痛みにより、大蛇は悲鳴のような叫び声をあげる。



両断することはできなかったが、この闘いで一番のダメージを与えることに成功した。



続けざまに撃ち込んだ水刃も全て命中させる。



明らかに動きが鈍くなった大蛇は呼吸がどんどん荒くなっていく。




(ここで決める!)




鱗が無くなった部分に通常の魔法を数発撃ち込むと、アイリスはそのまま大蛇の目の前に姿を見せた。



これは明らかな挑発行為だ。



大蛇の目の前にいるのは小さな存在。

しかし、その目に映るのは明らかな敵意。



自分を傷つけたその小さな存在に対して、大蛇は大きく口を開くと最大の攻撃である毒液を吐き出そうとした。




刹那、アイリスは笑みを浮かべていた。




その姿を見た瞬間、大蛇の全身に悪寒が走る。

しかし、ここで攻撃をやめることはできない。



大蛇は回避行動を起こさず、そのまま攻撃に移ろうとした。



「これで終わり。【バーストフレア】!」




アイリスが先に魔法名を叫ぶが何も起こらない。



失敗かと思われた時、大蛇が苦しそうな声を上げた。



「ガッ!アガァッ!!?」



次第に大蛇の体は赤く発光しながら少しずつ膨れ上がっていく。



【バーストフレア】は爆発魔法と呼ばれるもので、今回は大蛇の内部に魔法を撃ち込んだ。



最初は小さな爆発が数回起こる。

その後、大蛇の全身が徐々に膨らみながら眩く発光する。



いよいよ大蛇が動けなくなるほどの大きさに膨れ上がると、大爆発を引き起こし辺り一面に大蛇の肉片が飛び散った。




「..........ふぅ、なんとか倒せた。」



大蛇の生命反応が無くなったことを確認すると、気が抜けたのかアイリスはその場に座り込んだ。




「なかなかエグい倒し方だな。」



頭上から声が聞こえたので見上げると、呆れ顔のナタリアの姿が目に入った。




「師匠やりましたよ!これで認めてくれますよね?」



無邪気に笑う弟子の姿を見たナタリアは深いため息をついた。



「なんですかその反応は?」



不満気なアイリスに対してナタリアは周りを見るように言う。




「お前.....こんな戦い方する魔法使いがいると思うか?」




「え?私の目の前に...ッ痛!?」



アイリスが全て言い終わる前に頭を殴り黙らせたナタリア。




頭をさすりながら涙目で睨んでくる弟子を見て思わず笑い出した。




「あははは!そう睨むなよアイリス。さぁ帰ってご飯にしようか。」




「もう!分かりましたよ.......ッ今私の名前!?」




「置いてくぞー?」




「待って!?師匠!今、名前呼んでくれました!?」




慌てて立ち上がるアイリス。

初めて名前を呼ばれたことに対し嬉しさ全開のアイリスは、急いでナタリアの後を着いていく。




「もう一回!師匠もう一回名前を呼んでください!!」




「うるさい離れろ!早く帰ってご飯の準備をしろアイリス!」




「は、はい!!」






ナタリアの試験を無事に合格し、遂に一人前の魔法使いと認めてもらえたアイリス。





彼女の魔法使いとしての物語は、ここからようやく動き出すのだった。







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